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校長だより

校長だより

古典文法講座第十二回(最終回)

古典文法講座 第十二回

 古典文法講座もいよいよ最終回です。今回は、和歌の修辞法を取り上げます。
 古文では、しばしば和歌が重要な役割を果たします。それだけに和歌を正確に理解できないと、読解でつまずくことにもなりかねません。
 和歌の解釈でハードルとなるのは、和歌の修辞法でしょう。今回はこの和歌の修辞法を整理しておきます。主立った修辞法をあげると、「枕詞」「序詞」「掛詞」「縁語」「本歌取り」などがあります。順番に見ていきましょう。

1 枕詞
  「枕詞」とは、ある特定の言葉を導き出す「決まり文句」と考えるといいでしょう。例えるなら、「花の都」といえば「パリ」、「音楽の父」といえば「バッハ」という感じでしょうか。もっとも最近はあまり聞かなくなりましたが。
 「枕詞」は普通は五音で、本来は「枕詞」が導く語と意味的な連続性があったと思われますが(また、意味を類推できるものもありますが)、意味がとりにくいものも多いので、原則として口語訳しません。従って、基本的には「そういう決まりなので、覚える」ことになります。また、「枕詞」が多用されるのは上代なのですが、中古以降でも使われることがあるので、出てきたら「枕詞だ」と認識できるようにしておきましょう。
 「枕詞」は口語訳はしなくてよいのですが、「枕詞」が喚起する言葉の豊かさは尊重したいものです。以下、「枕詞」の例をあげておきますので、重要なものは覚えておいてください。

◎重要な「枕詞」
 あしびきの → 山・峯
 からごろも → 着る・つま・慣る・紐・裁つ(立つ)
 くさまくら → 旅・結ぶ・露
 しろたへの → 衣・袖・たもと・雪・雲
 たらちねの → 母・親
 ちはやぶる → 神・社
 ぬばたまの → 夜・黒・夢・寝・月
 ひさかたの → 天・空・雨・月・星・雲・光・都・鏡

○その他、主立った「枕詞」
 あかねさす → 日・紫・照る・君が心
 あづさゆみ → 引く・張る(春)・射る(入る)・本・末
 あらたまの → 年・月・来経・春
 あをによし → 奈良
 うつせみの → 世・代・人・身・命
 しきしまの → 大和
 たまきはる → 命・世・うち
 たまもかる → 海・沖
 むらぎもの → 心
 ももしきの → 大宮・宮
 やくもたつ → 出雲
 やすみしし → 大君

 導く語が複数になるものも多いのですが、先頭に来ている語がポピュラーなので、まずはそれを押さえましょう。また、複数ある語にも共通性が認められるので、その点を確認しておけば、当面、問題はありません。

練習1 次の空欄を、適切な枕詞で埋めよ。
 ①春過ぎて夏来にけらし(       )衣ほすてふ天の香具山
 ②(       )山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
 ③(       )神代も聞かず龍田川からくれなゐに水くくるとは
 ④(       )光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ


2 「序詞」
 特に音数に決まりはありませんが通常は七音以上で、ある言葉を導くために創作される語句を「序詞」と言います。「序詞」は「枕詞」と違い、歌ごとに作られるので、覚えておくことはできません。「序詞」のパターンを押さえておいて、その都度、判断する必要があります。
 「序詞」は、言ってみれば落語の「まくら」に当たるものです。話の「本題」に入る前に、「本題」とは違う話題を展開し(これが「まくら」です)、ある時点でくるりと転じで「本題」に入るという落語の技法と、「序詞」はとてもよく似ています。
 「序詞」の部分では、基本的には歌の「本題」から離れた内容が語られ、「序詞」に導かれた言葉から文脈が転じて「本題」に入っていくので、口語訳のときにかなり困ります。よく用いられる手法は、序詞の末尾を「~ではないが」で結び、その後に「本題」の口語訳を続ける、というものです。他には、「序詞」だけ括弧に入れる、という方法もあります。
 さて、「序詞」のぱターンですが、おおむね三つに分けられます。それぞれ確認しておきましょう。

A 「比喩」による転回
 「序詞」と比喩的につながる語によって、「序詞」から「本題」へと転じるパターン

B 「同音」による転回
 「序詞」と「本題」の双方に共通する「音」の語を置き、「音」の共通性に依存して、「序詞」から「本題」へと転じるパターン。

C 「掛詞」による転回
 「序詞」と「本題」の間に「掛詞」を置き、「序詞」から「本題」へと転じるパターン

 では、それぞれについて、例文を確認しながら見ていくことにしましょう。

 A 「比喩」による転回 

  〈例〉あしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む

 この歌の「序詞」は「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」で、「あしびきの」は1で取り上げた「枕詞」なので口語訳はしません。この部分の口語訳は、「山鳥の尾の、その垂れた尾のように」となります。これが「ながながし」を導き、ここまでの口語訳は「山鳥の尾の、その垂れた尾のように、とても長い」となります。そして「ながながし」以下、「本題」に転じて、「ながながし夜をひとりかも寝む」となりますが、ここの口語訳は「とても長い夜を一人で寝るのだろうか」となるのです。
 このように、「序詞」から比喩的につながる語を間において、「本題」へと転換するパターンが「比喩」による転回です。これは、言ってみれば「連想ゲーム」のようなものでしょう。「山鳥の尾」から「長い」を連想する、「長い」から「ひとり寝の夜」を連想する、そういう構成になっていると考えることもできます。ちなみに、ここで出てきた「山鳥」は、「山にいる鳥」ということではなく、「雀」「燕」「烏」などと同様の、特定の種を表す言葉で、その山鳥は尾がとても長いということが、当時の人に知られていました。それでこういう連想ゲームが成立するのです。
 では、ここで全体の口語訳を示しておきましょう。他の歌でも通用する訳し方は次の通りです。

  〈訳〉山鳥の尾の、その垂れた尾のように、とても長い夜を私はひとりで寝るのだろうか

 ちなみに、比喩の「の」を使った「序詞」はかなり多く、その場合はこの口語訳のように「~のように」で「本題」つなげるときれいに訳せます。

 B 「同音」による転回

  〈例〉駿河なるうつの山辺のうつつにも夢にも人にあはぬなりけり

 この歌の「序詞」は「駿河なるうつの山辺の」になります。口語訳は「駿河にある宇津の山辺(の)」。「宇津」は地名です。この「宇津(うつ)」という音から「うつつ(現実、の意)」という言葉が導かれ、「本題」である「うつつにも夢にも人にあはぬなりけり」と転じます。口語訳は「現実でも夢でもあの方に会わないことだなあ」となり、これがこの歌で表現したかったことなのです。
 このタイプの「序詞」は、「音による連想」と言っていいでしょう。以下、全体の口語訳を提示します。

  〈訳〉駿河にある宇津の山辺ではないが、「うつつ」つまり現実でも夢でもあの方に会わないことだなあ

 この歌は、『伊勢物語』の「東下り」の段に出てくる歌で、主人公である「男」が駿河国まで下ってきたときに詠んだものです。場所を踏まえて歌を詠み出し、転じて自分の思いを歌う、という構成になっています。ちなみに、昔の人は「夢の通い路」を信じていました。自分に想いを寄せる人は、「夢の通い路」を通って自分の夢の中に現れる、という考え方です。「夢にも人にあはぬ」とは、「相手の女性が自分を想ってくれなくなった」ということを意味しているのでした。

 C 「掛詞」による転回

  〈例〉風吹けば沖つ白波たつた山夜半にや君が一人越ゆらむ

 「掛詞」については次に取り上げますが、要は「一つの言葉で二つの意味を表す」技法で、現代人から見ると「ダジャレ」のように思えるかもしれません。例示した和歌では、「たつた山」が「掛詞」になっており、「(白波が)立つ」と「龍田山」の二つの意味で機能しています。そしてここが「序詞」から「本題」へのターニングポイントになっているわけです。
 「序詞」は「風吹けば沖つ白波」、ターニングポイントは「序詞」に含めません。口語訳は「風が吹くと沖の白波が(立つ)」、「本題」は「たつた山夜半にや君が一人越ゆらむ」で、口語訳は「龍田山を夜中にあなたはひとりで越えているのだろうか」となります。
 では、全体の口語訳を示しておきましょう。

〈訳〉風が吹くと沖の白波が立つ、その「立つ」ではないが、龍田山を夜中にあなたはひとりで越えているのだろうか

 かなり苦しい口語訳になりました。

 さて、AからCまで、三つのパターンの「序詞」を見てきましたが、そもそも「序詞」はどういう効果を期待して用いられるのでしょうか。答えはいくつも想定されますが、その中から二つほど、あげてみましょう。
 まず一つは、「本題」とは別文脈の「序詞」を用いることによって、歌のイメージが重層化する、ということが考えられます。「風吹けば」の歌でいうと、「序詞」は海のイメージ、「本題」は山のイメージで、対照的なイメージが一首の中に盛り込まれています。また、「風が吹くと沖の白波が立つ」という荒々しいイメージが、「本題」である「龍田山を夜中にあなたが一人で越える」という文脈にも加わることで、詠み手の心情としての「不安」や「心配」を浮き立たせる役割も果たしているのです。
 次に、もう一つの効果として、日本人の美観としての「序・破・急(じょ・は・きゅう)」を実現する、ということも考えられます。「序・破・急」とは「能楽」の演じ方を示したもので、その意味はまさに字のごとく、「ゆったりと始まる」「リズムが転じる」「急展開する」ということです。実はこれは日本人の基本的美観の一つとなっているようで、例えば花火などでも、「ゆったりと上がる」「大きな音がしてはじける」「夜空に花火かさっと開いてすっと消える」と、まさに「序・破・急」です。国技である相撲の取り組みも、やはり「序・破・急」ではないでしょうか。「序詞」を用いた和歌も、同じように解釈できます。「序詞」はまさに「序」に当たり、いきなり「本題」に入るのではなく、別の話題からゆったりと入り、「破/ターニングポイント」で話題が転じ、「急」つまり「本題」が一気に展開される、というスタイルです。このスタイルは、日本人の美観にぴったりあったものなのでしょう。

練習2 次にあげる和歌から「序詞」に当たる部分を抜き出せ。
 ①由良(ゆら)の門(と)を渡る舟人(ふなびと)かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな
  [                          ]
 ②みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ
  [                          ]
 ③梓弓(あづさゆみ)引けば本末(もとすゑ)わが方(かた)によるこそまされ恋の心は
  [                          ]


3 「掛詞」
 「掛詞」とは、一つの音に二つの意味をもたせる技法で(例えば、「まつ」という音に「松」と「待つ」の二つの意味を持たせる、など)、これを和歌に用いることで、イメージを二つ重ねたり、別の文脈に転じたりします。

  〈例〉山里は冬ぞさびしさまさりける人めも草もかれぬと思へば

 この歌の「かれ」には、「枯れ」と「離(か)れ」が掛けられています。従って口語訳は次のようになります。

  〈訳〉山里は冬こそさびしさがまさるのだなあ、人目も離れ、草も枯れてしまうと思うと

 人がいなくなる、草木も枯れ果ててしまう、その二つのイメージを「人めも草もかれぬ」で表しているのです。また、別の文脈に転ずるパターンは「序詞」に見られるもので、「C「掛詞」による転回」であげた「風吹けば」の歌などがその例となります。
 「掛詞」は、この次に説明する「縁語」としても用いられます。

練習3 傍線部の語は「掛詞」になっているが、掛けられている二つの意味を漢字で記せ。
 ①秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざとぶらはむ
  a(    )・(    )
 ②有り明けの月もbあかしの浦風に波ばかりこそcよると見えしか
  b(    )・(    ) c(    )・(    )
 ③大江山dいく野の道の遠ければまだeふみも見ず天の橋立
  d(    )・(    ) e(    )・(    )

4 「縁語」
 「縁語」は、一首の和歌の中に、ある言葉に関係の深い語を読み込んでいく技法です。注意しなければいけないのは、「掛詞」が「縁語」になることが多い、という点です。

  〈例〉唐衣着つつなれにししあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ

 この歌では、「唐衣」という言葉に縁のある語が読み込まれています。いずれも着物に関係のある語なのですが、実は「掛詞」が多用されています。あげてみましょう。

 「唐衣」の縁語…「着」「褻(な)れ/慣れ」(掛詞)「妻/褄(つま)」(掛詞)
         「はるばる/張る」(掛詞)「来/着」(掛詞)

 なんと、「縁語」五つのうち、四つまでが「掛詞」になっています。また、そのうち「褻(な)れ/慣れ」以外は、先に記した方だけが文脈に反映され、後に記してある方は意味として出てくることはありません。
 とりあえず、まず口語訳から提示します。ちなみに「唐衣」は「枕詞」ですがここでは訳出します。「唐衣着つつ」は序詞で「なれ」を導きます。口語訳は「唐衣を繰り返し着ているうちに(柔らかくなってしまった)」となります。「なる」という動詞は、ここでは「褻る(衣服がよれよれになる)」と、「慣る(慣れ親しむ)」を掛けていて、後者から「本題」に転じます。「本題」の部分は、「慣れ親しんだ妻がいるので、はるばると来てしまった旅を思うことよ」となります。これにもう少し補正を加えて口語訳すると、次のようになります。

〈訳〉唐衣を繰り返し着ているうちに柔らかくなってしまった、ということではないのだが、私には慣れ親しんだ妻がいるので、はるばると来てしまった旅をしみじみと思うことよ

 やはり苦しい口語訳になりました。
 ここで見たように、「縁語」はある言葉に縁のあるイメージが次々と浮かべばよく、従って「掛詞」が用いられても、二つの意味で捉えることは稀で、一方はイメージを思い浮かべ、その連鎖を楽しむ、という構図になるのです。つまり「縁語」は、意味の流れとイメージの流れの重層性を生み出す技法だ、と言ってよいでしょう。

 さて、余談ですが、例にあげた「唐衣」の歌は、やはり『伊勢物語』「東下り」の段に登場するもので、旅の途中、「かきつばた」が美しく咲いている土地に来た、そのとき、ともに旅する者から「かきつばた」という五文字を各句の頭に据えた歌を詠め、と言われて、主人公の「男」が即興で詠んだ、ということになっています。そして、この歌は、そういう構造になっているのです。すべて平仮名書きして確認してみましょう。

  らころも つつなれにし ましあれば るばるきぬる びをしぞおもふ

 この技法を「折り句」と言いますが、めったにお目にかかることはありません。
 「唐衣」の歌は、「枕詞」「序詞」「掛詞」「縁語」「折り句」という技巧を駆使した、「修辞法のデパート」のような歌だったのです。

練習4 次の和歌において、「秋霧」の「縁語」になっている語を三つあげよ。

  秋霧のともにたちいでて別れなばはれぬ思ひに恋ひやわたらむ
   (    )・(    )・(    )


5 「本歌取り」
 古歌を踏まえつつ、新たな歌風を備えた歌を生み出す技法を「本(ほん)歌(か)取(ど)り」と言います。これはまず、具体的に見た方がわかりやすいでしょう。

  〈例〉駒とめて袖うち払ふかげもなし佐野のわたりの雪に夕暮れ
  〈訳〉馬をとめて袖を払うほどの物陰もない、佐野のあたりの雪の夕暮れよ

 この歌は『新古今和歌集』にある歌なのですが、実はこの歌は、『万葉集』の次の歌を踏まえて詠まれたものなのです。これを「本歌(もとうた)」と言います。

  〈例〉苦しくも降りくる雨か三輪の崎佐野のわたりに家もあらなくに
  〈訳〉困ったことに降ってくる雨か、この三輪の崎の佐野の渡し場には家もないというのに

 いずれも「佐野のわたり」を舞台としていますが、「本歌」は「雨に降られる」シチュエーション、それが「本歌取り」の歌では「雪に降られる」シチュエーションに変更されています。その他、異なる箇所はいくつもありますが、「旅人が雨/雪に降られて困惑している」というモチーフは共通です。そして、共通のモチーフでありながら、「本歌」は率直でリアル、「本歌取り」の歌は繊細で絵画的です。実はこのコントラストが「本歌取り」の技法のキモで、「本歌」を踏まえることによって、歌のイメージを重層化させているのです。
 「本歌取り」の歌を耳にした人は、その歌の美感に酔いつつ、「本歌」のイメージをもそこに重ね合わせ、複雑な感興をもよおすことになります。これが「本歌取り」の効果です。

練習5 次のBの和歌は、Aの和歌を本歌とする「本歌取り」の歌である。これを踏まえ、Bの空欄を適語で埋めよ。

  A 小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波

  B 志賀の浦や(       )浪間より凍りて出づる有り明けの月


 以上で、主立った和歌の修辞法の説明は終了しますが、他には「体言止め」があげられます。例だけあげておきましょう。

 体言止め(歌を名詞で終える技法)
  〈例〉寂しさに宿を立ち出でて眺むればいづこも同じ秋の夕暮れ
  〈訳〉寂しさ故に家を出てあたりを眺めてみると、どこも同じように寂しい秋の夕暮れだ

 現代人にとって古文の和歌は、散文に比べ読解が難しいかもしれません。その一つの理由は、やはり多様な修辞法が用いられるからでしょう。ここで確認したものを思い出しつつ、和歌の読解に取り組んでみてください。
 ただし、知識だけではなかなか読解が進まないのも事実です。ある程度の和歌に触れて、できれば暗記しておくと、和歌の読解はとても楽になります。そのための材料として最適なのが『百人一首』です。上古から中世初頭まで、多種多様な名歌が採られていて、和歌の学習には最適の教材です。手軽な書籍も出版されていますから、ぜひ手に取ってみてください。

 さて、これで「古典文法講座」も終了です。一通り理解した後は、折に触れて必要な項目を確認するようにしてください。反復して確認していくと、特に考えなくても自然に解釈できるようになります。この講座が、皆さんの古典読解に役立つことを祈念して、筆を置くことにします。
 以下に、練習問題の解答、前回の復習問題の解答等を掲載しておきます。参照してください。

 頑張ろう、東高!


練習1・解答
 ①春過ぎて夏来にけらし( しろたへの )衣ほすてふ天の香具山
 〈訳〉春が過ぎて夏が来たらしい、夏には真っ白な衣を干すという、天の香具山に
 ②( あしびきの )山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む
 〈訳〉山鳥の尾の、垂れた尾のように、とても長い夜を私は一人で寝るのだろうか
 ③( ちはやぶる )神代も聞かず龍田川からくれなゐに水くくるとは
 〈訳〉神代にも聞いたことがない、龍田川が真紅に水をくくり染めにするとは
 ④( ひさかたの )光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ
 〈訳〉光がのどかな春の日にどうして落ち着いた心もなく桜の花は散っているのだろう

練習2・解答
 ①由良(ゆら)の門(と)を渡る舟人(ふなびと)かぢをたえゆくへも知らぬ恋の道かな
  [ 由良の門を渡る舟人かぢをたえ           ]
 〈訳〉由良の瀬戸を渡る船頭が梶を失いどこへ行くのかわからなくなるように、どうなるかわからない私の恋の道であるよ
 ②みかの原わきて流るるいづみ川いつみきとてか恋しかるらむ
  [ みかの原わきて流るるいづみ川           ]
 〈訳〉みかの原を分けて流れるいづみ川ではないが、いつあなたを見たからといってこんなに恋しいのだろうか
 ③梓弓(あづさゆみ)引けば本末(もとすゑ)わが方(かた)によるこそまされ恋の心は
  [ 梓弓引けば本末わが方に              ]
 〈訳〉梓弓を引くと弓の先と末が自分の方に寄る、ではないが、夜こそまさるのだ、恋の心は

練習3・解答
 ①秋の野に人まつ虫の声すなり我かと行きていざとぶらはむ
  a( 待つ )・(  松  )
 〈訳〉秋の野に人を待つ、まつ虫の声がするようだ、私ですかとそとらへ行って、さあ、訪ねてみよう
 ②有り明けの月もbあかしの浦風に波ばかりこそcよると見えしか
  b( 明かし )・( 明石 ) c( 寄る )・(  夜  )
 〈訳〉有り明けの月も昼のように明るい明石では、海風に波が寄せていく様子ばかりが   夜と見えたのだった
 ③大江山dいく野の道の遠ければまだeふみも見ず天の橋立
  d(  生  )・( 行く ) e( 踏み )・(  文  )
 〈訳〉大江山を越え生野を通って行く道が遠いので、まだ天の橋立を踏んでみたこともないし、手紙も見てません

練習4・解答

  秋霧のともにたちいでて別れなばはれぬ思ひに恋ひやわたらむ
   (  たち  )・(  はれ  )・( わたら )
 〈訳〉秋霧と一緒にあなたが出立して別れてしまったならば、わたしは気の晴れぬ思いで恋い続けることになるのだろうか

練習5・解答

  A 小夜ふくるままに汀や凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波
 〈訳〉夜が更けるにつれ水際が凍っているのだろうか、遠ざかっていく志賀の浦の波

  B 志賀の浦や( 遠ざかりゆく )浪間より凍りて出づる有り明けの月
 〈訳〉志賀の浦よ、遠ざかっていく波間から、凍りついて出てくる有り明けの月


復習問題6・解答

解説
 問一aは「まことにかある」の「ある」が省略された形。「に・係助詞・あり」の形で「断定」。bは直前「来」は連体形ではなく終止形なので「伝聞・推定」。cは「捕らへさせよう」と解釈でき「使役」。dは完了の助動詞「つ」の連体形。eは文脈から「推量」。
 問二①「まうづ」は「行く・来」の謙譲語、会話文中なので「話者から目的語に対する敬意」、誰の所に来るのか、と考える。②「せたまふ」は最高敬語、誰がお尋ねになったのかを考える。③はちょっと難問。まず「たまはる」は「いただく」という意味の謙譲語、文脈は「帝に、人々(武者)を、いただく(遣わしていただく)」なので、「翁から帝に対する敬意」となる。④は絶対敬語、地の文なので「作者から帝への敬意」となる。⑤は「聞く」の尊敬語(最高敬語)である。「聞こゆ」(謙譲語、「申し上げる」の意)などと勘違いしないように。
 問三はレベルの高い文法問題。A「来なる」の「なる」は「断定」か「伝聞推定」のどちらかだが、断定だとすれば直前は連体形で「来るなる」となるはず、なので「断定」ではなく「伝聞推定」と決定し、直前は終止形、なので「く」となる。B「来ば」については、接続助詞「ば」は仮定条件なら未然形、確定条件なら已然形につくが、カ変「来」の已然形は「来れ」なので、確定条件ではなく仮定条件と決定、カ変「来」の未然形は「こ」。
 問四は、自敬表現を直訳するとこうなります、という例。

口語訳
 帝の使者が、帝の仰せごととして翁に伝えるには、「『(かぐや姫が)たいそう心を痛め物思いに沈んでいる、というのは本当であるか』と帝はおっしゃっている」。竹取の翁が泣く泣く申し上げるには、「この十五日に、月の都から、かぐや姫を迎えに参上するということです。帝にはもったいなくもお尋ねくださいました。この十五日には、武者どもを遣わしていただいて、月の都の者が参りましたならば、捕らえさせましょう」と申し上げる。使者は翁の家から帰り、帝のもとへ参上して、翁の様子を申し上げ、翁が奏上したことなどを申し上げるのを、帝はお聞きになっておっしゃるには、「私が一目ご覧になったお心でさえお忘れにならないのに、明け暮れいつも一緒にいるかぐや姫を月にやっては、翁はどう思うだろうか」

補強問題5(助詞)

1 次の( )内の語を適当な形に改めよ。
 ①かかることや(あり)。                                  ( ある  )
 ②母なむあり(けり)。                                      ( ける  )
 ③法師になしたらむこそ(心苦し)。                      (心苦しけれ)

2 次の古文の現代語訳を空欄を埋めることで完成させよ。
 ①梅の花の、香りよきこそめでたけれ。
 〈訳〉梅の木( で )香りの良いのがすばらしい。
 ②み山にはまつの雪だに消えなくに
 〈訳〉山では松の雪( さえ )消えないのに
 ③命だに心にかなふものならば
 〈訳〉せめて命( だけでも )思いのままになるならば
 ④時雨さへうちそそぐ。
 〈訳〉時雨( までも )降ってくる。
 ⑤京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。
 〈訳〉京では見られない鳥( なので )、だれも何とはわからない。
 ⑥いかで見ばや。
 〈訳〉なんとかして見( たい )。
 ⑦いつしか花咲かなむ。
 〈訳〉早く花が咲いて( ほしい )。

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古典文法講座第十一回

古典文法講座 第十一回

 今回は、「敬語」です。
 敬語というと、かなり苦手意識をもっている人もいるようですが、きちんと整理して理解すれば、確実に習熟することができます。では、さっそく始めましょう。

Ⅰ 古典文法における「敬語」の公式
 まず、敬語の種類ですが、「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」があるのは、現代語と一緒です。ただし、現代敬語法では、尊敬語は「相手をうやまう」、謙譲語は「相手に対してへりくだる」といった考え方をしますが、古典文法では、敬語を、「誰かが」「誰かに対して」敬意を表す表現、と捉えます。詳細はこの後、説明します。
 さて、敬語の説明に入る前に、一つだけ用語を設定しておきたいと思います。国文法では「目的語」という用語を使わないのですが、英文法と同様にこの概念を導入します。ちなみに目的語とは、対格(~を)、与格(~に)を指します。これで敬語の理解が一段と楽になります。
 また、「地の文」「会話文」の説明もしておきましょう。
 「会話文」は文字どおり「会話を記述している文」ですが、これには「書簡文(要するに、手紙として書かれた文章)」も含めます。「地の文」とは、「会話文以外の文」、と考えてください。例を示しましょう。『落窪物語』の一節です。

 暗うなるままに、雨いとあやにくに、頭さし出づべくもあらず。少将、帯刀に語らひたまふ。「口惜しう。かしこにはえ行くまじかめり。この雨よ」とのたまへば、「ほどなく、いとほしくぞ侍らむかし。さ侍れど、あやにくになる雨は、いかがはせむ。心のおこたりならばこそあらめ。さる御文をだにものせさせたまへ」とて、けしきいと苦しげなり。「さかし」とて書いたまふ。「いつしか参り来むとて、しつるほどに、かうわりなければなむ。心の罪にあらねど、おろかに思ほすな」

 傍線を引いたところが「地の文」です。なお、「いつしか~」以下の部分は手紙に書かれた文章ですが、これは「会話文」に含めます。

 さて、用語の確認が終わったところで、敬語の説明に入りましょう。先に述べましたが、古典文法では、敬語を、「誰かが」「誰かに対して」敬意を表す表現法、と捉えます。前者を「敬意の主体(つまり、敬意を表す側)」、後者を「敬意の対象(つまり、敬意を払われる側)」といいます。これが「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」で異なり、また「地の文」と「会話文」でも異なります。これを理解することが、敬語の学習のキモです。
 以下に、整理してみましょう。

【地の文】
  尊敬語‥作者から、主語に対する敬意を表す
  謙譲語‥作者から、目的語に対する敬意を表す
  丁寧語‥作者から、読者に対する敬意を表す

【会話文】
  尊敬語‥話者から、主語に対する敬意を表す
  謙譲語‥話者から、目的語に対する敬意を表す
  丁寧語‥話者から、聞き手に対する敬意を表す
  *「書簡文」では、「話者」を「書き手」に、「聞き手」を「読み手」に置き換える

 以上です。これが古典文法における「敬語の公式」です。
 「地の文」では、「敬意の主体」はすべて「作品の作者」です。これが「会話文」ですと、「敬意の主体」は「話者」になります。
 また、「地の文」「会話文」とも、「尊敬語」の「敬意の対象」は「文の主語」、「謙譲語」の「敬意の対象」は「文の目的語」ですが、「丁寧語」の場合、「地の文」は「読者」であり、「会話文」は、話を聞いている人、つまり「聞き手」です。
 以上述べたことを図にすると、次の通りです。

 矢印の元が「敬意の主体」、矢印の先が「敬意の対象」ですね。この図を押さえておくと、敬語の理解はとても楽になるはずです。
 入試での敬語問題は、「誰から誰への敬意か」ということがしばしば問われます。その際、解答に迷うようなら、まず上記の図(自分なりの略図でかまいません)を書いてみて、それに当てはめながら解答を考えると、まず間違うことはないでしょう。

 では、試しにやってみましょうか。先の例文を用いて、練習してみましょう。ただし、現段階では、どういう語が、どういう種類の敬語か、まだ説明していませんので、その点を補足しながら進めます。

練習1 傍線部aは、「誰から誰への敬意」を表しているか、記せ。

   暗うなるままに、雨いとあやにくに、頭さし出づべくもあらず。少将、帯刀に語らひaたまふ

〈訳〉暗くなるにつれ、雨はたいそうあいにくな様子で、頭を差しだすこともできそうにないほどである。少将は、帯刀に相談なさる。

 これは、「少将」が「姫君」のもとを訪れようとしていたときに、大雨が降ってきてしまった、というシーンです。「帯刀(たちはき)」は、少将の家来です。
 a「たまふ」は尊敬語で、「語らひたまふ」で「相談なさる」の意ですが、では、aは「誰から誰への敬意」を表しているか。
 敬意の主体は、「地の文」ですから「作者から」と決まります。『落窪物語』の作者ですが、誰が書いたかわからないので、「作者」で十分です(作者がわかっていても、固有名詞ではなく、「作者」とするのが、入試では一般的です)。次に、「誰へ」ですが、「たまふ」は尊敬語ですから、「主語」に対する敬意、でしょう。この文の主語は「少将」ですから、「少将に対する敬意」となります。

練習1・解答
 a-作者から少将への敬意

練習2 傍線部bは、「誰から誰への敬意」を表しているか、記せ。

   「口惜しう。かしこにはえ行くまじかめり。この雨よ」とbのたまへば、

〈訳〉「残念だ。あちら(姫君のもと)には行くことはできそうもないようだ。この雨だよ」と(少将が)おっしゃるので、

 ここでは会話文が出てきていますが、会話文中に敬語はありません。地の文「のたまへ」が尊敬語で、意味は「おっしゃる」。地の文ですから、敬意の主体は「作者」、尊敬語ですから敬意の対象は「主語」。「誰が」おっしゃっているのか、といえば「少将」。答えは決まりました。

練習2・解答
 b-作者から少将への敬意

練習3 傍線部c、d、eは、それぞれ「誰から誰への敬意」を表しているか、記せ。

   「ほどなく、いとほしくぞc侍らむかし。さd侍れど、あやにくになる雨は、いかがはせむ。心のおこたりならばこそあらめ。さる御文をだにものせeさせたまへ」とて、けしきいと苦しげなり。

〈訳〉「(通い始めて)間もないことで、お気の毒でごさいましょうね。そうではございますが、あいにくの雨では、どうしようもない。怠け心のためというならいけないけれど。せめて事情を記したお手紙だけでもお書きなさいませ」と(帯刀は)言って、胸を痛めている様子である。

 少将の相談に対する帯刀の返事の口語訳です。少将は姫君のもとに通い始めて今日で三日目、三日通うと結婚が成立します。なのに行けそうもない、という状況での帯刀の言葉になります。
 さて、c「侍ら」の解釈については、きちんと理解していないと、かなりの高確率で「不正解」となります。こういうポイントをターゲットとして、問題作成者は、「敬語の正確な理解」を確認しようとします。
 前置きが長くなりました。c「侍ら」は丁寧語です。続くd「侍れ」も同じです。現代語の「です」「ます」「ございます」に当たります。そして、これは会話文中の丁寧語です。それゆえ「話者から聞き手に対する敬意」ということになります。
 この場合、まず「話者」を確定しなければなりません。「ほどなく~ものせさせたまへ」と話しているのは、「帯刀」。「誰から」は「帯刀から」となります。次に、「聞き手」はこの場面では「少将」しかいませんから、「少将」。d「侍れ」もまったく同じです。
 次に、e「させたまへ」ですが、「最高敬語」といわれる尊敬語です。とりあえず、レベルの高い尊敬語だと理解しておけば十分です。「ものせ」は「ものす」の連用形、いろいろな動詞の代用をする言葉です。英語でいえば"do"に当たります。「ものせさせたまへ」とは、文脈から「お書きなさいませ」となるでしょう。
 さて、「誰から誰へ」ですが、会話文中ですので、「誰が」は、話者=帯刀、そして「誰へ」は主語=少将、となるのです。
 このように、会話文の敬語の分析では、話者が誰であるかを、明確にする必要があります。

練習3・解答
 c-帯刀から少将への敬意
 d-帯刀から少将への敬意
 e-帯刀から少将への敬意

練習4 傍線部fは、「誰から誰への敬意」を表しているか、記せ。

   「さかし」とて書いfたまふ

〈訳〉「そうだね」と言って(少将は手紙を)お書きになる。

 「さかし」と言っているのは「少将」です。「書い」は「書き」のイ音便。「たまふ」は尊敬語です。fは「地の文」の尊敬語ですから、「作者から主語への敬意」となります。主語は「少将」ですね。

練習4・解答
 f-作者から少将への敬意

練習5 傍線部g、hは、それぞれ「誰から誰への敬意」を表しているか、記せ。

   「いつしかg参り来むとて、しつるほどに、かうわりなければなむ。心の罪にあらねど、おろかにh思ほすな」

〈訳〉「はやくそちらへ参ろうと思って、準備をしているうちに、こうどうしようもないのでねぇ。悪気ははないけれど、いい加減だとお思いになりますな」

 この部分は手紙に書かれた文章、つまり「書簡文」です。従って、「会話文」に準じて考えていきます。
 「いつしか」は「早く」という意味の重要古語、g「参り」は謙譲語ですが、これは現代でもそのまま使います。このgは「書簡文」中の謙譲語ですから、「手紙の書き手から目的語に対する敬意」を表しています。手紙を書いているのは「少将」、そして目的語ですが、「誰(のところ)に」参るのか、というと、「姫君(のところ)に」参る、と捉えます。
 さて、「少将」はこの後、言い訳を書き連ねます。「準備してたんだけど、ひどい雨でダメみたい。悪気はないんだけど、いい加減だなんてお思いにならないで」ということなのですが、h「思ほす」は「お思いになる」という意味の尊敬語。「書簡文」中の尊敬語は、「手紙の書き手から主語に対する敬意」を表しますから、敬意の主体は、「少将」。「敬意の対象」については、「誰が」「いい加減だと思う」のか、と考えて、手紙を送った相手、つまり「姫君」です。

練習5・解答
 g-少将から姫君に対する敬意
 h-少将から姫君に対する敬意

 以上が、古典文法における「敬語の公式」及びその適用です。最初のうちは戸惑うこともあるかもしれませんが、古典の敬語は公式通り対処していけば、間違えることはまずありません。とにかく図をしっかりと頭に入れ、それに基づいて分析していってください。


Ⅱ 敬語のバリエーション
 さて、敬語の法則を理解しても、どの語が尊敬・謙譲・丁寧なのか、知っていなければ公式の適用のしようもありません。ここではそれを具体的に見ていきましょう。
 まず、「敬意を表す語」としては、敬意を表す「本動詞」「補助動詞」「助動詞」に大きく分けることができます。それぞれにつて、確認してみましょう。

1 敬意を表す本動詞
 現代語でも「行く」「食べる」などの一般的な動詞に対して、「いらっしゃる」「参る」「めしあがる」「いただく」など、敬意を表す動詞があります。それと同様に、古文にも敬意を表す「本動詞」が多数あります。これらは知識として身につけておく必要があります。ただし、現代語と共通のものや、古めかしい言い方として耳にしたことがあるものもありますので、目新しいものはそれほど多くないと思われます。
 以下、敬語の種類ごとに、主立ったものをあげておきます。

 A 尊敬語

 ①「おはします」は「おはす」より敬意が高い語です。また、②、③、⑤、⑥、⑦の「-めす」「-(は)す」が付加されている語も、元の語より敬意が高くなっています。さらに、「御覧ず」「大殿籠る」もきわめて身分の高い人にしか用いない尊敬語です。


 B 謙譲語

 ①「侍り」「候ふ」は、本来は謙譲語です。しかし、「侍り」は中古から、「候ふ」は中世から、丁寧語として用いられる方が多くなります。
 ②と③は対をなす謙譲語で、②は「身分の高い人のもとへ参る」、③は「身分の高い人のもとから退出する」という意味になります。
 ⑤の「奏す」「啓す」は、この後でも取り上げますが、それぞれ敬意の対象が決まっていて、「奏す」=「天皇・上皇などに申し上げる」、「啓す」=「皇后(中宮)・皇太子などに申し上げる」ということを意味する謙譲語です。

 では、ここで、「尊敬語・謙譲語の対照表」を提示しておきましょう。「一般の動詞」に対するそれぞれの対応語は、以下の表の通りです。ここでは、基本的な語のみ、あげてあります。

 本動詞の尊敬語・謙譲語対照表

 C 丁寧語

 先にも記しましたが、「侍り」候ふ」は元々は謙譲語で、その用例も多々あります。が、それ以上に、丁寧語として用いられる頻度が高いので、出てきたときには、謙譲語か丁寧語か、文脈から見極めましょう(ただ、それほど難しくはありません)。

練習6 次の古文の口語訳における空欄部を埋めよ。
 ①「車持の皇子おはしたり」と告ぐ。
 〈訳〉「車持の皇子が(        )」と告げる。
 ②御階の左右にひざをつきて奏す。
 〈訳〉御階の左右に膝をついて(         )。
 ③明くるまで月見ありくことはべりきに、
 〈訳〉夜が明けるまで月を見てまわることが(        )が、
 ④こは、なでふ事のたまふぞ。
 〈訳〉これは何ということを(      )のか。
 ⑤かぐや姫の言ふ、「ここにも、心にもあらでかくまかるに、…」
 〈訳〉かぐや姫が言うには、「私も不本意ながらこうして(      )ので、…」


2 敬意を表す補助動詞
 動詞が動詞本来の意味を失って、補足的機能を果たすようになった動詞のことです。現代語でいえば、「犬が走っている」の「いる」は、「そこに存在する」という意味を失って、「存続( = ing )」の機能を果たしています。
 古文では、「敬意を表す補助動詞」、つまり「尊敬・謙譲・丁寧の機能のみを果たす動詞」が多用されるので、しっかり押さえましょう。今回は主立ったものだけ、取り上げます。

 A 尊敬の補助動詞
 「給ふ」 ‥ ~なさる、お~になる
  〈例〉中の君はふと隠れたまひぬれば 〈訳〉中の君はすっと隠れなさったので

 B 謙譲の補助動詞
 「奉る」「聞こゆ」「申す」「参らす」 ‥ ~申し上げる
  〈例〉(姫君に)かく待たれたてまつるほど 〈訳〉姫君にこうも待たれ申し上げる

 C 丁寧の補助動詞
 「侍り」「候ふ」 ‥ ~です、~ます、~でございます
  〈例〉年ごろ思ひつること果たしはべりぬ 〈訳〉長年考えていた事を果たしまし

練習7 傍線部の敬語の種類と、「誰から誰への敬意」かを記せ。
 ①八月十五日ばかりの月に出で居て、かぐや姫いといたく泣きa給ふ
 ②(翁がかぐや姫に)「何しに、悲しきに、(かぐや姫を)見送りbたてまつらむ。」
 ③かぐや姫泣く泣く(翁に)言ふ、「この春より思ひ歎きc侍るなり。」
  a敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意
  b敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意
  c敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意


3 敬意を表す助動詞
 これは助動詞のところで取り上げました。再確認しておきましょう。

 A 尊敬の助動詞
  a「る」「らる」
  〈例〉さらば疾う帰られよ 〈訳〉それならば早くお帰りなされ

  b「す」「さす」「しむ」 → 「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」の形で最高敬語
  〈例〉上も笑はせ給ふ 〈訳〉帝も笑いになる

 敬意を表す助動詞は、尊敬語のみ存在します。「る」「らる」については助動詞のところで説明したとおりですが、「す」「さす」「しむ」につては、「給ふ」が下接したときだけ敬語として働き、主として皇族に対する敬意を表す「最高敬語」になります。これは後に改めて取り上げます。


 敬意を表す主立った手段はだいたい上記の通りですが、この他には、名詞に「御」などの接頭辞を付けたりする方法もりあます。


Ⅲ 注意すべきポイント
 敬語の骨格は、ここまででおおよそ押さえたのですが、古文独特の敬語のあり方や、特殊な敬語というものがあります。これらは入試でターゲットとされることも多いので、ここでまとめて解説しておきましょう。

1 二方面に対する敬意
 現代敬語と、古典の敬語の最大の違いはここにある、と言っていいかもしれません。現代敬語では、原則として一文につき一対象しか敬意を表すことができません。そこで「課長が、係長におっしゃるには」「課長が、社長に申し上げるには」というように、同じ「課長」でも、相対的に敬語が用いられる事になります。ところが、古典の敬語では、一文の「主語」「目的語」ともに敬意の対象とすることが可能です。言い換えれば、古典の敬語では、一文の中で、「尊敬語」「謙譲語」を併用することができるのです。これにより、古典敬語法は「方程式」のように解を決定することができます。
 「尊敬語」は「主語に対する敬意」、「謙譲語」は「目的語に対する敬意」で、この両方が一文の中で使用されるのが、「二方面に対する敬意」です。例を見てみましょう。

 〈例〉院渡りて、見たてまつり たまひ
 〈訳〉院(光源氏)が来られて、(紫の上を)見申し上げ なさっ

 前が「謙譲語」、後ろが「尊敬語」になっています。これは「地の文」ですが、それぞれ、敬意の対象は、
 「たてまつり」 → 作者から目的語に対する敬意 = 作者から紫の上に対する敬意
 「たまひ」 → 作者から主語に対する敬意 = 作者から院(光源氏)に対する敬意
となります。
 この二方面に対する敬意は多く見られますから、それぞれの敬語が誰に対する敬意を表しているのか、正確に把握してください。

2 最高敬語
 これまでにも触れる機会がありましたが、助動詞「す」「さす」「しむ」は、尊敬の補助動詞「給ふ」が接続して「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」の形になったときに、「尊敬」の意味になります。この形は「尊敬」+「尊敬」ですから、レベルの高い尊敬語、「最高敬語」となります。
 この「最高敬語」が用いられるのは、原則的には皇族やそれに準ずる身分の人物に対してです。なので、「最高敬語」は主語判定の重要なヒントとなります。ただし、会話文中や時代が下ると適用対象も広がりますので、文脈の確認は必ずしましょう。
 〈例〉后、春宮かへらせたまひぬれば 〈訳〉后と春宮が帰りになったので

※「おはします」「おぼしめす」「のたまはす」「おほせらる」「聞こしめす」「しろしめす」などは、もともと二つの敬語が融合して一語となったものなので、「最高敬語」と考えてよいでしょう。

3 絶対敬語
 「奏す」「啓す」は「言ふ」の謙譲語ですが、目的語が限定されるので、「絶対敬語」と言います。

 「奏す」‥天皇・上皇に、申し上げる
 「啓す」‥皇后・皇太子などに、申し上げる

 注意してほしいのは、この二語は「謙譲語である」ということです。

 〈例〉よきに奏し給へ 〈訳〉よろしく帝に申し上げてください

4 二種類の敬語として機能する語
 「給ふ」「奉る」「参る」「侍り」「候ふ」の語は、二種類の敬語の機能をもっていますので注意が必要です。

 a「給ふ」
  ①尊敬語【四段活用】‥動詞[お与えになる、くださる]
             補助動詞[~なさる、お~になる]
  〈例〉(関白殿は)亡せたまひしぞかし 〈訳」関白殿は亡くなりになったのだよ

  ②謙譲語【下二段活用】‥補助動詞[~です、~ます、~ございます]
       *ほぼ「会話文(含む、書簡文)」に限定して出現する。
       *接続する動詞も「思ふ」「見る」「聞く」などに限定される。
  〈例〉「命長きは心憂く思うたまへらるる」 〈訳〉「長生きは情けなく思われます

 謙譲語の「給ふ」は下二段活用ですが、「終止形」「連体形」はないと考えてかまいません。なので、「たまへず」「たまへて」「たまふるを」「たまふれば」など、見ればすぐにそれとわかる形で出てきます。また、前に記したように、きわめて限定的に使用されるので、判断に迷うことは少ないと思います。
 なお、「敬意の対象」ですが、謙譲語でありながら「です、ます、ございます」と訳すように、「話者から、聞き手に対する敬意」になります。また、謙譲語の「給ふ」が複合動詞に接続すると、「二つの動詞の間に割り込む」ということは覚えておいてください。
  〈例〉思ひ知る → 思ひたまへ知る

 b「奉る」
  ①謙譲語‥動詞[差し上げる]
       補助動詞[~申し上げる]
  〈例〉公に御文奉り給ふ 〈訳〉帝にお手紙を差し上げなさる

  ②尊敬語‥動詞(「食ふ」「飲む」「着る」「(車に)乗る」の尊敬語)
       [召し上がる、お召しになる、お乗りになる]
  〈例〉これより薄き御衣奉れ 〈訳〉これより薄いお着物をお召しなされ

 c「参る」
  ①謙譲語‥動詞[参る、参上する]
  〈例〉霜月の二十余日、石山に参る 〈訳〉十一月の二十日過ぎに、石山寺に参る

  ②尊敬語‥動詞(「食ふ」「飲む」「~す」の尊敬語)
       [召し上がる、~しなさる]
  〈例〉物もつゆばかり参らず 〈訳〉食べ物も少しも召し上がらない

 b、cの語の使用については、謙譲語が主流ですが、限られた動作において尊敬語となるので注意しましょう。
 「奉る」は「差し上げる」の意ですが、食べ物、飲み物、着物、車のいずれもが、「貴人にお仕えする者が、用意して差し上げる」ものであるところから、尊敬語に転じたと考えられます。また、「参る」も「食べ物・飲み物が、貴人のところに参る」「ある動作が、貴人のところに参る」というところから尊敬語として用いられるようになったのでしょう。
 これらは出現頻度はそう多くはないのですが、入試では狙われますので、しっかり押さえておいてください。

d「侍り」「候ふ」
  ①謙譲語‥動詞[お仕えする、控えておる]
  〈例〉老い人ども二三人ぞさぶらふ 〈訳〉年老いた女房たちが二三人控えておる

  ②丁寧語‥動詞[あります、おります、ございます]
       補助動詞[~です、~ます、~ございます]
  〈例〉月見ありく事侍りしに 〈訳〉月を見てまわることがございましたが

 「侍り」も「候ふ」も、もともとは謙譲語でしたが、おおよそ「侍り」は中古から、「候ふ」は中世から、丁寧語の用法が使われます。謙譲語・丁寧語の判別は、動詞の場合、文脈から判断しますが(「仕える」のか、「ある」のか)、補助動詞は丁寧語しかありません。

5 自敬表現
 会話文で、身分の高い人物が自らを敬意の対象とする敬語を用いることがありますが、これを「自敬表現」といいます。その知識さえあれば、特に問題はありません。ただ、口語訳すると、現代人にとってはかなりの違和感です。

 〈例〉(帝)「なほ率ておはしまさむ」 〈訳〉「やはり私(帝)が連れていらっしゃろう」

6 ラ変における敬意
 ラ行変格活用に属する動詞は、「あり」「をり」「はべり」「いまそかり」ですが、敬語の観点から整理しておきましょう。
 「あり」「をり」は一般の動詞です。「はべり」はこれまで見てきたとおり、もとは謙譲語で、後に丁寧語として用いられるようになりました。そして、「いまそかり」ですが、これは尊敬語です。意外とここが盲点になっているので、この機会に抑えておきましょう。
 ちなみに、「いまそかり」には「いまそがり、いますかり、いますがり」とバリエーションがありますが、見てすぐそれとわかりますから、覚えるまでもありません。

 〈例〉染殿の内侍といふいますがりけり 〈訳〉染殿の内侍という方がいらっしゃっ

練習8 次の本文は『源氏物語』の一節である。中宮が皇子を出産したので、帝は早く会いたいと思い、また源氏も皇子の顔を見たいと望むのだが、中宮は会わせようとしない、というシーンを描いたものである。口語訳を参考に、本文a~eの敬語の種類と敬意の対象を記せ。また、( ① )に補充するのにもっとも適切なものを選択肢から選べ。

【本文】
 上の、いつしかとゆかしげにa思しめしたること限りなし。かの人知れぬ御心にも、いみじう心もとなくて、人間(ひとま)に参りたまひて、「上のおぼつかながりbきこえcさせたまふを、まづ見たてまつりて( ① )はべらむ」とd聞こえe給へど、「むつかしげなるほどなれば」とて、見せたてまつりたまはぬも、ことわりなり。

【口語訳】
 帝が、皇子に早く会いたいと思っていらっしゃることはこの上もない。例の人知れぬ秘密をもつ源氏のお心としても、ひどくじれったくて、人のいない折に中宮のもとへ参上なさって、「帝が皇子のことを気がかりに思い申し上げなさるので、私がまず皇子を見申し上げて、それを帝に申し上げましょう」と中宮に申し上げなさるけれど、中宮は「皇子はとてもお見せできない時期なので」とおっしゃって、見せ申し上げなさらないのも、もっともである。

  a敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意
  b敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意
  c敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意
  d敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意
  e敬語の種類(     )・(     )の(     )に対する敬意

 「( ① )はべらむ」
   ア のたまひ  イ 啓し  ウ 申し  エ 奏し  オ 言ひ

 敬語はここまでです。次回は最終回、和歌の修辞法をまとめます。
 以下に、復習問題と前回の解答、補強問題などを掲載します。確認してください。

 頑張ろう、東高!


練習6・解答
 ①「車持の皇子おはしたり」と告ぐ。
 〈訳〉「車持の皇子が( いらっしゃった )」と告げる。
 ②御階の左右にひざをつきて奏す。
 〈訳〉御階の左右に膝をついて( 天皇に申し上げる )。
 ③明くるまで月見ありくことはべりきに、
 〈訳〉夜が明けるまで月を見てまわることが( ございました )が、
 ④こは、なでふ事のたまふぞ。
 〈訳〉これは何ということを( おっしゃる )のか。
 ⑤かぐや姫の言ふ、「ここにも、心にもあらでかくまかるに、…」
 〈訳〉かぐや姫が言うには、「私も不本意ながらこうして( 退出する )ので、…」

練習7・解答
 ①八月十五日ばかりの月に出で居て、かぐや姫いといたく泣きa給ふ
 ②(翁がかぐや姫に)「何しに、悲しきに、(かぐや姫を)見送りbたてまつらむ。」
 ③かぐや姫泣く泣く(翁に)言ふ、「この春より思ひ歎きc侍るなり。」
  a敬語の種類( 尊敬語 )・(  作者  )の( かぐや姫 )に対する敬意
  b敬語の種類( 謙譲語 )・(  翁  )の( かぐや姫 )に対する敬意
  c敬語の種類( 丁寧語 )・( かぐや姫 )の(  翁  )に対する敬意

練習8・解答
 上の、いつしかとゆかしげにa思しめしたること限りなし。かの人知れぬ御心にも、いみじう心もとなくて、人間(ひとま)に参りたまひて、「上のおぼつかながりbきこえcさせたまふを、まづ見たてまつりて( ① )はべらむ」とd聞こえe給へど、「むつかしげなるほどなれば」とて、見せたてまつりたまはぬも、ことわりなり。
  a敬語の種類( 尊敬語 )・(  作者  )の(  帝  )に対する敬意
  b敬語の種類( 謙譲語 )・(  源氏  )の(  皇子  )に対する敬意
  c敬語の種類( 尊敬語 )・(  源氏  )の(  帝  )に対する敬意
  d敬語の種類( 謙譲語 )・(  作者  )の(  中宮  )に対する敬意
  e敬語の種類( 尊敬語 )・(  作者  )の(  源氏  )に対する敬意

 「( ① )はべらむ」
   エ 奏し


復習問題6 次の本文は『竹取物語』の一節である。かぐや姫を迎えに、八月十五日に月からの使者が来るということを、翁が帝からの使者に告げている場面である。本文概要を参考に、以下の設問に答えよ。

 御使、仰せごととて、翁にいはく、「『いと心苦しく物思ふなるはまことaか』と仰せ給ふ」たけとり、泣く泣く申す、「この十五日になむ、月の都より、かぐや姫の迎へに①まうでAなる。尊く問は②せたまふ。この十五日は、人々③賜はりて、月の都の人まうでBば、捕へcさせむ」と申す。御使帰り参りて、翁の有様申して、④奏しつることども申すを、⑤聞こしめして、のたまふ、「(ⅰ)一目見たまひし御心にだに忘れたまはぬに、明け暮れ見慣れたるかぐや姫をやりて、いかが思ふeべき

【本文概要】
 帝からの使者が翁のもとを訪れ、帝からの仰せごとを告げると、翁は、「八月十五日に月の都の者がかぐや姫を迎えに来るので、帝に武者を遣わしてもらってその者を捉えさせたい」と申し上げた。使者は帝のもとに帰り、翁が帝に申し上げたことを伝えると、「一目見てさえ忘れられないのに、毎日いっしょにいるかぐや姫を失ったら、翁はどう思うだろうか」と案じなさった。

問一 傍線部a~eの助動詞の意味を、次の選択肢から選べ。
   ア 打消  イ 推量  ウ 尊敬  エ 断定  オ 打消意志
   カ 完了  キ 過去  ク 意志  ケ 使役  コ 伝聞・推定

問二 傍線部①~⑤の敬語の種類を選択肢αから選んだ上で、誰の誰に対する敬意かを選  択肢βを用いて明らかにせよ。

   選択肢α
    a 尊敬語  b 謙譲語  c 丁寧語

   選択肢β
    ア 翁  イ 御使  ウ かぐや姫  エ 月の都の人
    オ 帝  カ 作者

問三 傍線部A、Bの読みを記せ。

問四 傍線部(ⅰ)には「自敬表現」が用いられている。その点に留意しつつ口語訳せよ。

解答欄

復習問題5・解答

解説
 問一①は文中に割り込んでいるので「係助詞」、②は直前の動詞「失せ」が下二段で未然・連用が同じ形。文脈から助動詞「ぬ」+助動詞「む」と判断。問二②は「やは」を受けて連体形に。⑩も「や」を受けて連体形に。問三③「言へ」は已然形なので「順接の確定条件」、④「給は」は未然形なので「順接の仮定条件」。問四は禁止「な~そ」を入れる。問五は解答の通り。⑦「で」、⑧反語、⑨「とも」の訳がポイント。


補強問題5(助詞)

1 次の( )内の語を適当な形に改めよ。
 ①かかることや(あり)。                                   (     )
 ②母なむあり(けり)。                                     (     )
 ③法師になしたらむこそ(心苦し)。                       (     )

2 次の古文の現代語訳を空欄を埋めることで完成させよ。
 ①梅の花の、香りよきこそめでたけれ。
 〈訳〉梅の木(  )香りの良いのがすばらしい。
 ②み山にはまつの雪だに消えなくに
 〈訳〉山では松の雪(    )消えないのに
 ③命だに心にかなふものならば
 〈訳〉せめて命(     )思いのままになるならば
 ④時雨さへうちそそぐ。
 〈訳〉時雨(    )降ってくる。
 ⑤京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。
 〈訳〉京では見られない鳥(    )、だれも何とはわからない。
 ⑥いかで見ばや。
 〈訳〉なんとかして見(   )。
 ⑦いつしか花咲かなむ。
 〈訳〉早く花が咲いて(    )。 


補強問題4・解答

1 次の傍線部の語の説明として適当なものを選択肢から選んで記号で記せ。

 ①食ひに食ふ音のければ、                                ( イ )
  きのふ釣りたり鯛に、                                     ( ア )
  名に負はば、                                                    ( ウ )

  ア 過去の助動詞  イ サ変動詞  ウ 副助詞

 ②髪もいみじく長くなりなむ。                              ( イ )
  山の端逃げて入れずもあらなむ。                        ( ウ )
  もと光る竹なむ一筋ありける。                            ( ア )

  ア 係助詞  イ 強意の助動詞+推量の助動詞  ウ 終助詞

 ③寺のさまもいとあはれなり。         ( ア )
  月の都の人なり。                                                ( ウ )
  御女なくなりたまひぬなり。                              ( イ )

  ア 形容動詞の活用語尾  イ 伝聞・推定の助動詞  ウ 断定の助動詞

 ④はなやかうれしげなり。                                   ( ウ )
  子のに国のこの国の人もあらず。                      ( ア )
  幼き人は寝入りたまひけり。                             ( イ )

  ア 断定の助動詞  イ 完了の助動詞  ウ 形容動詞の活用語尾

 ⑤冬はいかなる所にも住ま。                                ( ア )
  立て人どもは、                                                   ( イ )

  ア 可能の助動詞  イ 完了(存続)の助動詞

 

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古典文法講座第十回

古典文法講座 第十回

 古典文法講座も第十回を迎えました。いよいよ終盤です。今回は、助詞を扱っていきます。
 文法のテキストなどを見ると、助詞の数は、助動詞に負けず劣らず多いのですが、しかし実際は、思ったほど苦労しません。というのも、助詞のかなりの部分が現代語に引き継がれており、ちょっと古めかしい言い方、というレベルまで含めれば、大多数が直感で理解できるからなのです。
 とはいえ、文法的にとても重要なものもありますから、助詞は重点化して、理解していきましょう。

 まず、念のため、助詞の分類と所属する助詞をあげておきます。ただし、すべて覚えなければならないというのでありませんから、安心してください。

1 格助詞‥体言等に付き、その体言等の格(簡単に言えば、文における「身分」)を示す
   所属語[が・の・に・を・へ・と・より・から・にて・して]
2 接続助詞‥活用語に付いて、その前後の関係(順接、逆接など)を示す。
   所属語[ば・とも・ど・ども・が・に・を・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから]
3 副助詞‥いろいろな語句に付き、その語句に特定の意味を添える。
   所属語[だに・すら・さへ・のみ・ばかり・まで・など・し]
4 係助詞‥文中に割り込み、強調、疑問・反語等の構文を形成する。
   所属語[ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も]
5 終助詞‥文末に付き、文にある特定の意味を添える。
   所属語[な・そ・ばや・なむ・もがな・てしがな・にしがな・な・かな・は・よ・かし・ぞ]
6 間投助詞‥語句・文末に置かれて、詠嘆・呼び掛け等の機能を果たす。
   所属語[や・よ・を]

 ここにあげたもののうち、◎「特に重要なもの」と、○「重要なもの」について、以下、見ていくことにしましょう。


1 格助詞 [が・の・に・を・へ・と・より・から・にて・して]
 格助詞とは、体言に付いて、その体言が文の中でどのような役割を果たすかを決定する助詞です。ちょっとざっくりした現代語の例で説明すると、「父、私、本」という名詞があったとして、これが「父が私に本をくれた」という文を形成したとき、「が」=主格(動作「くれた」の主体)、「に」=与格(動作「くれた」の終着点)、「を」=対格(動作「くれた」の対象)というように、格助詞は、いってみればそれぞれの名詞に、文中での「身分」を与えているのです。
 この「身分」には他にもいろいろあって、上記の他にも場所とか、時間とか、状態とかがあげられますが、直観がききますので、いちいち覚える必要はないでしょう。ただし、古文で注意しておいてほしいのは、「主格は、名詞単独・格助詞なし、で表すことが多い」「対格でも、格助詞「を」を用いず、名詞単独で表す場合がある」ということです。体言が、格助詞なしで、「身分」を得ることができるのです。
 少し説明が長くなりましたが、あまり「格助詞とは?」ということに向きあうことがないかな、と思いましたので、老婆心ながら。
 では、ここからは重点化していきましょう。

◎ (1)「の」
  ①主格[~が]
  〈例〉山川に風かけたるしがらみは 〈訳〉山の谷川に風かけたしがらみは
  ②属格[~の]
  〈例〉わが庵はみやこたつみ 〈訳〉私の庵は都南東だ
  ③同格[ (~の…連体形、の形で)~で…なの(が・を)]
  〈例〉よろづの虫、恐ろしげなるを 〈訳〉色々な虫、恐ろしげなのを
  ④準体法[~の(もの・こと)]
  〈例〉いにしへはあはれなること多かり 〈訳〉昔のものは感じ入ることが多い
  ⑤比喩[~のよう]
  〈例〉岩うつ波おのれのみ砕けて 〈訳〉岩を打つ波のように私だけが砕け散って

 この中で、①、②、④は、現代語の用法と同じです。①「私知る限りでは」、②「昨日試合はすごかった」、④「今日の夕食、私はどこ?」というように。この中で、③は一般に「連体修飾格」とされているのですが、ここでは「~に属する」という意味の「属格」という術語を使いました。
 ちなみに⑤も、現代語に生き残っています(⑤「地獄思いをした」など)が、特に和歌の場合、この知識があると理解しやすくなるので注意しておきましょう。
 もっとも気をつけなければいけないのは、③「同格」です。これは英語における「関係代名詞」の用法とパラレルです。
 〈例〉many kinds of warms which have terrible appearances
    よろづの虫、おそろしげなる
 これもざっくりな例文ですが、これが「同格」の「の」です。ただし、口語訳する際は語順を入れ替えないのがルールなので、「~で、…なのが」と訳します。この「同格」用法と「主格」用法の見極めが、入試でしばしば問われるので、十分に注意してください。

○ (2)「して」
  ①[~を使って]
  〈例〉扇してこなたかなたあふぎ散らして 〈訳〉扇あちらこちらあおぎ散らして
  ②[~と一緒に]
  〈例〉睦ましきかぎりしておはしましぬ 〈訳〉親しい者だけと一緒にいらした

 「して」は、英語の”with”に似た語です。①なら" wright with a pen."、②なら" go with my friends"とほぼ同じ用法と考えることができます。なので、格助詞「して」は”with”をイメージして把握するといいでしょう。
 ちなみに、接続助詞にも「して」がありますが、これは「で」と口語訳するものが該当します。また、一番多いのは、サ変連用形+接続助詞「て」ですから、これはしっかり用言を見極めましょう。

練習1 次の古文の口語訳の空欄を埋めよ。
 ①草の花は撫子。唐のはさらなり。
 〈訳〉草の花なら撫子。(      )言うまでもない。
 ②いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たるが、来て
 〈訳〉たいそう美しい(   )、黄色の地の袈裟を着ている方が、来て
 ③玉の男御子さへ生まれ給ひぬ。
 〈訳〉(       )皇子までお生まれになった。
 ④桂川、月のあかきにぞ渡る。
 〈訳〉桂川を、(    )明るい時に渡る。


2 接続助詞 [ば・とも・ど・ども・が・に・を・て・して・で・つつ・ながら・ものの・ものを・ものから]
 接続助詞は活用語に付いて、後文につなげる働きをする助詞です。条件接続(仮定条件、確定条件)と単純接続にわけられ、前者はさらに、順接、逆接に分けられます。ただし、条件接続に着目するのは、「ば」に関連するグループですから、そこを押さえればそれほど神経質になる必要はありません。

◎ (1)「ば」
  ①仮定条件[【未然形接続】もしも~ならば]
〈例〉まつとし聞かいま帰りこむ 〈訳〉待っていると聞いたならばすぐ帰ってこよう
  ②確定条件[【已然形接続】~なので、~と、~ところ]
〈例〉わびぬれいまはたおなじ 〈訳〉つらく苦しいので今はもうおなじことだ

 「ば」は、接続する活用形によって働きが変わりますので要注意です。未然形に接続した場合は「もしも~ならば」と仮定を表し、已然形に接続した場合は「~なのて」と原因・理由を表します。ただし、確定条件を「~なので」と訳すと強すぎる場合もあるので、その時には「~と」(時制・現在)「~ところ」(時制・過去)と口語訳してください。

 さて、ここで「ば」に関連する助詞をまとめて整理しておきます。文法用語としては、「未然形+ば(もしも~ならば)」は「順接の仮定条件」と呼ばれ、「已然形+ば(~なので)」は「順接の確定条件」とされます。ちょうどこれと対をなすものとして、「逆接の仮定条件」として「終止形+とも(たとえ~としても)」があり、「逆接の確定条件」として「已然形+ど・ども(~けれども)」があります。これを表に整理すると、次のようになります。

 このように整理して、次の二点を押さえておいてください。まず第一に、「仮定条件」を表す接続助詞は、ここに出てきた「未然形+ば」「終止形+とも」だけだ、ということです。これ以外で「仮定」を表すとしたら、それは助動詞「む」の仮定用法ぐらいです。次いで第二に、「已然形に接続する語」は、原則として「ば」「ど・ども」だけだ、ということです。
 つまり、この表を押さえておけば、「(「む」を除いて)仮定の話はこれだけだな」「(係り結びを除いて)已然形はこの形だけだな」と割り切ることができるのです。覚えておいて損はありません。
 一応ここで、「とも」と「ど・ども」の例をあげておきましょう。

 〈例〉鳥のそら音ははかるとも 〈訳〉たとえ鶏の鳴き真似で騙せたとしても
 〈例〉忍ぶれ色に出でにけり 〈訳〉隠しているけれど顔色に出てしまったなあ

◎ (2)「を」「に」
  ①順接[~ので]
  〈例〉涙のこぼるる目も見えず 〈訳〉涙がこぼれるので目も見えず
  ②逆接[~のに]
  〈例〉都へと思ふものの悲しきは 〈訳〉都へと思うのだが何となく悲しいのは
  ③単純接続[~と]
  〈例〉寄りて見る、筒の中光たり 〈訳〉寄って見てみる、筒の中が光っている

 「を」「に」は、格助詞にもあり接続助詞にもあり、またどう訳したものだか迷うことも多く、高校生にはなかなか難儀だと思います。なので、ここで考え方を整理しておきましょう。
 そもそも「を」「に」は体言に接続し、前者は「対象」を、後者は「場」を表す格助詞でした(なので、格助詞「を」「に」の前には名詞がくる、としておけばOKです)。これが活用語の連体形に接続することで、接続助詞としても機能するようになります。すなわち、連体形の後には表記されない形式名詞が隠れていると考えることができますから、「~連体形+を」は「~という・こと・に対して」、「~連体形+に」は「~という・場・において」という意味になり、それが後文につながっていくのです。
 要するに、前文を「こと」化して、「それに対して」あるいは「そういう状況で」、これこれなのだよ(後文)、というだけの機能なので、順接、逆接、単純接続、なんでもござれ、ということになってしまいます。ここでは一応、①~③に分類はしましたが、決して厳密なものではないので、基本概念をイメージしてつなげていけばいいでしょう。
 とはいっても、「口語訳で困る」という声も予想されますから、こう考えておくと一助にはなるかもしれません。基本的には「~(だ)が」で訳す。実は現代語「~(だ)が」は、逆接だけでなく、単純接続も表す傾向があります。そのあいまいさに乗っかっておく、という戦略です。それでうまくいかないなら、「~と」とか「~ので」に乗り換える。少々ご都合主義的ですが、もともと意味的にはあいまいさが内在している語法ですから、こうした対応が妥当かなと思います。
 むしろ、「を」「に」には、他に着目したい機能があります。これについては、接続助詞「て」の後に説明します。

◎ (3)「て」
  ①単純接続[~て]
  〈例〉急ぎ行き見るに 〈訳〉急いで行っ見てみると

 これは、現代語の「て」とまったく変わりません。従って、特に解釈する必要もありません。にもかかわらず、重要事項としてとりあげているのは、その特性を理解しておいてほしいからです。
 接続助詞「て」は、完了の助動詞「つ」の連用形から生じたといわれますが、そのためか、動作等を完結させ、次につないでいく働きをします。これにより、「て」が連続する文では、動作が時系列で継起する表現となりますが、このとき主語は一定です。
 〈例〉(男、)去年を恋ひいき、立ち見、ゐ見、見れど
 この例では、「男(が)」→「恋ひ」「いき」「立ち」「見」(「ゐ」)「見」と、「男」という特定の主語に対して、動作が時系列で継起しているのが見て取れます。こういう「て」の性格を理解しておくことが、とても重要です。というのは、「主語判定」という、古文読解上の難題への重要な対処法となるからなのです。このことについて、ここにまとめておきます。。

 Ⅰ 接続助詞「て」の前後では、主語は原則として変化しない
 Ⅱ 接続助詞「ば」「ど・ども」の前後では、主語が高頻度で変化する。
 Ⅲ 接続助詞「を」「に」の前後では、主語がかなり高い頻度で変化する。

 なぜこうなるかというと、「て」については先に記したとおり、ある主語に対して動作が次々と継起していく表現なので、原則的に主語は変わりません。一方、「ば」「ど・ども」は条件節をつくり、いったんその節の中で主述関係が完結するので、後文では新たな主語が立つことが多いと考えられます。また、「を」「に」では、その前の文が「こと」化されることで、やはり主述関係が完結するので(「私が行くことで、皆はどう思うのだろう」、というイメージです)、かなりの頻度で主語が変わります。
 このことを理解しておくと、古文の読解がかなり楽になります。というも、現代語でさえ主語省略は茶飯事です。古文では、現代語よりもはるかに主語が省略されます。このことが古文読解のハードルとなっているのですが、接続助詞に関するこうした知識があると、読解上、大きなヒントとなるのです。

○ (4)「で」
  ①[~ないで]
  〈例〉やすらは寝なましものを 〈訳〉ぐずぐずしないで寝たらよかったのに

 「打消」の助動詞「ず」と、接続助詞「て」が融合して「ず・て→で」となった接続助詞です。なので、未然形接続になります。

○ (5)」「つつ」
  ①動作の反復[~ては]
  〈例〉かたみに袖をしぼりつつ 〈訳〉お互いに涙の袖をしぼっては

 動作が繰り返されることを表します。「何度も」「繰り返し」などと、副詞的に口語訳する場合もあります。なお、「動作の継続(~ながら)」と判断できる場合もありますが、できるだけ「動作の反復」で捉えた方がいいでしょう。

○ (6)「ものを」「ものの」「ものから」
  ①逆接[~けれども]
  〈例〉月は有明にて光をさまれるものから 〈訳〉有明の月で光は弱いけれど

 「ものを」「ものの」「ものから」は「逆接」で押さえるのがポイントです。順接もあるのですが、出現頻度は高くありません。「ものを」「ものの」は現代語でも使用するので(そうはいうものの、など)問題はないのですが、「ものから」を「逆接」でとることには注意してください。ちなみに「もの」は元々形式名詞だったので、これらは連体形に接続します。

練習2 次の古文の口語訳の空欄を埋めよ。
 ①悪人のまねとて人を殺さば悪人なり。
 〈訳〉悪人の真似だといって人を(        )悪人である。
 ②京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。
 〈訳〉京では見られない鳥(     )、誰もわからない。
 ③野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
 〈訳〉野山に分け入って竹を(      )、いろいろなことに使ったのだった。

練習3 次の( )内の語を、適切な形に改めよ。
 ①人を( 尋ぬ )とも、声もせじ。
 ②人を( 尋ぬ )ども、声もせず。
 ③人を( 尋ぬ )ものの、声もせず。


3 副助詞 [だに・すら・さへ・のみ・ばかり・まで・など・し]
 副助詞はさまざまな語句に付き、その語句に「限定」や「程度」などの意味を添える機能を持ちます。押さえておくべき副助詞は限定されますので、しっかり覚えておきましょう。

◎ (1)「だに」「すら」「さへ」
 a「だに」
  ①[~さえ]
  〈例〉蛍ばかりの光だになし 〈訳〉蛍ぐらいの光さえない
  ②[せめて~だけでも]
  〈例〉声をだに聞かせ給へ 〈訳〉せめて声をだけでもお聞かせください

 b「すら」
  ①[~さえ]
  〈例〉賤しき田夫すら仏の御法を信じて 〈訳〉卑しい農夫でさえ仏の教えを信じて

 c「さへ」
  ①[~までも]
  〈例〉所がらさへ身にしみて思へり 〈訳〉場所がらまでもしみじみと感じている

 「だに」「すら」「さへ」は三つセットにして押さえましょう。最初の二つが「さえ」で口語訳、「さへ」だけ「さえ」ではなく「までも」である、と覚えます。また、「だに」が「さえ」で訳せないときに、「せめて~だけでも」に切り替えていきます。
 この副助詞三羽がらすは入試でも重要項目になりますから、確実に押さえてください。

○ (2)「し」
  ①強意
  〈例〉花を見れば物思ひもなし 〈訳〉花を見ると悩みもなくなる

 強意の副助詞「し」は、文中に割り込んで、直前の語句を強調する働きをします。例であれば「花を」という語句を「し」が強調しています。基本的に訳出はしませんが、これをあえて解釈するなら、「そう、花だよ、花、花を見ると」というようなニュアンスになりましょうか(まあ、ここまで大袈裟ではないでしょうが)。
 副助詞「し」の見分けは、文に割り込んだ語なので、外しても意味が通ります。例でいえば、「花を見れば」としても、何ら問題はありません。
 そして、実はこの見分けが重要なのです。過去の助動詞「き」の連体形は「し」、これとの見分けがしばしば問題になります。これに対するには、次の和歌を覚えておくといいでしょう。

 唐衣着つつなれにつまあればはるばる来ぬる旅をしぞ思ふ

 「なれにしつま」の「し」は、外すと「なれにつま」となって文が壊れます。これは過去の助動詞「き」の連体形。直後に「つま(妻)」という名詞があることもヒントになります。一方、「つましあれば」の「し」は、外しても「つまあれば」となって問題ありません。こちらが強意の副助詞です。この歌の上の句だけでも暗記しておくと、「し」の識別の時に役に立ちます。

練習4 次の古文の口語訳の空欄を埋めよ。
 ①ほたるばかりの光だになし。
 〈訳〉蛍ぐらいの(     )ない。
 ②散りぬとも香をだに残せ梅の花
 〈訳〉散ってしまったとしても(           )残せ、梅の花よ
 ③畜生すら法を聞きて善心をおこす。
 〈訳〉(       )仏の教えを聞いて善き心をおこす。
 ④雨風、岩も動くばかり降りふぶきて、雷さへ鳴りてとどろくに
 〈訳〉雨や風が、岩も動くほどに吹き荒れて、(      )鳴り響くので


4 係助詞 [ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も]
 係助詞は、文中に割り込む形でいろいろな語に付き、強調、疑問・反語、取り立てなどの文を形成する助詞です。中でも「ぞ」「なむ」「や」「か」は文末を連体形に変え、「こそ」は文末を已然形に変えるという、「係り結びの法則」の機能を有します。
 「は」「も」は、係り結びの法則には関与しませんが、接続した語句をフォーカスし、文のテーマとする機能を持っています。
 このように係助詞は、いわば「係助詞構文」とでもいうべきものを創出する助詞なのです。

◎ (1)「ぞ」「なむ」
  ①強意
  〈例〉恋つもりて淵となりぬる 〈訳〉恋が積もって淵のようになってしまった
  〈例〉夜いたう更けてなむ事はてける 〈訳〉夜がたいそう更けて行事は終わった

 「ぞ」「なむ」ともに直前の語句を強調しますが、文末が連体形になることによって「~のことよ」というニュアンスを含み、文としても強調文になります。
 この「連体形で文を結ぶ」形式は、「連体形終止文」と呼ばれ、中世では係助詞がなくても一般に用いられるようになります(なので、鎌倉時代の説話などで、「係助詞がないのに連体形になっている」などという時には「これか」と思ってください)。「武家の世」が強い表現を好んだからかも知れません。
 ちなみに、「ぞ」は硬く、「なむ」は柔らかい、というイメージから、「ぞ」は地の文で多用され、「なむ」は会話文で多用される傾向があります。なお、和歌では「なむ」はあまり使われません。してみると、古の人々にとって、和歌は会話的な表現ではなかった、と考えることができるかもしれません(つまり、カジュアルでなく、フォーマル?)。

◎ (2)「や」「か」
  ①疑問[~か]
  〈例〉またこのごろしのばれむ 〈訳〉また今のことが慕われるのだろう
  〈例〉いつみきとて恋しかるらむ 〈訳〉いつ会ったからとて恋しいのだろう
  ②反語[~か、いや~ではない]
  〈例〉そよ人を忘れはする 〈訳〉そう、あなたを忘れよういや忘れない
  〈例〉いづれ歌をよまざりける 〈訳〉誰が歌を詠まないだろういや皆、詠む

 係助詞「や」「か」は、「疑問」あるいは「反語」を表し、文末は連体形になります。「連体形終止文」となるのは、平叙文と違い、疑問文では回答が要求されるため、訴えかける強い表現が求められたからと考えることができます。
 ちなみに、「や」と「か」の違いは、「や」が答えの想定される「yes・no疑問文」であるのに対し、「か」は答えを想定していない「純粋疑問文」である、という傾向が見られます。。
 なお、「反語」は、「疑問文+(暗黙の)no回答」と考えておきましょう。

◎ (3)「こそ」
  ①強意
  〈例〉恋に朽ちなむ名こそ惜しけれ 〈訳〉恋に朽ちはてる浮き名が惜しいことよ

 「こそ」は直前の語句を強調しますが、これは現代語でも同様です(「わたしこそ悪かった」、など)。古文でのポイントは、係り結びの法則により、文末が已然形になることです。
 他の「係り結びの法則」が連体形終止文になるのに対し、なぜ、「こそ」は已然形か、という疑問が湧くのではないでしょうか。これに対し、一応の解答を記しておきましょう。
 ざっくり言うと、「已然形」はもともと順接(ので)逆接(のに)の条件節を作る活用形でした。そこに強意の係助詞「こそ」が参加して、特に逆接の形が使われるようになります。
(ⅰ)〈例〉中垣こそあれ、ひとつ家のやうなれば
  〈訳〉中垣はあるが、一軒の家のようなので
 次に、「こそ~已然形」節の後文が省略される形が現れます。
(ⅱ)〈例〉心のおことたりならばこそあらめ。
  〈訳〉怠け心であるのならばよくないだろうが。
 ここまでは、逆接の機能を残しています。ただ、こういう場合、単なる逆接ではなく、言外の余韻ともいうべきものが認められます。この余韻から、逆接ではない、強調文としての「こそ~已然形」が生まれてきます。
(ⅲ)〈例〉人々の、花、蝶やとめづるこそ、はかなくあやしけれ。
  〈訳〉人々が、花だ、蝶だと褒めそやすのこそ、つまらなくおかしなことだ。
 これが係り結びの法則「こそ~已然形」の背景です。
 ここで改めて注意しておきたいのは、(ⅰ)や(ⅱ)の形も残っているということです。特に、「こそ~已然形、…」の形は「逆接」で口語訳してください。

◎ (4)「は」
  ①取り立て
  〈例〉わが衣手に雪降りつつ 〈訳〉私の着物の袖に雪しきりに降りかかるよ
  ②「やは」「かは」 → 反語
  〈例〉物見て何かはせむ 〈訳〉見物して何になろういや、何にもならない

 「は」の用い方は現代語と同じですが、その機能を明らかにするなら、接続した語句にフォーカスし、その語句を文におけるテーマとして浮かび上がらせる働き、と言っていいでしょう。ここではこの機能を「取り立て」としておきました。
 さて、注意すべきは②で、疑問・反語の係助詞「や」「か」に係助詞「は」が続くと、これは原則として「反語」になります。覚えておいてください。

◎ (5)「も」
  ①列挙・強調
  〈例〉松昔の友ならなくに 〈訳〉松昔からの友ではないというのに
  ②「もぞ」「もこそ」 → 「~するといけない」「~したら大変だ」
  〈例〉烏などもこそ見つくれ 〈訳〉烏などが見つけたら大変だ

 「も」も、現代語と同じですが、機能としては概ね、「AもBも」と物事を列挙するか、「(他はもちろん)Xも」と、暗黙の前提を踏まえXを強調するか、のどちらかです(一部、単純な強調というのもありますが)。
 やはり注目しておかなければならないのは②です。強意の係助詞「ぞ」「こそ」の前に係助詞「も」がくると、懸念を表す表現となり、文末に「~するといけない」「~したら大変だ」という言葉を補って口語訳します。これは重要事項ですので、必ず押さえてください。

練習5 次の( )内の語を、適切な形に改めよ。
 ①水はその山に、三ところぞ流れ( たり )。
 ②みをつくしてや恋ひわたる( べし )。
 ③また野分のあしたこそ( をかし )。

練習6 次の古文の口語訳の空欄を埋めよ。
 ①そよ人を忘れやはする
 〈訳〉そうですよ、あなたを忘れたりしましょうか、(            )
 ②門よく鎖してよ。雨もぞ降る。
 〈訳〉門をしっかり閉めよ。雨が(         )。
 ③品、かたちこそ生まれつきたらめ、心はなどか賢(かしこ)きより賢きにも移さば移らざらん。
 〈訳〉身分や容姿は生まれつき(       )、心はどうして賢くならなかろうか。


5 終助詞 [な・そ・ばや・なむ・もがな・てしがな・にしがな・な・かな・は・よ・かし・ぞ]
 終助詞は、文末に付き、禁止、願望、詠嘆などを表す終助詞です。特に重要なのは、禁止と願望です。

◎ (1)「な~そ」
  ①禁止[~するな、~しないでくれ]
  〈例〉なほと思はせたまふ 〈訳〉やはり寝ないでくれと思っていらっしゃる

 禁止の「な~そ」の形では、「な」が呼応の副詞、「そ」が終助詞です。
 少しややこしいのですが「過ちす(失敗するな)」のように文末に出てくる「な」は禁止の終助詞です。こちらは現代語と変わりません。

◎ (2)「ばや」
  ①願望[~たい]
  〈例〉ほととぎすの声たづねに行かばや 〈訳〉ホトトギスの声を尋ねに行きたい

 もっとも一般的な願望の終助詞です。未然形に接続することを覚えておきましょう。

◎ (3)「てしがな」「にしがな」
  ①願望[~たいものだ]
  〈例〉あがる雲雀になりてしか 〈訳〉空に上がる雲雀になりたいものだ

 「てしがな」「にしがな」は、「てしか」「にしか」という形でも出現します。この終助詞の「て」「に」は、もともとは完了の助動詞「つ」「ぬ」の連用形でした。それが願望を表す終助詞「しか」と融合して「てしか」「にしか」となり、詠嘆を表す「な」が融合して「てしがな」「にしがな」となりました。
 こういう成立事情から、連用形に接続します。

◎ (4)「もがな」
  ①願望[~があればなあ、~といいなあ]
  〈例〉心あらむ友もがな 〈訳〉情趣を解する友があればなあ

 「もがな」は、原則的には名詞に付き、その存在を望む願望の終助詞ですが、かなり融通無碍で、いろいろな語句に付いているのを目にします。その場合には、「(そうだと)いいなあ」という訳を基本に解釈していくといいでしょう。

◎ (5)「なむ」
  ①あつらえ[~てほしい]
  〈例〉外山の霞たたずもあらなむ 〈訳〉外山の霞が立たないでいてほしい

 「あつらえ」というのは、他者に対する願望のことです。例でいえば、「外山の霞」に対して、「立たないでほしい」と願っているわけです。
 終助詞「なむ」は未然形接続ですが、他の「なむ」との識別がしばしば問われます。以前にも説明しましたが、ここでもう一度、確認しておきましょう。

 a いつしか梅咲かなむ
    未然形接続ですから、終助詞の「なむ」です。
    〈訳〉はやく梅が咲いてほしい。

 b 宮ものぞきたまひなむ
    連用形接続ですから、助動詞「つ」・未然形+助動詞「む」・終止形です。
    〈訳〉宮もきっと垣間見なさるだろう。

 c 水無瀬殿思ひ出づるも夢のやうになむ
    これは係助詞「なむ」の後の「ある」が省略された文です。注意してください。
    〈訳〉水無瀬殿を思い出すのも夢のようで。

○ (6)「かし」
  ①念押し[~(だ)よ]
  〈例〉思ひ残すことはあらじかし 〈訳〉思い残すことはあるまい

 「かし」は、けっこう見かけるのですが、何と訳したらよいか、迷う人もいると思います。フランクな言い方をするならば、「だよね~」が一番近いのですが、ともかく「~よ」と訳しておけば大丈夫です。

練習7 次の古文の口語訳の空欄を埋めよ。
 ①今井が行くへを聞かばや。
 〈訳〉今井のゆくえを(      )。
 ②いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな。
 〈訳〉なんとかして、このかぐや姫を、手に入れたい、(       )。
 ③「惟光、とく参らなむ」と思す。
 〈訳〉「惟光が、早く(        )」とお思いになる。
 ④な起こしたてまつりそ。
 〈訳〉起こし申し上げる(   )。


6 間投助詞 [や・よ・を]
 間投助詞は「合いの手」です。a「いと寒し」b「少納言」c「見つつ居らむ」などで、aは詠嘆、bは呼び掛け、cは一拍おく、といった機能を果たしています。読解上、さほど問題となりません。


 以上で、助詞は終了です。いろいろと説明を加えたので長くなってしましましたが、◎のところをしっかりと押さえておけば、ほぼ問題はありません。
 以下に、練習問題の解答、復習問題、前回の復習問題の解答、補強問題を掲載しておきました。取り組んでみてください。

 頑張ろう、東高!


練習1・解答
 ①草の花は撫子。唐のはさらなり。
 〈訳〉草の花なら撫子。( 中国のものは )言うまでもない。
 ②いと清げなる僧の、黄なる地の袈裟着たるが、来て
 〈訳〉たいそう美しい( で )、黄色の地の袈裟を着ている方が、来て
 ③玉の男御子さへ生まれ給ひぬ。
 〈訳〉( 玉のような )皇子までお生まれになった。
 ④桂川、月のあかきにぞ渡る。
 〈訳〉桂川を、( 月が )明るい時に渡る。

練習2・解答
 ①悪人のまねとて人を殺さば悪人なり。
 〈訳〉悪人の真似だといって人を( 殺したならば )悪人である。
 ②京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。
 〈訳〉京では見られない鳥( なので )、誰もわからない。
 ③野山にまじりて竹を取りつつ、よろづのことに使ひけり。
 〈訳〉野山に分け入って竹を( 取っては )、いろいろなことに使ったのだった。

練習3・解答
 ①人を( 尋ぬ )とも、声もせじ。
 ②人を( 尋ぬれ )ども、声もせず。
 ③人を( 尋ぬる )ものの、声もせず。

練習4・解答
 ①ほたるばかりの光だになし。
 〈訳〉蛍ぐらいの( 光さえ )ない。
 ②散りぬとも香をだに残せ梅の花
 〈訳〉散ってしまったとしても( せめて香りだけでも )残せ、梅の花よ
 ③畜生すら法を聞きて善心をおこす。
 〈訳〉( 畜生でさえ )仏の教えを聞いて善き心をおこす。
 ④雨風、岩も動くばかり降りふぶきて、雷さへ鳴りてとどろくに
 〈訳〉雨や風が、岩も動くほどに吹き荒れて、( 雷までも )鳴り響くので

練習5・解答
 ①水はその山に、三ところぞ流れ( たる )。
 ②みをつくしてや恋ひわたる( べき )。
 ③また野分のあしたこそ( をかしけれ )。

練習6・解答
 ①そよ人を忘れやはする
 〈訳〉そうですよ、あなたを忘れたりしましょうか、( いや、忘れたりしません )
 ②門よく鎖してよ。雨もぞ降る。
 〈訳〉門をしっかり閉めよ。雨が( 降るといけない )。
 ③品、かたちこそ生まれつきたらめ、心はなどか賢きより賢きにも移さば移らざらん。
 〈訳〉身分や容姿は生まれつき( であろうが )、心はどうして賢くならなかろうか。

練習7・解答
 ①今井が行くへを聞かばや。
 〈訳〉今井のゆくえを( 聞きたい )。
 ②いかでこのかぐや姫を得てしがな、見てしがな。
 〈訳〉なんとかして、このかぐや姫を、手に入れたい、( 結婚したい )。
 ③「惟光、とく参らなむ」と思す。
 〈訳〉「惟光が、早く( 参ってほしい )」とお思いになる。
 ④な起こしたてまつりそ。
 〈訳〉起こし申し上げる( な )。


復習問題5 次の古文を読んで、以下の問いに答えよ。

 翁喜びて、家に帰りてかぐや姫にかたらふやう、「かく①なむ御門の仰せ給へる。なほやは仕うまつり給は ②( ず )」と言へ③、かぐや姫答へていはく、「もはら、さやうの宮仕へ仕うまつらじと思ふを、しひて仕うまつらせ給は④消え失せ⑤なむ。御官冠つかうまつりて、死ぬばかりなり」翁いらふるやう、「⑥( )し給ひ( )。官冠も、わが子を⑦見たてまつらでは、⑧何にかはせむ。⑨さはありとも、などか宮仕へをしたまはざらむ。死に給ふべきやうやある⑩( べし )」と言ふ。

問一 傍線部①、⑤の文法的説明として適当なものを、次の選択肢からそれぞれ選べ。

   ア 係助詞  イ 終助詞  ウ 助動詞「ぬ」未然形+助動詞「む」終止形

問二 ②、⑩の助動詞を適切な形に改めよ。。

問三 傍線部③、④の文法的説明として適当なものを、次の選択肢からそれぞれ選べ。

   ア 順接の仮定条件  イ 逆接の仮定条件  ウ 順接の確定条件
   エ 逆接の確定条件

問四 傍線部⑥は、「(そのようなことは)なさらないでおくれ」という禁止の表現にな  る。この口語訳に合致するよう、空欄に適語を補え。

問五 傍線部⑦、⑧、⑨を現代語訳せよ。
   (「奉る」は補助動詞で、「~申し上げる」と訳す)

解答欄

復習問題4・解答

解説
 問一①「落つる」までが用言。②「つべし」で強意。③は「推・意・可・当・命・適」から「推量(~にちがいない)」が妥当です。④⑤は「せ・○・き・し・しか・○」の確認。⑦は「な」=助動詞「ぬ」(強意)・未然形、「ん」/「む」=助動詞「む」(仮定)・連体形、です。これは意味まで分析すると、かなりハイレベルになります。「なん」の直後に「時」という名詞が省略されていると判断し、「~なん時にを」から、「ん」は婉曲・仮定考えるのですが、ここは「~としたら、その―」と訳す仮定をとります。ただ、問題としては「連用形+なん」から判断できます。⑪は主語一人称なので「打消意志」、⑬は、厳密に言えば「現在の原因推量」ですが、「現在推量」でよいでしょう。
 問二は、現代仮名遣い「とのい」で答えるのが最近の入試の傾向ですが、一応、古典仮名遣いで記しました。
 問三⑧「みそかに」は、「み」を「ひ」に代えると、「ひそかに」と、現代語になります。⑫は基本、⑭「あさまし」は入試頻出古語、「驚きあきれる」と覚えておきましょう。
 問四、「で」=「ずて」は今回やった接続助詞。「え~打消」=「~できない」と訳せるかがポイント。問五は、「そうおっしゃるなら」の「そう」が指す内容を捉えます。

現代語訳
 大蔵卿ぐらい耳聡い人はいない。ほんとうに、蚊のまつげが落ちるのも聞きつけなさるにちがいない御様子でした。
 (私が)職の御曹司の西面に住んでいたころ、大殿の新中将が宿直で、お話しなどしていた時に、そばにいる人が、「この中将に扇のことをお話しなさい」と、ささやくので、「いま、あの方がお立ちになったら、その時にね」と、たいそうこっそりと話しかけるのを、その当人でさえ聞きつけることができないで、「なに、なに」と、耳を傾けて近づくのに、遠くに座っていて、「憎らしいことよ。そうおっしゃるならば、今日は立つまい」と、おっしゃったのは、どうやって聞きつけなさっているのだろうと、驚きあきれました。


補強問題4(紛らわしい語の判断)

1 次の傍線部の語の説明として適当なものを選択肢から選んで記号で記せ。

 ①食ひに食ふ音のければ、                (  )
  きのふ釣りたり鯛に、                 (  )
  名に負はば、                      (  )

  ア 過去の助動詞  イ サ変動詞  ウ 副助詞

 ②髪もいみじく長くなりなむ。               (  )
  山の端逃げて入れずもあらなむ。                      (  )
  もと光る竹なむ一筋ありける。                          (  )

  ア 係助詞  イ 強意の助動詞+推量の助動詞  ウ 終助詞

 ③寺のさまもいとあはれなり。               (  )
  月の都の人なり。                                                 (  )
  御女なくなりたまひぬなり。                                     (  )

  ア 形容動詞の活用語尾  イ 伝聞・推定の助動詞  ウ 断定の助動詞

 ④はなやかうれしげなり。                                       (  )
  子のに国のこの国の人もあらず。                              (  )
  幼き人は寝入りたまひけり。                                   (  )

  ア 断定の助動詞  イ 完了の助動詞  ウ 形容動詞の活用語尾

 ⑤冬はいかなる所にも住ま。                                     (  )
  立て人どもは、                                                  (  )

  ア 可能の助動詞  イ 完了(存続)の助動詞

 

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古典文法講座第九回

古典文法講座第九回

 今回は、残っている助動詞を一通り見ていきましょう。今回扱う助動詞は、どれも比較的シンプルなので、理解しやすいと思います。

6 願望 「まほし」「たし」
 ①願望[~たい、~てほしい]
  〈例〉慰むと聞けば語らまほしけれど 〈訳〉慰められると聞くと話したいけれど
  〈例〉父のおはしまさん所へぞ参りたき 〈訳〉父のいらっしゃる所へ行きたい

 願望の助動詞「まほし」は中古を中心に使われ、「たし」は中世以降使われるようになりました。注意しなければいけないのは接続で、「まほし」は未実現の助動詞ですから未然形に付きますが、「たし」は「いたし(はなはだしい)」という形容詞が助動詞化したものであるため、連用形に付きます。
 なお、「あらまほし」「ありたし」という形で出たときは、「あってほしい」と口語訳するのが常道です。ちなみに、「あらまほし」はさらに一語化して「理想的だ」という意味を表すようになります。

7 断定「なり」「たり」
 ①断定[~である、~だ]
 〈例〉子孫あらせじと思ふなり 〈訳〉子孫をいさせまいと思うのだ
 〈例〉あに人臣の礼たらんや 〈訳〉どうして臣下の礼であろうか

 断定の助動詞「なり」は、格助詞「に」とラ変動詞「あり」が融合して生じた助動詞です。なので、元々の意味である「存在」(~にある)を表すこともあるので知っておいてください。一方、断定の助動詞「たり」は、格助詞「と」とラ変動詞「あり」が融合してできた助動詞です。
 こうした成立の経緯から、それぞれ連用形に「に」「と」という形が存在します。

 この「に」と「と」は、「にあり」「とあり」という、そのままの形式で出ることも希にありますが、重要なのは「に」に関する次の出現パターンです。これは入試の識別問題でもしばしば問われていますから、必ず押さえてください。

 「に」+係助詞+「あり」    〈例〉恨みを負ふつもりやありけむ
 「に」+係助詞+「あり」の省略 〈例〉井手のわたりやと見えたり
 「に」+「あり」の敬語     〈例〉さまよき人おはす

 これは、「に・あり」が、間に係助詞が入って融合できない形、あるいは「あり」が敬語化して融合できなかった形で、こうした「に」を「断定なりの連用形」と判断します。
 なお、「なり」は「断定」と「伝聞推定」、「たり」は「断定」と「完了」という同音異義語がありますが、それぞれ出自が異なるので、まったく違う語です。「たり」の識別は難しくなく、「断定」は名詞にしか接続せず、「完了」は活用語の連用形接続で、一目瞭然です。問題は「なり」の識別です。名詞に接続した「なり」はもちろん「断定」ですが、活用語に接続した「なり」は、「伝聞推定」が終止形接続、「断定」が連体形接続、という点で見分けていきます。

〈例〉男もすなる日記といふものを女もしてみむとてするなり

 これは『土佐日記』の書き出しの文ですが、「すなる」は「伝聞推定」、「するなり」が断定です。この一文を覚えておけば、「なり」の識別が楽になります。ただし、最初に提示した「思ふなり」のように、終止形と連体形が同じ形の四段活用や上一・下一段活用、どちらも連体形に接続してしまうラ変などに接続した場合は、文脈から判断するしかありません。その場合、「聴覚根拠→伝聞推定」ということをヒントにすると、少し楽になります。

8 比況「ごとし」
 ①比況[~のようだ、~のとおりだ]
 〈例〉夜行くがごとし 〈訳〉夜に行くようだ
 〈例〉本意のごとくあひにけり 〈訳〉望み通りに結婚したのだった

 「比況」とは、あるものを他に比べてたとえることで、ほぼ現代語の「ようだ」に当たります。用言に接続するときには「~が・ごとし」、体言に接続するときには「~の・ごとし」とするのが原則ですが、格助詞「が」「の」が脱落することもあります。

9 打消「ず」
 ①打消[~ない]
 〈例〉所定めまどひ歩き、 〈訳〉行く先を決めないでふらふらとさまよい、 
 〈例〉つゆ違はざらん 〈訳〉少しも違わないだろう

 打消「ず」は、現代でも使う助動詞なので(「会わずに出かけた」など)、対応は難しくないと思いますが、未然形「ず」は「~ずは(~ないならば)」の形で出ること、連用形「ず」がかなり用いられること(例文も連用形です)、連用形「ず」と「あり」が融合した「ザリ活用」があり、この活用パターンは主として助動詞に接続する形であることを知っておいてください。また、連体形「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」との識別問題としてしばしばとりあげられます。
 念のため、活用表を再掲しておきましょう。

 これで助動詞はだいたい網羅しました。接続・活用・意味で整理し、何回か暗唱してみてください。また、できればカードなどにまとめておくと、短期間で頭に入ると思います。あとは実際の文章で練習を積んでいくと、瞬時に判断できるようになると思います。

練習1 次の助動詞の意味を記せ。
 ①ありたき事は、まことしき文の道   (      )
 ②いかまほしく思ふ          (      )
 ③ほととぎすも忍ばぬやあらむ    (      )
 ④きのふのごとし           (      )
 ⑤あるじせ所            (      )


 さて、ここからは、助動詞で間違いやすい事柄等について解説していきます。
 助動詞は原則的に用言に付随して(例外は断定「なり」「たり」)、多くの場合、述語部に出現します。そのことを踏まえ、助動詞の判別で重要になるのが、「どこまでが用言か」を見切ることが第一、そして「まぎらわしい助動詞の出現パターン」を把握していることが第二となります。以下、助動詞ごとに見ていくことにしましょう。


1 「る」

 活用表のうち、①未然形・連用形「れ」、②連体形・已然形の「るる」「るれ」のパターンを見てみましょう。

 ①「れ」
  a あひみてののちの心にくらぶ
  b つゆまどろま
  c 天離る鄙にも月は照れども

 a‥動詞・ラ行下二段活用・已然形・活用語尾  b‥助動詞「る」(受身)・未然形
 c‥助動詞「り」(存続)・已然形

 aについては、「用言がどこまでか」という手順から動詞の一部ということがわかるでしょう。bは「まどろま(終止形・まどろむ)」までが動詞、「れ」は未然形に接続しているので、助動詞「る」・未然形です。cは「照れ(終止形・照る)」までが動詞、エ段(「ter」)に接続しているから、助動詞「り」・已然形と判断します。

 ②「るる」
  a 人の魂はげにあくがるるものになむありける。
  b 今日は都のみぞ思ひやらるる
  c 舅にほめらるる婿

 a‥動詞・ラ行下二段活用・連体形・活用語尾  b 助動詞「る」(自発)・連体形
 c‥助動詞「らる」(受身)・連体形の一部

 aは、動詞を見極めればわかるでしょう。bは「思ひやら(終止形・思ひやる)」までが動詞。ここの見極めが重要です。「るる」は、未然形接続から助動詞「る」・連体形と判断できます。cは逆に「ほめ(終止形・ほむ)」までが動詞なので、「らるる」で一語。助動詞「らる」の連体形です。
 同様のパターンは「るれ」にも見られますので、注意しておきましょう。

※助動詞「る」は四段・ナ変・ラ変の未然形に接続し、助動詞「らる」はその他の動詞の未然形に接続する、ということですが、実は、四段・ナ変・ラ変の未然形の活用語尾はすべて「ア段」であり、その他の動詞の未然形活用語尾は「ア段」ではない、と整理することもできます。つまり、尊敬・受身・可能・自発の助動詞「る」はア段に接続し、そうでない動詞には、ア段の「ら」を挟んで「る」が接続している、とも考えられるでしょう。似た現象は、「す」「さす」の間にも見られます。
 〈例〉咲く→咲か・る  受く→受け・[ら+る]
    咲く→咲か・す  受く→受け・[さ+す]

 

2 「す」

 ここでは未然形・連用形の「せ」について見ておきます。

 a よろこびながら加持さするに
 b 君ならで誰にか見む梅の花
 c 后、春宮帰ら給ひぬれば
 d 夢と知りば覚めざらましを

 a 動詞・サ行変格活用・未然形・活用語尾
 b 動詞・サ行下二段活用・未然形・ 活用語尾
 c 助動詞「す」(尊敬)・連用形  d 助動詞「き」(過去)・未然形

 aについて、サ行変格活用の動詞は「す」「おはす」ですが、「名詞+す」もサ変動詞になります。「加持す」はサ変動詞、「さする」は「さす」(使役)の連体形です。bは要注意。上一段動詞の「見る」に関連する動詞として、「見ゆ」(見える、の意、下二段)と「見す」(見せる、の意、下二段)があることを覚えておきましょう。cは、「帰ら」までが動詞、「せ」は未然接続で(あるいは、ア段に接続しているので)助動詞「す」連用形です。また、「せ給ふ」の形から「尊敬」と判断します。dは、念のため挙げておきました。過去の助動詞「き」の未然形は、基本的に「せば~まし」の形のみですが、異論もあるので、文法的に問われることはまずないと思われます。むしろ、「反実仮想」をしっかり押さえておきましょう。


3 「き」

 助動詞「き」は、カ行、サ行にまたがって活用するので要注意です。特に、用言や助動詞に接続している「し」「しか」には注意してください。

 a おなじ心ならん人としめやかに物語
 b 三笠の山に出で月かも
 c ある山里に尋ね入る事侍り
 d まつと聞かばいま帰りこむ

 a 動詞・サ行変格活用・連用形  b 助動詞「き」(過去)・連体形
 c 助動詞「き」(過去)・連体形  d 副助詞(強意)

 aは「物語す」というサ変動詞です。bのように用言や助動詞などの連用形に接続し、直後に名詞がくるパターンをしっかり覚えておいてください。ただし、cのように無音の形式名詞(「の」や「こと」など)が後に続く場合もあるので、これはこれで確認しておいてください。ちなみにcの口語訳は、「ある山里に分け入ったことがあったですが」となりす。dは、係助詞「ぞ」「なむ」などと同じように文に割り込んで強調する働きをする「副助詞」です。詳細は次回扱いますが、割り込んでいるので、省いても文は成立します(まつと聞かば)。これが見分けるポイントです。


4 「けり」

 「けり」の活用は、「ラ変型」と覚えておけば十分ですが、この活用表のうち、已然形「けれ」だけは注意してください。形容詞、形容詞型活用の助動詞の已然形に同じ形があります。

 a まどろむ夜なきこそをかしけれ
 b 烏のむれゐて池の蛙をとりけれ
 c ありて言葉多からぬこそ、飽かず向はまほしけれ

 a 形容詞・シク活用・已然形・活用語尾  b 助動詞「けり」(過去)・已然形
 c 助動詞「まほし」(願望)・已然形の一部

 aに関して、特に形容詞・シク活用の已然形はうっかりすると助動詞「けり」と間違えるので、どこまでが形容詞かしっかり見極めましょう。bは「とり」が動詞の連用形、なので「けれ」は助動詞と判断できます。cにも注意しましょう。形容詞型活用の助動詞「べし」「まじ」「まほし」「たし」の已然形も助動詞「けり」と勘違いしやすいので、ここで確認しておいてください。

 

 5 「つ」

 「つ」の識別のポイントは、何といっても未然形・連用形の「て」です。「む」(未然形)、「き」「けり」(連用形)という形でよく出ること、接続助詞「て」は、直後に読点を打つことが可能であることを目安としましょう。

 a 今宵ばかりは、ことわりと許したまひむな
 b 誓ひし人の命の惜しくもあるかな
 c さびしさに宿をたち出でながむれば

 a 助動詞「つ」(強意)・未然形  b 助動詞「つ」(完了)・連用形
 c 接続助詞

 aは「てむ」「なむ」「つべし」「ぬべし」とセットで押さえておく、「強意」の出現パターンです。bは「し」が助動詞「き」の連体形であることを見切れば「てき」のパターンであることがわかります。cは現代語と同じものです。「立ち出でて、ながむれば」と読点を打つことが可能です。


6 「ぬ」

 「ぬ」はナ変型で活用しますので、ナ変の「死ぬ」「往ぬ」には十分注意しましょう。①「な」、②「に」、③「ぬ」と、この三つはしばしば識別問題で出題されますから、確実に押さえてください。

 ①「な」‥「なむ」の識別が重要です。
  a 宮ものぞきたまひなむ
  b いまひとたびのみゆきまたなむ
  c 夜いたう更けてなむ事はてける
  d 帥殿今一度見奉りて死なむ
  e 玉の緒よ絶えば絶えね

 a 助動詞「ぬ」(強意)・未然形+助動詞「む」(推量)・終止形
 b 終助詞「なむ」(あつらえ)  c 係助詞「なむ」(強意)
 d 動詞・ナ行変格活用・未然形・活用語尾+助動詞「む」(意志)・終止形
 e 助動詞「ぬ」(完了)・未然形

 aは、「な+む」の構成で「きっと~だろう、きっと~しよう」の意味になります。連用形接続であることが見切りのポイント。b、cについては助詞の解説でくわしく扱いますが、bは「あつらえ」(他者に対する願望、~てほしい)の終助詞で未然形に付きます。これがaとの違いです。cは強意の係助詞で、文中に割り込みますから見分けやすいでしょう。ただし、「なむ」以下が省略されて、一見文末にあるように見える場合があるので注意してください。dはナ変をしっかり見切ることがポイント。eの「な」については、こういう形で出ることもあるという、補足です。

 ②「に」‥この識別もとても重要です。
  a 八重むぐらしげれる宿のさびしき人こそ見えね
  b 恋すてふわが名はまだきたちけり
  c わが身ひとつの秋はあらねど
  d かくてもあられけるよと、あはれ見るほどに

 a 接続助詞  b 助動詞「ぬ」(完了)・連用形
 c 助動詞「なり」(断定)・連用形  d 形容動詞・ナリ活用・連用形・活用語尾

 aについて、接続助詞「に」は連体形に接続する、直後に読点を打つことができる、という点が見切りのポイントです。助詞では他に格助詞「に」がありますが、これは現代語の「に」とほぼ同じなので問題はないでしょう。bの完了「ぬ」連用形は、「に・き」「に・けり」と、過去の助動詞と一緒に出てきますから、覚えておいてください。cについて、「に+係助詞+あり」の形で出てくる「に」は、断定の助動詞「なり」の連用形です。この係助詞には「ぞ・なむ・や・か・こそ・は・も」があります。これは後に詳述します。dは形容動詞・ナリ活用の連用形に、「~に」の形があることを確認しておきましょう。

 ③「ぬ」‥助動詞「ず」の連体形との識別です。
  a 人めも草もかれと思へば
  b ゆくへも知ら恋の道かな
  c あはれ今年の秋もいめり

 a 助動詞「ぬ」(完了)・終止形  b 助動詞「す」(打消)・連体形
 c 動詞・ナ行変格活用・終止形・活用語尾

 aは連用形接続で、「ぬ」の終止形なので「言い切り」になる。bは未然形接続で、「ず」の連体形なので直後に名詞が来る。ただし、無音の形式名詞(「の」や「こと」など)が来ることもあるので、頭に置いておいてください。cは「ナ変」をしっかり見切る、ということです。


7 「たり」

 「たり」の識別は比較的容易です。

 a 一ふしをかしく言ひかなへたり
 b 六代は、諸国の受領たりしかど
 c 漫々たる海上なれば

 a 助動詞「たり」(存続)・終止形  b 助動詞「たり」(断定)・連用形
 c 形容動詞・タリ活用・連体形・活用語尾

 aの「完了」の「たり」は活用語の連用形に付きます。bの「断定」の「たり」は名詞にしか付きません。したがってaとbの見分けは簡単です。cの形容動詞は漢語を語幹にするのが特徴です。

 

8 「り」

 「り」の識別は、何といっても「e+ら・り・る・れ → 完了の『り』」がポイント。「れ」の識別は1で記しましたので、「る」と「らむ」の識別を見ておきましょう。

 a 吉野の里に降れ白雪
 b 冬はいかなる所にも住ま 
 c 雲のいづこに月やどるらむ
 d 月日を隔てたまへらむほどを思しやるに

 a 助動詞「り」(存続)・連体形  b 助動詞「る」(可能)・終止形
 c 助動詞「らむ」(現在推量)・連体形
 d 助動詞「り」(存続)・未然形+助動詞「む」(婉曲)・連体形

 aは、「fur・る」なので、助動詞「り」。bは、「住ま」はマ行四段活用・未然形なので助動詞「る」。例文は『徒然草』から引用したもので、このころになると肯定文でも可能の「る」がかなり使われます。cは、「やどる」がラ行四段活用・終止形なので、現在推量の「らむ」。dは、「らむ」の前に注目してください。「たまへ」は終止形ではありませんね。「tamah・ら・む」と分析します。この「り」の未然形+「む」の形は、「存続」+「婉曲」となり、その後ろに名詞が来ます。訳は「~ているような」。ここで押さえておきましょう。


9 「なり」

 伝聞推定の「なり」の活用は上記の通りですが、「ラ変型」と押さえておけばいいでしょう。「断定」の「なり」は「形容動詞型」ですが、これは「ラ変型」の連用形に「に」が加わるだけなので、その点だけ注意すれば十分です。両者の見分けは接続で行います。

 a 恋ぞつもりて淵となりぬる
 b けしきいと苦しげなり
 c 沖辺の方に梶の音すなり
 d 人の程にあはねば、とがむるなり

 a 動詞・ラ行四段活用・連用形  b 形容動詞・ナリ活用・終止形・活用語尾
 c 助動詞「なり」(推定)・終止形  d 助動詞「なり」(断定)・終止形

 aの、動詞の「なる」はよく出てきます。しっかり用言を把握すれば問題ないでしょう。bも同様に、形容動詞の活用語尾で、用言が見えれば問題ありません。cは、サ変「す」が終止形なので「伝聞推定」。dは、「とがむる」が下二段の連体形なので「断定」です。なお、四段活用など、終止形と連体形が同じ形の動詞などでは、文脈から判断していきますが、聴覚に関する記述がある場合は「伝聞推定」、「断定」は名詞に接続する率が高い、「なるなり」「ななり」は「断定+伝聞推定」、といった知識があると、判別しやすくなるでしょう。

 さて、今回は量がかなり多くなった上、後半は実践的な内容となりました。例文等を参照しながら、繰り返し確認してください。入試ですぐに役に立つと思います。
 以下、練習2、復習問題、前回の補強問題の解答を掲載しておきます。

 頑張ろう、東高!

練習2 次の文の傍線部を文法的に説明せよ。
 ①物見する人にゆすりて笑は      (                )
 ②昔もひとたびふたたび通ひ道なり   (                )
 ③そを負ふ母もわを待つらむそ      (                )
 ④侍従の大納言の御女亡くなり給ひぬなり (                )
 ⑤心もあらでかくまかるに       (                )
 ⑥帰りなむとするときに         (                )
 ⑦心知れらむ人に見せばや        (                )


練習1・解答
 ①ありたき事は、まことしき文の道   ( 願望   )
 ②いかまほしく思ふ          ( 願望   )
 ③ほととぎすも忍ばぬやあらむ    ( 断定   )
 ④きのふのごとし           ( 比況   )
 ⑤あるじせ所            ( 打消   )

練習2・解答
 ①物見する人にゆすりて笑は      ( 助動詞・受身・終止形     )
 ②昔もひとたびふたたび通ひ道なり   ( 助動詞・過去・連体形     )
 ③そを負ふ母もわを待つらむそ      ( 助動詞・現在推量・終止形   )
 ④侍従の大納言の御女亡くなり給ひぬなり ( 助動詞・伝聞・終止形     )
 ⑤心もあらでかくまかるに       ( 助動詞・断定・連用形     )
 ⑥帰りなむとするときに         ( 助動詞・強意・未然形
                       +助動詞・意志・終止形    )
 ⑦心知れらむ人に見せばや        ( 助動詞・存続・未然形
                       +助動詞・婉曲・連体形    )


復習問題4 次の本文を読んで、以下の問いに答えよ。

 大蔵卿ばかり耳とき人はなし。まことに、蚊のまつげの落つ①をも聞きつけたまひ②べうこそあり④しか
 職の御曹司の西面に住み⑤ころ、大殿の新中将、⑥宿直にて、ものなどいひしに、そばにある人の、「この中将に扇のこといへ」と、ささめけば、「いま、かの君の立ちたまひ⑦なんにを」と、いと⑧みそかにいひ入るるを、その人だに⑨え聞きつけで、「なにとか、なにとか」と、耳をかたぶけ来るに、遠くゐて、「にくし。⑩さのたまはば、今日はたた⑪」と、⑫のたまひしこそ、いかで聞きつけたまふ⑬らんと、⑭あさましかりしか。

[注] ③「べう」は「べく」のウ音便
    本文中の「ん」の表記は、「む」と書き換えることが可能である。

問一 傍線部①、②、③、④、⑤、⑦、⑪、⑬が一語の助動詞であるならば、その意味を  次の選択肢より選んで記せ。また、二語の助動詞ならば○を、助動詞でない場合は×  を、それぞれ解答欄に記せ。

  選択肢
   ア 断定  イ 強意  ウ 過去  エ 打消意志  オ 打消推量
   カ 尊敬  キ 完了  ク 存続  ケ 過去推量  コ 現在推量
   サ 意志  ス 推量

問二 傍線部⑥の読みを記せ。

問三 傍線部⑧、⑫、⑭の意味を記せ。

問四 傍線部⑨を現代語訳せよ。

問五 傍線部⑩「さ」の内容として適当な部分の最初の五文字を本文から抜き出せ。

補強問題3A(助動詞の接続)・解答

1 次の傍線部の語の活用形をそれぞれ記せ。

 ①若かりけるとき、        ( 連用形 )

 ②さやうの人の祭りしさま、   ( 連用形 )

 ③潮満ちぬ。                           ( 連用形 )

 ④送りにつる人々、       ( 連用形 )

 ⑤これに過ぎたる水練、      ( 連用形 )

 ⑥一夜の夢の心地こそめ。    ( 未然形 )

 ⑦今もかも咲き匂ふらむ、     ( 終止形 )

 ⑧帰りてまたけむかも。     ( 連用形 )

 ⑨この一矢にて定むべしと思へ。  ( 終止形 )

 ⑩かぐや姫を迎へにまうでなり。 ( 終止形 )


補強問題3B(助動詞の活用)

1 次の(  )内の助動詞を適当な形に改めよ。

 ①このわたりに見知れ(り)僧なり。 ( る   )

 ②行かずなり(ぬ)けり。      ( に   )

 ③雪とのみこそ花は散る(らむ)。  ( らめ  )←已然形に

 ④その難をのがる(べし)ず。    ( べから )

 ⑤乗りたまふ(まじ)御さまなれば、 ( まじき )

 ⑥龍を捕らへたら(まし)ば、    ( ましか )

 ⑦生年十七にぞなら(る)ける。   ( れ   )

 ⑧何にかなら(す)たまひたる。   ( せ   )

 ⑨あり(たし)事は、        ( たき  )

 ⑩行か(まほし)思ふに、      ( まほしく)

 

古典文法講座第九回.pdf

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学校が再開しました

6月1日、ようやく学校再開です。

時差通学、分散登校ではありますが、まずは一歩を踏み出すことができました。

本日は、出席番号が奇数の生徒が登校しています。

1年生はオリエンテーション、2・3年生はLHRです。

明日は、出席番号偶数の生徒が登校予定。

一堂に会するのはまだ先になりますが、

あせらず、あわてず、今できることを一つ一つ確実にやっていきましょう。

頑張ろう、東校!

【1年オリエンテーション ~扉・窓を開け、3密を避けて~ 】

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古典文法講座第八回

古典文法講座 第八回

 今回は「推量の助動詞」から入ります。このグループは一番数が多いので、覚えるのがちょっと大変かもしれませんが、やはりペアにして覚えていくとわかりやすいと思います。 まずはこのグループを、A「む」「じ」「けむ」「らむ」、と、B「べし」「まじ」「なり」「めり」「らし」「まし」の二つに分け、そのうえで二つずつペアにして押さえていきます。

5 推量 「む」「じ」「けむ」「らむ」「べし」「まじ」「なり」「めり」「らし」「まし」

 A「む」「じ」「けむ」「らむ」

  a1「む」(「むず」)
   ①意志[~しよう]  【主語=一人称】
   〈例〉いま帰りこ 〈訳〉すぐに帰って来よう
   ②適当[~のがよい] 【主語=二人称】
   〈例〉心にこそあら 〈訳〉思いのままにするがよい
   ③推量[~だろう]  【主語=三人称】
   〈例〉十ばかりにやあら 〈訳〉十歳ぐらいであろう
   ④婉曲・仮定[~ような…・~としたらその…] 〈体言が下節〉
   〈例〉配所の月、罪なくて見事 〈訳〉配所の月を、罪なくして見るようなこと

  a2「じ」
   ①打消意志[~まい、~ないつもりだ]
   〈例〉寝殿に鳶ゐさせ 〈訳〉寝殿に鳶をとまらせまい
   ②打消推量[~まい、~ないだろう]
   〈例〉よものがれさせたまは 〈訳〉まさかお逃げにはなれますまい

 推量の助動詞「む」の意味は多岐にわたりますが、比較的見分けはしやすいでしょう。「む」を含む述語部の主語が一人称なら①「意志」、二人称なら②「適当」、三人称なら③「推量」、というのが原則です。ただし、あくまで原則ですから、必ず文脈は参照してください。こうした「む」の性格は、英語のwillとよく似ています。
 なお、②「適当」は例文にもあるように、「こそ~め」の形をとることが多い、というのもひとつの目安になります。また、①「意志」は、「~たい」と、願望風に訳した方がしっくりくる場合がありますので、一応知っておいてください。
 ④「婉曲・仮定」は、「む」の下に体言(名詞)が来る、という形式から判断できるのですぐにわかります。「仮定」はあまり出てきませんので、当面「婉曲」中心で考えておけばいいと思います。
 「婉曲」は訳出しない方が文意が通りやすい場合には訳出しません。
 〈例〉これが成らさまを見む 〈訳〉これが成長する様子を見よう
 また、「む」の直後に無音の形式体言(の/こと)が隠れている場合は「婉曲」で訳します。
 〈例〉本性見えこそ、口をしかるべけれ 〈訳〉本性が見えるようなことは残念だ

 a2「じ」は、「む」の打消です。ただし意味は二つで、原則、主語が一人称なら①打消意志、三人称なら②打消推量、とするのも「む」と共通しています。ちなみに「じ」は、「~まい」と訳すと、打消意志でも打消推量でも通用するので便利です。

※「む」の中心的な機能は、「想起」です。つまり、「あたまに思い浮かべている」という状態を表すのです。一方、一見似ている助動詞に「べし」がありますが、この中心機能は「確信」です。「当然そうだ」という確信を表すのが「べし」なのです。そのニュアンスを少し強調したのが次の例です。
 〈例〉われも行かむ。  〈訳〉わたしも行こうかなぁ。
 〈例〉われも行くべし。 〈訳〉わたしもぜったい行く。
つまり、「む」はぼんやりしているのに対し、「べし」はきっぱりしている、といえるかもしれません。この「ぼんやり」感がクッションとして働くのが「婉曲」用法です。
 〈例〉かけとむ方なきぞかなしき。 〈訳〉引き留める方法がないのが悲しい。
 〈例〉かけとめ方なきぞかなしき。 〈訳〉引き留めるような方法がないのが悲しい。
例のように、用言と体言をダイレクトに結びつけるのではなく、「やわらかく」結びつける「婉曲」用法は、「む」の中心機能に依っています。もちろん、こうした用法は「べし」にはありません。

  b1「けむ」
   ①過去推量[~ただろう]
   〈例〉さしもあらざりけむ 〈訳〉そんなことはなかっただろう
   ②過去の原因推量[~たのだろう]
   〈例〉いかなる故(ゆゑ)か侍りけん  〈訳〉どのような理由がございましたのでしょう
   ③過去の婉曲・伝聞[~たような、~たとかいう]
   〈例〉関吹き越ゆると言ひけむ浦風 〈訳〉関を越えて吹くといったとかいう浦風

  b2「らむ」
   ①現在推量[~ているだろう]
   〈例〉いかに罪や得らむ 〈訳〉どんなに罪を得ているだろう
   ②現在の原因推量[~ているのだろう]
   〈例〉むべ山風(やまかぜ)を嵐(あらし)といふらむ 〈訳〉それで山風を嵐と言っているのだろう
   ③婉曲・伝聞[~ような、~とかいう]
   〈例〉蓬莱といふらむ山 〈訳〉蓬莱というような

 b1「けむ」は、過去の助動詞「き」に推量の助動詞「む」が融合してできた助動詞なので「過去推量」となります。①「過去推量」と②「過去の原因推量」は区別のつきにくい事例もありますが、理由を述べる語句・または疑問詞が前にある場合、「原因推量」と考えるといいでしょう。また、体言が下接した時には、「む」と同じく婉曲用法となりますが、「人から伝え聞いた」というニュアンスになります。
 b2「らむ」は、ラ変動詞「あり」に推量の助動詞「む」が融合し、頭母音「あ」が脱落してできた助動詞で、「現在推量」です。これも①「現在推量」と②「現在の原因推量」が見分けにくいのですが、同じく理由を述べる語句・または疑問詞が前にある場合、「原因推量」と考えてください。「らむ」にも婉曲用法がありますが、やはり「人から伝え聞いた」というニュアンスが出てきます。
 「けむ」「らむ」については、まずは「過去推量」「現在推量」と判断できる事が大切です。それ以外のところは、実際の古文に当たりつつ、習得していけばいいでしょう。

※「む」「けむ」「らむ」は、「む」の兄弟といってもいい助動詞群ですが、注意しておかなければならないのは、すべて、接続する活用形が違う、という点です。
 「む」-未然形接続 「けむ」-連用形接続 「らむ」-終止形接続
こうなる理由ですが、「む」は単なる「想起」なので「動作は未実現」ですから未然形に接続します。「けむ」は「過去」すなわち既実現の「想起」なので連用形接続、「らむ」は「現在進行」への「想起」なので終止形接続になるのです。やはり各活用形の性格に応じた接続になっているようです。


 B「べし」「まじ」「なり」「めり」「らし」「まし」

  c1「べし」
   ①意志[(きっと)~しよう]  【主語=一人称】
   〈例〉この一矢にて定むべし 〈訳〉この一矢で決めよう
   ②適当[~のがよい]   【主語=二人称】
   〈例〉人にまさらんと思ふべし 〈訳〉人に優ろうと思うのがよい
   ③命令[~せよ]   【主語=二人称】
   〈例〉皆かくのごとく参るべし 〈訳〉皆、このように参れ
   ④推量[~にちがいない]  【主語=三人称】
   〈例〉この子の後見なるべし 〈訳〉この子の後見人であるにちがいない
   ⑤当然[~はずだ、~べきだ]  【主語=三人称】
   〈例〉今日は事忌みすべき日 〈訳〉今日は忌み慎むべき
   ⑥可能[~できる]
   〈例〉頭さし出づべくもあらず 〈訳〉頭をさしだすこともでき

  c2「まじ」
   ①打消意志[~まい、~ないつもりだ]  【主語=一人称】
   〈例〉ただ今は見るまじ 〈訳〉今すぐは見るまい
   ②禁止[~てはいけない]   【主語=二人称】
   〈例〉人にも漏らさせたまふまじ 〈訳〉誰にもお漏らしになってはいけません
   ③打消推量[~まい、~ないだろう]  【主語=三人称】
   〈例〉その人ならば苦しかるまじ 〈訳〉その人なら不都合ではあるまい
   ④打消当然[~べきでない]   【主語=三人称】
   〈例〉あふまじき人 〈訳〉会うべきでない
   ⑤不可能[~できない]
   〈例〉内裏にのがるまじかりけり 〈訳〉宮中に避けられない事情があったなあ

 「べし」は、現代語でも「べきだ」という形で残っているので、感覚的には捉えやすいと思います。推量の助動詞「む」が「想起」であるのに対して、推量の助動詞「べし」は「確信」、つまり「それは当然だ」という判断を加える助動詞です。「む」を強めたのが「べし」だ、という説明も見かけますが、それは「想起」と「確信」の違いといっていいでしょう。
 ところで、古典文法で「べし」を扱うとなると、難易度が上がるようです。それはなぜでしょうか。
 まず「べし」は助動詞の中でもっとも多くの意味を持ちます。ここでは六つのカテゴリーに整理しましたが、さらに細かく分類することもあります。また、文中の「べし」が、多数の意味の中から一つに限定できないことも多いので、なかなかやっかいなのです。例えば、例文「人にまさらんと思ふべし」などは、「人に優ろうと思うのがよい」(適当)でとっていますが、「人に優ろうと思え」(命令)や「人に優ろうと思うべきである」(当然)ともとることができます。
 こういうことから、「べし」は混乱を招きやすい助動詞なのですが、ならばこそ、この助動詞は次のように整理しておくことをお勧めします。
 まず、「べし」の中心的機能は「確信」つまり「それは当然だ」という判断を加えることにありますから、六つの意味の中で中心になるのは⑤「当然」です。これと人称を関係させると、次のように考える事ができます。

 一人称 「わたしが~するのは当然だ」→「意志」(きっと~しよう)
 二人称 「あなたが~するのは当然だ」→「適当」(~のがよい)【弱】
                   →「命令」(~せよ)【強】
 三人称 「それが~するのは当然だ」 →「推量」(~にちがいない)【弱】
                   →「当然」(~はずだ、~べきだ)【強】
 「当然~する」=「~の能力がある」 →「可能」(~できる)

 このように考えておくと、六つの意味が整理できるのではないでしょうか。ただし、これは原則であり、主語が一人称でも「推量」や「当然」でとる場合もありますし、先に書いたとおり、意味を一つに限定できない場合もあります。要は、「当然」(~はずだ、~べきだ)を中心に考え、文脈によって妥当な意味を選択していく、というスタンスでいいと思います。なお、「可能」は、「る」「らる」と同じく、否定文で頻出します。
 さて、「べし」はもっとも意味が多岐にわたる助動詞ですが、六つの意味が覚えにくいという声も耳にします。そんな場合は、「す・い・か・と・め・て」と覚えておくのも手です。坂を転がっていくスイカを「止めて~」と叫んでいるイメージですが、これは六つの意味の頭文字になっています。「推量・意志・可能・当然・命令・適当」、完全な語呂合わせです。

 c2「まじ」は「べし」の打消です。「べし」にある六つの意味のうち、二人称主語に対応する「適当」と「当然」がまとめられて「禁止」になっているため、意味は五つです。「べし」の意味を押さえておけば、その打消ですから、基本的には新たに覚え直すまでもないでしょう。ただ、訳出の仕方は見ておいてください。

  d1「めり」
   ①推定[~ようだ]
   〈例〉え行くまじかめり、この雨よ 〈訳〉行く事はできないようだ、この雨で
   ②婉曲[~ようだ]
   〈例〉今年の秋も往ぬめり 〈訳〉今年の秋も去りゆくようだ

  d2「なり」
   ①推定[~ようだ]
   〈例〉人まつ虫の声すなり 〈訳〉人を待つ、松虫の声がするようだ
   ②伝聞[~そうだ]
   〈例〉世(よ)をうぢ山と人はいふなり 〈訳〉世を厭う、宇治山と人は言うそうだ

 d1「めり」は、「見」と「あり」が融合してできた助動詞です。したがって、視覚的根拠に基づく「推定」を表します。例で言うと、「雨」を根拠に「行けないようだ」と推定するのです。ちなみにこの「推定」は、文法書によっては「推量」とするものもあります。「婉曲」は、「推定」から派生して丁寧な表現を表すようになったもので、こちらでは根拠は示されません。

 d2「なり」は「音(ね)」と「あり」が融合してできた助動詞で、聴覚的根拠に基づく「推定」を表します。例で言うと「声」から「松虫」を「推定」しています。この音を根拠とした「推定」から、「人から伝え聞いた」という意味の「伝聞」が派生します。
 なお、助動詞「なり」には、「断定」と「伝聞推定」の二種類がありますが、「断定」は体言及び連体形接続、「伝聞推定」は終止形接続(ラ変は連体形接続)という違いから見分けていきます。ただし、四段活用は終止形と連体形が同じであり、また、ラ変ではどちらも連体形に接続するため、文脈から判断することになります。また、「なるなり」「なんなり」「ななり」と、「なり」が重複して出てくることがありますが、この場合は、上が「断定」、下が「伝聞推定」です。「なるめり」「なんめり」「なめり」という言い方があることを知っていれば、「めり」と同じポジションが「伝聞推定」だ、と判断する事ができます。
 上記「めり」「なり」は、それぞれ視覚的根拠、聴覚的根拠に基づく「推定」なので、やはりよく似た兄弟という感じです。併せて押さえておきましょう。

  e1「らし」
   ①推定[~らしい]
   〈例〉春過ぎて夏来たるらし 〈訳〉春が過ぎて夏が来たらしい

  e2「まし」
   ①反実仮想[ (~せば‥まし、~ましかば~まし、~ば‥ましの形で)
         もしも~なら‥なのになあ]
   〈例〉家に在らば母とり見まし 〈訳〉家にいたなら母が看病してくれるのに
   ②ためらい[ (疑問文で) ~しようかしら]
   〈例〉しやせまし、せずやあらまし 〈訳〉しようかしら、しないでいようかしら

 e1「らし」とe2「まし」は、残りもの二つでペアにしています。本来は別々に押さえる助動詞ですが、こうしておいた方が覚えやすいでしょう。
 「らし」は、現代語の「らしい」とまったく同じですが、この助動詞の特徴は「明確な根拠がある」ということです。例でいうと、この下の句は「白妙の衣ほしたり天の香具山」となりますが、「天の香具山に真っ白な衣を干している」から「夏が来たらしい」となるわけです。このように推定「らし」には根拠が示される、ということを覚えておいてください。

 e2「まし」は、①「反実仮想」を形成する助動詞としてとても重要です。これは「~せば、~ましかば、~ば」の箇所で事実に反することを想定し(「もしも~ならば」)、それに対して「‥まし」の箇所で非実現の空想をする(「‥なのになあ」)という構造をいいます。つまり、英語でいうと「仮定法過去」ですね。
 この反実仮想の前半部が脱落して「‥まし」単独で用いられることもありますが、「‥ならいいのに」と訳せばいいでしょう。
 ②は、「非実現の空想+疑問」という構造から「ためらい」を表し、「~かしら」と訳します。一応、知識として持っておきましょう。

 さて、Bグループの助動詞ですが、「べし」「まじ」「めり」「なり」「らし」は、すべて事実に対する「判断」を示す助動詞です。そのため、この五つは終止形に接続します。
 ただ、「まし」は「反実仮想」つまり非実現ですから、未然形に接続するのです。

 以上、ここまでが「推量の助動詞」といわれるものです。まず一〇個あることを押さえ、次にA、Bグループに分け、そして二つずつペアにして押さえていくと、随分理解しやすいのではないでしょうか。ここが押さえられれば助動詞はあと一息です。
 では、少し練習してみましょう。

練習1 次の傍線部の助動詞の意味を記せ。
 ①山ほととぎすいつか来鳴か    (        )
 ②心あら友もがな。        (        )
 ③子となりたまふべき人なめり。   (        )
 ④龍に乗らずは、渡るべからず。   (        )
 ⑤われは行か。          (        )
 ⑥子泣くらむ。           (        )
 ⑦いかにわびしきここちしけむ。   (        )
 ⑧男もすなる日記といふものを    (        )
 ⑨泣くめれど、涙落つとも見えず。  (        )
 ⑩み吉野の山の白雪積もるらし    (        )

練習2 次の古文を現代語訳せよ。
 ①(その骨は)扇のにはあらで、海月のななり。
  (                                )
 ②鏡に色形あらましかば映らざらまし。
  (                                )

 今回はここまでです。前回の復習問題の解答と補強問題を掲載しておきますので、練習してみてください。

 頑張ろう、東高!

練習1・解答
 ①山ほととぎすいつか来鳴か    ( 推量     )
 ②心あら友もがな。        ( 婉曲     )
 ③子となりたまふべき人なめり。   ( 当然     )
 ④龍に乗らずは、渡るべからず。   ( 可能     )
 ⑤われは行か。          ( 打消意志   )
 ⑥子泣くらむ。           ( 現在推量   )
 ⑦いかにわびしきここちしけむ。   ( 過去推量   )
 ⑧男もすなる日記といふものを    ( 伝聞     )
 ⑨泣くめれど、涙落つとも見えず。  ( 推定     )
 ⑩み吉野の山の白雪積もるらし    ( 推定     )

練習2・解答
 ①(その骨は)扇のにはあらで、海月のななり。
  ( (その骨は、)扇の(骨)ではなくて、海月の(骨)であるようだ   )
 ②鏡に色形あらましかば映らざらまし。
  ( もしも鏡に色や形があったならば、映らないだろうに         )

解説
 問一②④は、正確には「存続(~ている、てある)」です。選択肢などで「存続」がない場合は「完了の助動詞」と考えてください。⑧の活用形は已然形。已然形には「ば」「ど・ども」しか接続しません。後は「こそ」の結びですね。⑨は直前が「立て(tate)」となっていることから完了の「り」と判断します。ちなみに接続助詞「で」は「~ないで」と訳し、未然形接続です。⑩は「にけり」の形に着目し、「完了」の「ぬ」と判断します。この問題は、特に⑨、⑩をしっかり押さえてください。
 問二①「けり」=連用形接続。③は形容詞ク活用です。「カリ活用」の方ですね。⑤は「起き・ず」となるので上一段、「たり」は連用形接続。⑥は動詞です(=become)。助動詞と勘違いしないように。「らむ」は終止形接続です。⑦「いひ入れ・ず」となり下二段活用、「む」は未然形接続でした。


補強問題3A(助動詞の接続)

1 次の傍線部の語の活用形をそれぞれ記せ。

 ①若かりけるとき、        (     )

 ②さやうの人の祭りしさま、        (     )

 ③潮満ちぬ。                           (     )

 ④送りにつる人々、                  (     )

 ⑤これに過ぎたる水練、               (     )

 ⑥一夜の夢の心地こそめ。          (     )

 ⑦今もかも咲き匂ふらむ、             (     )

 ⑧帰りてまたけむかも。             (     )

 ⑨この一矢にて定むべしと思へ。     (     )

 ⑩かぐや姫を迎へにまうでなり。    (     )


補強問題3B(助動詞の活用)

1 次の(  )内の助動詞を適当な形に改めよ。

 ①このわたりに見知れ(り)僧なり。  (     )

 ②行かずなり(ぬ)けり。               (     )

 ③雪とのみこそ花は散る(らむ)。      (     )←已然形に

 ④その難をのがる(べし)ず。          (     )

 ⑤乗りたまふ(まじ)御さまなれば、  (     )

 ⑥龍を捕らへたら(まし)ば、          (     )

 ⑦生年十七にぞなら(る)ける。       (     )

 ⑧何にかなら(す)たまひたる。       (     )

 ⑨あり(たし)事は、                    (     )

 ⑩行か(まほし)思ふに、               (     )

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古典文法講座第七回

古典文法講座 第七回

 今回から、「助動詞の意味」を扱っていきます。
 以前にも記しましたが、助動詞は主として用言に意味を付加する働きをします。どのような意味を付加するかで助動詞をグループ化すると、次のようになります。

1 受身 「る」「らる」
2 使役 「す」「さす」「しむ」
3 過去 「き」「けり」
4 完了 「つ」「ぬ」「たり」「り」
5 推量 「む」「じ」「けむ」「らむ」「べし」「まじ」「なり」「めり」「らし」「まし」
6 願望 「まほし」「たし」
7 断定 「なり」「たり」
8 比況 「ごとし」
9 打消 「ず」

 助動詞は複数の意味を持つものが多いのですが、まずは、上記の九種類の「意味」の系統を押さえてください。次にそこに所属する助動詞を覚えます。その上で、各グループごとに理解していきます。また、共通する要素のある助動詞は、ペアにして押さえていくと効率的です。

1 受身 「る」「らる」
 ①受身[~れる、~られる]
   〈例〉姑に思はるる嫁の君 〈訳〉姑に大切にされる
 ②尊敬[~なさる、~れる、~られる]
   〈例〉大井川の水をまかせられんとて 〈訳〉大井川の水を引きなさろうとして
 ③可能[~できる、~れる、~られる]
   〈例〉つゆまどろまず 〈訳〉すこしもまどろむことができない
 ④自発[(自然と)~される]
   〈例〉風の音にぞ驚かぬる 〈訳〉風の音ではっと気づかされたことよ

 「る」「らる」は、現代語の「れる」「られる」とほぼ同じと考えていいでしょう。
 四つの意味の識別は、基本的には文脈から考えますが、ちょっとしたコツがあります。③「可能」は、その多くが打消を伴って不可能(~できない)の形で出てきます。また④「自発」は心情を表す動作(思ふ、泣く、驚く、など)で多く現れます。これ以外は、主語が動作の主体となっている文なら②「尊敬」、主語が動作の客体(何かされる側)であれば①「受身」、ということを基準に見分けるといいでしょう。

2 使役 「す」「さす」「しむ」
 ①使役[~せる、~させる]
   〈例〉寝殿に鳶ゐさせじ 〈訳〉寝殿に鳶をとまらまい
 ②尊敬[(せ給ふ、させ給ふ、しめ給ふ、の形で)~なさる、お~なる]
   〈例〉悲しま給ひて 〈訳〉悲しみになっ

 「す」「さす」も現代語の「せる」「させる」とほぼ同じ、「しむ」は漢文で習う「使」と同じと考えていいでしょう。
 ①の「使役」は、特に問題はないでしょう。②の「尊敬」は、「せ給ふ」「させ給ふ」「しめ給ふ」など、基本的に「給ふ」とともに用いられる、と考えてください。そしてこの形は「最高敬語」を表します。皇族など、きわめて身分の高い人に敬意を表す形です。「す」「さす」「しむ」が単独で「尊敬」を表すことはありません。
 参考までに、「のたまふ(おっしゃる)」という尊敬語に「す」が付いて、「のたまはす」という最高敬語が生じますが、これは一語(動詞)扱いです。

【古典文法の蘊蓄】
 受身「る」「らる」、使役「す」「さす」「しむ」は、他の助動詞とは違い、とても強力な機能を持っています。それは、①動詞に必ず直結する、②未然形~命令形のすべてを持つ、③動詞の主語が変更される、ということです。①と②から、まるで動詞と一体となっているように見えますし、そして③は他の助動詞では見られない現象です。例えば、
  竹取、泣き伏す
という文に他の助動詞を加えても、意味が加わるだけなので、主語は変化しません。
 〈例〉竹取、泣き伏さむ  竹取、泣き伏しけり  竹取、泣き伏すべし
しかし、「る」「らる」「す」「さす」「しむ」では、
  嫗、姫を養ふ→「養ふ+る」→×嫗、姫を養はる ○姫、嫗に養はる
  嫗、姫を養ふ→「養ふ+す」→×嫗、姫を養はす ○翁、嫗に姫を養はす
というように、意味を添えるのではなく、文の構造を変えてしまうため、主語が変わってしまうのです。そういう意味では、これらの助動詞は、とても動詞に近い、と考えられるかもしれません。考えてみれば、英語の受動態や使役形も「be動詞」や「have」などを使います。言語を越えて、共通のものがあるのかもしれません。

練習1 次の傍線部の助動詞の終止形を記し、次に意味を記せ。
 ①問ひつめられて、           (      ・      )
 ②つゆまどろまず。          (      ・      )
 ④口惜しと嘆かたまふ。        (      ・      )
 ③よろこびながら加持せさするに、    (      ・      )

3 過去 「き」「けり」
 a「き」
  ①過去(経験過去)[~た]
   〈例〉にはかに都遷(うつ)り侍(はべ)り 〈訳〉急に都が遷りまし

 b「けり」
  ①過去(伝聞過去)[~た、~たそうだ]
   〈例〉あやまりにてなほされけり 〈訳〉間違ったということでお直しになっ
  ②詠嘆[~だなぁ]
   〈例〉憂きに耐へぬは涙なりけり 〈訳〉辛さに耐えられないのは涙なのだなぁ

 a「き」は自分で経験した過去を表します。また、過去の確実な事実にも使われます。
 「き」は、「せ・○・き・し・しか・○」と、特殊な活用をするので注意が必要です。未然形は「~せば…まし」の反実仮想(英語で言うところの「仮定法過去」、後に詳述)の形でのみ出現、連体形「し」、已然形「しか」には気をつけておきましょう。例を挙げておきます。
 〈例〉憂しと見世ぞ今は恋しき 〈訳〉辛いと思っ世の中が今は恋しい
 〈例〉ゆかしかりしかど 〈訳〉知りたかっけれど

 b「けり」は「来(き)・あり」が融合して生まれた助動詞で、何らかの思いやシーンが「やって来ている」ということを表します。従って、聞いた話を思い出したり(①「伝聞過去」)、はっと何かに気づいたり(②「詠嘆」)したときに使われます。ちなみに、「この本は千円だっけ?」の「け」は、現代語に残った「けり」です。
 「けり」は、地の文では①「過去」の用法が多く、和歌・会話文・心中思惟(心の中で思うこと)では②「詠嘆」が多くなります。

4 完了 「つ」「ぬ」「たり」「り」
 a「つ」「ぬ」
  ①完了[~てしまう、~た]
   〈例〉雀の子を犬(いぬ)君(き)が逃がしつる 〈訳〉雀の子を犬君が逃がしてしまった
   〈例〉八十島かけてこぎ出で 〈訳〉多くの島々を目指して船出し

※完了「つ」「ぬ」+過去「き」「けり」の形である「てき」「てけり」「にき」「にけり」は頻出するので注意。訳は「~てしまった、~た」。
   〈例〉泣く泣く帰りけり 〈訳〉泣く泣く帰ってしまった
   〈例〉誓(ちか)ひし人の命の惜(を)しくもあるかな 〈訳〉誓っ人の命が惜しいことよ

  ②強意[ (てむ、なむ、つべし、ぬべし、の形で) きっと~]
   〈例〉盗みもしつべきことなり 〈訳〉盗みもきっとするにちがいないことである
   〈例〉あひ見るほどありなむ 〈訳〉再会する時がきっとあるだろう

 ①完了ですが、「つ」と「ぬ」は、実は微妙にニュアンスが異なります。それはこれらの助動詞の出自の違いに寄ります。
 これは以前にも記しましたが、「つ」は「棄(う)つ」(捨てる、の意)という下二段動詞の頭母音「う」が脱落して生じた助動詞です。例えば「追ひうつ→追ひつ」というようなイメージです。なので、助動詞「つ」は、「人が何かを捨ててしまう」→「人がある動作を終わらせてしまう」というニュアンスを持ちます。一方で、「ぬ」は「往(い)ぬ」(行ってしまう、いなくなる、の意)というナ変動詞の頭母音「い」が脱落してできた助動詞です。例えば「走りいぬ→走りぬ」というようなイメージです。そのため、助動詞「ぬ」は、「何かがいなくなってしまう→自然とある動作が終わってしまう」というニュアンスになります。
 これを要約すると、助動詞「つ」は、人が動作を意図的に終了する「人為完了」、助動詞「ぬ」は、自然に動作が完了する「自然完了」ということになります。これを英語で例示するなら、
 He has finished his homwork. → has = つ
 Spring has come.          → has = ぬ
ということになるでしょう。実際、古文ではそのような使われ方がされていますから、確認してみてください。
 なお、「完了」の口語訳ですが、基本的に「~た」と口語訳する方が多くなります。「完了」を強く打ち出したいときに「~てしまう、~てしまった」と訳出します。
 実は、現代語の助動詞「た」ですが、これは「過去」だけを表す助動詞ではありません。「完了」「存続」も表します。これは蘊蓄レベルの話なので、今回の最後に記します。

 ②の「強意」は、原則として「推量」の助動詞「む」「べし」が後接したとき、それを強調する働きを指します。口語訳として「きっと~」としておきましたが、口語訳が難しい場合もあり、また、「~てしまうだろう」「~てしまうにちがいない」と口語訳することもかなりあります。「強意」だということがわかっていれば問題はありません。要は、「動詞+つ・ぬ+む・べし」の構成の句が、「動作は・完結する(きっとそうなる)・と推量される」というように理解できていれば、それで十分です。

 b「たり」「り」
  ①存続[~ている、~ていた]
   〈例〉女は思ひたれば 〈訳〉女は思っていたので
   〈例〉八重(やへ)むぐらしげれ宿(やど) 〈訳〉ひどく雑草が茂っている

  ②完了[~た]
   〈例〉京にて生まれたりし女(をむな)子(ご) 〈訳〉京で生まれ女の子
   〈例〉よろづの言の葉とぞなれける 〈訳〉あらゆる言葉となっのだよ

 bの「たり」と「り」ですが、「り」の方が先に生まれました。以前にも説明したとおり、四段活用連用形+ラ変動詞「あり」、サ変動詞連用形+ラ変動詞「あり」から生まれのが助動詞「り」で、こういう経緯から、「り」が接続するのは四段とラ変の「e」音だと理解しておくと見分けやすいでしょう(咲け・り=sak・ri、せ・り=s・ri)。
 助動詞「り」は、四段とラ変にしか接続しないため、少々使い勝手が悪かったようです(とはいっても、中古分ではかなりの数、見かけますが)。そこで生まれたのが「たり」です。これは接続助詞「て」にラ変動詞「あり」が融合してできました(te・ari→tari)。「たり」はすべての動詞に接続しますから、古文では頻出します。
 さて、意味ですが、「完了の助動詞」とされる「り」も「たり」も、意味は基本的に「存続」でとります。「~ている(た)、~てある(た)」と訳しますが、この訳が文意としてしっくりこないときに、②「完了」でとり、「~た」と訳してください(例文を参照)。
 ただし、「り」「たり」とも、「完了の助動詞」という概念で括られているので、入試問題などで意味を問うとき、選択肢に「存続」がなく、「完了」だけがある、ということもよくあります。これは「存続(~ている)も完了(~た)も、ひっくるめて、『完了』」という考え方だと理解して対応してください。
 最後に、「り」は一文字助動詞の上、「ら・り・り・る・れ・れ」と、未然形~命令形のすべての活用形が存在します。なので文中での見分けに苦労するかもしれませんが、用は「四段・サ変のe+ら・り・る・れ」が完了の助動詞「り」です。この原点を押さえておけば、十分に入試にも対応できます。

練習2 次の傍線部の助動詞の終止形を記し、次に意味を記せ。
 ①そのこと果てば、とく帰るべし。   (      ・      )
 ②大井川に流しけり。         (      ・      )
 ③死に子、顔よかりき。        (      ・      )
 ④昔、男ありけり。           (      ・      )
 ⑤いたう忍びたまへど、        (      ・      )


練習1・解答
 ①問ひつめられて、           ( らる   ・ 受身   )
 ②つゆまどろまず。          ( る    ・ 可能   )
 ④口惜しと嘆かたまふ。        ( す    ・ 尊敬   )
 ③よろこびながら加持せさするに、    ( さす   ・ 使役   )

練習2・解答
 ①そのこと果てば、とく帰るべし。   ( ぬ    ・ 完了   )
 ②大井川に流しけり。         ( つ    ・ 強意   )
 ③死に子、顔よかりき。        ( き    ・ 過去   )
 ④昔、男ありけり。           ( けり   ・ 過去   )
 ⑤いたう忍びたまへど、        ( り    ・ 存続   )


 今回はここまでにします。以下に、前回と今回の範囲の復習問題を掲載しておきますので、やってみてください。また、前回出題した補強問題の解答も掲載しておきます。参照してください。

 

頑張ろう、東高!


復習問題3 次の本文を読んで、以下の問いに答えよ。

 また、男、しのびてしれる人①ありけり。人しげきところなれば、夜も明けぬ先に、人の静まれ②をりにとて、帰りいでたるに、まだ暗きほどなれば、いかで帰らむと思へど、いと③かたかりければ、門の前に渡し④たる橋の上に立ちて、いひ入る。
  夜半にいでて渡りぞかぬる涙川淵とながれて深く見ゆれば
と、いひ入れたれば、女も寝でぞ⑤起きたりける。返し、
  さ夜中におくれてわぶる涙こそ君がわたりの淵と⑥なるらめ
男、いとあはれと思ひて、またもの⑦いひ入れむと思へど、大路に人などあり⑧ければ、立て⑨で、帰り⑩けり。

[話の概要]
 ある男がこっそり通っている女がいた。人に見られないよう、夜明け前に帰ろうと女の家を出るとまだ真っ暗で、帰るに帰れず、橋の上にたたずんで、女に歌を贈った。
  夜中にあなたの家を出たものの、渡りかねております、別離の涙の川が淵かと思われ るように流れて、とても深く見えますので
と、読んだところ、女も起きていて、その返歌、
  真夜中にあなたに去られて嘆く私の涙が、あなたが渡ろうとしている場所で淵となっ ているのでしょう
男は感動して、また歌をやろうと思ったが、大路に人の姿が見えたので、ぐずぐすしていないで、帰ったのだった。

問一 傍線部②、④、⑧、⑨、⑩の助動詞の終止形・活用形・意味を記せ。

問二 傍線部①、③、⑤、⑥、⑦の用言の、活用の種類と活用形を記せ。

補強問題2A(用言の判断) 解答

1 傍線部の語を文法的に説明せよ。

 ①本意のごとく会ひにけり。 ( 動詞・ハ行四段・連用形      )

 ②行く川の流れは絶えずして、 ( 動詞・ヤ行下二段・未然形     )

 ③母の命尽きたるを知らずして、 ( 動詞・カ行上二段・連用形     )

 ④ある人、弓射ることを習ふに、 ( 動詞・ヤ行上一段・連体形     )

 ⑤ひがごとん人をぞ、 ( 動詞・サ変・未然形        )

 ⑥死ぬることのみ、機嫌をはからず。( 動詞・ナ変・連体形        )

 ⑦とんで火に入る夏の虫。 ( 動詞・バ行四段・連用形・撥音便  )

 ⑧いと心にくからめ。 ( 形容詞・ク活用・未然形      )

 ⑨漫々たる海上なれば、     ( 形容動詞・タリ活用・連体形    )

 ⑩同じう死なば、 ( 形容詞・シク活用・連用形・ウ音便 )


補強問題2B(用言の活用) 解答

1 次の( )内の動詞を適当な形に改めよ。

 ① 心なしと(見ゆ)者にも、 ( 見ゆる          )

 ② (悔ゆ)ても遅ければ、 ( 悔い           )

 ③ 猛き者もつひには(滅ぶ)ぬ。 ( 滅び           )

 ④ 沖より(寄す)白波にも、 ( 寄する          )

 ⑤ 尊くこそ(おはす)けれ。 ( おはし          )

 ⑥ 先達は(あり)まほしきことなり。 ( あら           )

 ⑦ 聞きしにも(過ぐ)て、 ( 過ぎ           )

 ⑧ 山までは(見る)ず。 ( 見            )

 ⑨ うるはしき花こそ、(めでたし)。  ( めでたけれ        )

 ⑩ (ならびなし)べきことなり。 ( ならびなかる       )

 

古典文法講座 第七回.pdf

 

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古典文法講座第六回

古典文法講座 第六回

 今回から「助動詞」に入ります。ここが古典文法学習のひとつの山になります。
 助動詞は、主として活用語に接続し、意味を付加する付属語です(ただし、断定の助動詞「なり」「たり」は体言に接続します)。
 助動詞を学習するに当たっては、それぞれ、「接続」「活用パターン」「意味」を覚えることになるのですが、一つ一つ覚えていくのではとても大変です。そこで、次の手順で学習していきます。

 ①助動詞の接続を覚える
 ②助動詞の活用パターンを覚える
 ③助動詞の意味を覚える
 ④間違いやすいパターンを押さえる

 この上記①~③について、助動詞をグループ化して覚え、最後に④を確認して実践力を付けていきます。

 では最初に、「助動詞の接続」から見ていきましょう。
 助動詞はすべて、接続する活用形が決まっています。そしてほとんどの助動詞が、未然形、連用形、終止形のどれかに接続します(例外は後述)。以前に記した、各活用形の性格と、接続する助動詞一覧をまとめておきましょう。

1 助動詞の接続
 A 未然形‥動作の未完・未実現を表す
    接続する助動詞-る、らる、す、さす、しむ、む、じ、ず、まし、まほし

 B 連用形‥動作の既実現を表す
    接続する助動詞-き、けり、つ、ぬ、たり(完了)、けむ、たし

 C 終止形‥動作そのものを表す
    接続する助動詞-べし、まじ、らむ、らし、めり、なり(推定・伝聞)
    ※ラ変・ラ変型活用では、「連体形」に接続するので要注意!

 D 連体形‥助動詞が接続する場合、体言相当と考えられる
    接続する助動詞-ごとし、なり(断定)
    ※なり(断定)は体言にも接続、たり(断定)は体言にだけ接続

 E 特殊‥助動詞「り」はサ変=未然形接続、四段=已然形接続と考える
      (「サ未(ミ)四(シ)已(イ)」と覚えるとよい)

 以上です。当面、これだけしっかりと覚えておきましょう。
 なお、念のため、これについて説明をしておきますが、覚えるのは上記の一覧で十分でしょう。まずはDとEから補足しておきます。
 Dについて。
 「ごとし」は、「名詞+の+ごとし」「動詞・連体形+が+ごとし」の形が原則です。この「動詞・連体形+が+ごとし」の「が」が省略されることがあり、その場合、連体形接続となるのです。また、断定の助動詞「なり」は、格助詞「に」とラ変動詞「あり」が融合して生まれた助動詞なので(ni・ari→nari)、格助詞は名詞に付きますから、その性格を引き継いで、体言と体言相当である動詞の連体形に接続します。断定の助動詞「たり」も、格助詞「と」とラ変動詞「あり」が融合して生まれた助動詞で(to・ari→tari)体言に接続しますが、動詞には接続しません。

 Eについて。
 「り」は、接続の判定が困難な助動詞です。というのも、この助動詞は四段活用とサ変の連用形に、ラ変動詞「あり」が接続して生まれた助動詞だからです。例を見てみましょう。
  咲き・あり(saki・ari)→[i+a⇒e]→咲けり(sakeri)
  し・あり (si・ari)  →[i+a⇒e]→せり (seri) 
 この例で言うと「咲け」「せ」が動詞と判断されるので、残った「り」が助動詞となったわけですが、これは音韻変化で生まれた助動詞なので、そもそも何形接続と判断できないのです。なので便宜上、「サ変・未然、四段・已然」としています。こういう助動詞は「り」だけなので、ひとりぼっちで「サ未四已(さみしい)」、と覚えるのが古典的です。ただ、これより重要なのは、エ段に接続している「ら・り・る・れ」は完了の助動詞「り」だ、と見抜くことでしょう。

 さてA、B、Cについても補足しておきます。
 Aについて。
 未然形は未完・未実現を表します。
 未完であることから、動詞自体を補完する助動詞、受身の「る」「らる」、使役の「す」「さす」「しむ」が接続します。
 ちなみにこの「る」「らる」「す」「さす」「しむ」は、動詞にしか接続しません。つまり、直接に動詞を補う働きを持っているのです。なお、「る」「す」は四段・ナ変・サ変に接続し、「らる」「さす」は上一・下一・上二・下二・カ変・サ変に接続します。未然形の音を見てみると、なんとなくその理由がわかると思います。なお、「しむ」はすべての動詞に接続しますが、これは漢語由来(使)だからでしょう。
 また、未然形は未実現を表すことから、まだ実現されていないことを表す「む」(推量)、「じ」打消推量、「ず」(打消)、「まし」(反実仮想)、「まほし」(願望)が接続します。

 Bについて。
 連用形は動作の既実現(すでに実現している)を表しますから、過去「き」「けり」、完了「つ」「ぬ」「たり」、過去推量「けむ」といった助動詞が接続します。ただ、完了の「り」についてはEの解説で述べたとおりです。
 毛色の違うのが「たし」(願望)です。願望なのだから動作は実現していないのでは?というのは当然の疑問でしょう。実は、この語は、形容詞「いたし」が語源で、「~いたし(~がはなはだしい)」と言っていたものが、「~たし(~たい)」の形・意味になって生まれた助動詞なのです。ちなみに「たし」が用いられるのはだいたい鎌倉時代以降、新参者なので少し毛色が違っているのです。

 Cについて。
 終止形は、文末言い切りでも用いるので現在形と思われがちですが、むしろ時制を超越して動作・存在そのものを表現する、と考えられます。それゆえ、判断を付加する助動詞が接続します。「べし」(当然)、「まじ」(打消当然)、「らし」「なり」「めり」(推定)などです。また、逆説的ですが、現在も表すことができることから「らむ」(現在推量)も終止形に接続します。
 なお、特に注意しておきたいのは、これらの助動詞はすべて、ラ変動詞やラ変型活用には、連体形「-る」に接続するということです。ラ変型活用形の出現頻度はかなり高いので、しっかり覚えておいてください。
 
 さて、最後に何点か補足しておきます。
 「むず」という助動詞がありますが、これは「むとす」が縮まった形です。なので接続は「む」と同じ未然形、ただし活用パターンはサ変です。
 中世(院政期以降を想定しています)に、文字表記「ん」が発生してのちは、「ん」「んず」「けん」「らん」という表記が出現しますが、これらは「む」「むず」「けむ」「らむ」とまったく同じです。
 最後に、これはたまにしか見ないと思いますが、上代には「ゆ」「らゆ」という助動詞がありました。これらは「る」「らる」と同じだと考えてください。

 では、次の練習問題をやってみてください。

練習1 次の傍線部の語の活用形を記せ。
 ①花咲くべし。  (        )
 ②花咲くごとし。 (        )
 ③滝落ちけむ。  (        )
 ④滝落ちむ。   (        )

練習2 次の[ ]内の語を適当な形に改めよ。
 ①風[吹く]じ。   (      )
 ②人[尋(たづ)ぬ]けり。  (      )
 ③思ひ出に[す]む。 (      )
 ④花[美し]べし。  (      )

 次に、「助動詞の活用パターン」に入ります。
 助動詞の活用パターンは、いくつかの特殊型を除き、大多数が用言の活用パターンと同じです。それらは新たに覚え直す必要はないでしょう。文法のテキストに掲載されている活用表を見ると、出現しない活用形の所は「○」になっているとおもいますが、文中に出てこないだけなのだから、○の位置まで覚えることはないでしょう。そう割り切った方が楽に進めます。
 以下に、活用のパターンを分類します。

2 助動詞の活用パターン
 A 下二段型…る、らる、す、さす、しむ、つ
 B ナ変型 …ぬ
 C ラ変型 …なり(推定)、めり、けり、たり(完了)、り
 D 形容詞型…べし、まじ、まほし、たし、ごとし
 E 形容動詞型…なり(断定)、たり(断定)
 F 特殊型 …じ、らし、む、けむ、らむ、き、まし、ず

 上記のように分類して把握し、A~Eは用言の知識を活用して判断し、Fだけ新たに覚える、というのが効率的です。例えば、
 「堀池の僧正とぞ言ひける」
という文の「ける」の活用形を判断する場合、「けり」の活用表を覚えておいて判断してもいいのですが、これはラ変型だから、「ら・り・り・る・れ・れ」で連体形だ、というように処理した方がスピーディーです。正確に助動詞の活用表を覚えるのも悪いことではないのですが、合理化できるところは合理化した方が、負担が少なくて済みます。

 では、このあとまず、Fの特殊型を押さえていきます。
 これも4グループに括って覚えます。

 変化しません。楽勝です。

 「四段型」とするテキストも多いのですが、むしろ「む型」として覚えた方がピンとくるでしょう。
 「けむ」(過去推量)は、過去の助動詞「き」と推量の助動詞「む」が融合したもの、「らむ」(現在推量)は、ラ変動詞「あり」と推量の助動詞「む」が融合したものなので、同じ活用パターンになります。

 親近性があるので併せて覚えます。後に説明しますが、反実仮想(もしも~なら…なのになぁ、という表現法)では、「~せば…まし」「~ましかば…まし」という形をとります。この二つの助動詞の未然形は、このパターンでのみ出現します。また、出現する活用形も共通なので、併せて覚えやすいと思います。

 主活用の未然形「ず」は「~ずは(~ないならば)」「ずとも(~ないとしても)」の形だけで出現します。
 第二活用は、連用形「ず」にラ変動詞「あり」が融合して生じたもので、主として助動詞を下接させる形ですが、已然形「ざれ」、命令形「ざれ」も一般的に使用されます。

 以上が特殊型です。これらを覚えておけば、残りの助動詞は何型に属しているかを押さえておけばいいことになります。
 ただし、ここでは念のため、それぞれのタイプの活用形を掲載しておきます。

 「る」「らる」「す」「さす」「しむ」は、接続も同じであり、のちに説明しますが、動詞の主語を変えてしまうという機能も一緒なので、一括りで押さえておきましょう。
 完了の助動詞「つ」は、実は「捨てる」という意味の「棄(う)つ」という下二段動詞の頭母音が脱落して発生しました。それで下二段型になっているわけです。ちなみにこの「棄つ」は、現代語にも「財産をなげうつ」というような形で残っています。

 完了の助動詞「ぬ」は、「行ってしまう」という意味のナ変動詞「往(い)ぬ」の頭母音が脱落して生まれた助動詞です。それでナ変型になっています。

 終止形が「り」で終わる助動詞はすべてラ変型です。それもそのはずで、これらは次のようにして発生しました。
  音(ね)+あり→なり  見(み)+あり→めり  来+あり→けり  て+あり→たり
 「り」については以前に説明したとおりです。
 このタイプの助動詞の活用表では「○」の欄がありますが、要は、「出てこない」だけなので、覚えていなくても支障はないでしょう。「ラ変型はこれらの助動詞」ということを押さえておけば事足ります。ちなみに私は、キノコに引っかけて、「なめ茸(たけ)・り」と覚えています。

 終止形が「し」で終わる助動詞は、特殊型「じ」「らし」「まし」を除いてすべて形容詞型です。「ごとし」以外は「カリ活用」があり、これには助動詞が下接します。

 断定の助動詞「なり」は、格助詞「に」とラ変動詞「あり」が融合して生じた助動詞です。一方、断定の助動詞「たり」は、格助詞「と」とラ変動詞「あり」が融合して生じた助動詞です。連用形の「に」「と」は、そのなごりで、ある特殊な形で出現しますが、これについてはのちほど説明します。
 なお、一応「形容詞型」としましたが、ラ変型の連用形に「に」「と」を加えるだけですから、この点を押さえておけば、新たに覚えるまでもないでしょう。

 さて、以上で助動詞の活用パターンを一通り見てきましたが、補足として「むず」はサ変型、「ゆ」「らゆ」は下二段型、というのも一応覚えておいてください。

 では、練習してみましょう。

練習3 次の傍線部の助動詞の活用形を記せ。
 ①都ぞ花の錦なりける   (        )
 ②この女をこそ得    (        )
 ③頼むべからず      (        )
 ④源氏の君まかでさせ給ふ (        )

練習4 次の( )内の助動詞を適当な形に改めよ。
 ①京より下り(き)時に、      (        )
 ②あしと思へ(り)けしきもなくて、 (        )
 ③恐れの中に恐る(べし)けるは、  (        )
 ④何かあはれなら(ず)ん      (        )

 今回はここまでにしておきましょう。次回から、助動詞の意味を確認していきます。
 なお、前回の復習問題の解答と、補強問題を掲載しておきますので、確認してください。


練習1・解答
 ①花咲くべし。  (  終止形   )
 ②花咲くごとし。 (  連体形   )
 ③滝落ちけむ。  (  連用形   )
 ④滝落ちむ。   (  未然形   )

練習2 次の[ ]内の語を適当な形に改めよ。
 ①風[吹く]じ。   (  吹か  )
 ②人[尋(たづ)ぬ]けり。  (  尋ね  )
 ③思ひ出に[す]む。 (  せ   )
 ④花[美し]べし。  ( 美しかる )

練習3 次の傍線部の助動詞の活用形を記せ。
 ①都ぞ花の錦なりける   (  連体形   )
 ②この女をこそ得    (  已然形   )
 ③頼むべからず      (  未然形   )
 ④源氏の君まかでさせ給ふ (  連用形   )←「給ふ」は用言

練習4 次の( )内の助動詞を適当な形に改めよ。
 ①京より下り(き)時に、      (   し    )
 ②あしと思へ(り)けしきもなくて、 (   る    )
 ③恐れの中に恐る(べし)けるは、  (  べかり   )
 ④何かあはれなら(ず)ん      (   ざら    )←「ん」=「む」

復習問題2・解説
問一
 ①は問題ないでしょう。⑤終止形は「やむごとなし」、「て」を付けると「やむごとなく・て」となりク活用。⑦「滅ぶ」は「滅び・ず」となって上二段活用。下に「たり」が来ているので連用形になります。⑧終止形は「のどけし」。「て」を付けると「のどけく・て」となりク活用。⑨「ゐる」は覚えておくべき動詞で、上一段活用。ちなみに、ワ行の表記は「わ・ゐ・う・ゑ・を」です。⑩「恐る」は「恐れ・ず」となり下二段活用。⑪、⑫は問題ないと思います。
問二
 一文字動詞「経(ふ)」ですね。「へ・へ・ふ・ふる・ふれ・へよ」と活用しますが、本文では「経・たり」と下に「たり」があるので連用形、読みは「へ」です。
問三
 古文単語も少しずつ覚えていきましょう。「やや」は「やうやう」と同じで「しだいに/だんだんと」の意味。現代語と混乱しないように。「おのづから」は「自づから」と漢字が当たり、「①自然に」の意味は覚えやすい。そこから「②たまたま」の意味も出てきて、さらに「③ひょっとすると」と意味が派生します。ここは②の意味。
問四
 「かくる」は漢字で書くと「隠る」になります。こうすればわかりやすいでしょう。「ず」を付けると「かくれ・ず」になり、ラ行下二段活用。連用形は「かくれ」です。


補強問題2A(用言の判断)

1 傍線部の語を文法的に説明せよ。

 ①本意のごとく会ひにけり。        (               )

 ②行く川の流れは絶えずして、      (               )

 ③母の命尽きたるを知らずして、    (               )

 ④ある人、弓射ることを習ふに、    (               )

 ⑤ひがごとん人をぞ、            (               )

 ⑥死ぬることのみ、機嫌をはからず。(               )

 ⑦とんで火に入る夏の虫。          (               )

 ⑧いと心にくからめ。              (               )

 ⑨漫々たる海上なれば、        (               )

 ⑩同じう死なば、                  (               )

 


補強問題2B(用言の活用)

1 次の( )内の動詞を適当な形に改めよ。

 ① 心なしと(見ゆ)者にも、          (             )

 ② (悔ゆ)ても遅ければ、            (             )

 ③ 猛き者もつひには(滅ぶ)ぬ。      (             )

 ④ 沖より(寄す)白波にも、          (             )

 ⑤ 尊くこそ(おはす)けれ。          (             )

 ⑥ 先達は(あり)まほしきことなり。 (             )

 ⑦ 聞きしにも(過ぐ)て、            (             )

 ⑧ 山までは(見る)ず。              (             )

 ⑨ うるはしき花こそ、(めでたし)。  (             )

 ⑩ (ならびなし)べきことなり。      (             )

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古典文法講座第五回

古典文法講座 第五回

 今回は、「形容詞」と「形容動詞」を扱います。
 「形容詞」は、終止形が「し」で終わる用言です。物事の性質や人の心情を表し、「ク活用」と「シク活用」の二つの活用の種類があります。「ク活用」は性質を表す語が多く(よし、高し、赤し、など)、「シク活用」は心情を表す語が多い(をかし、かなし、あさまし、など)という傾向があります。また、どちらも主活用の他に、「カリ活用」を持つことが特徴です。
 形容詞のある語が「ク活用」か、「シク活用」か見分けるには、助詞の「て」を接続させるといいでしょう。「ク活用」なら「くて」となり(よし→よくて)、「シク活用」なら「しくて」となります(美し→美しくて)。
 ちなみに、「シク活用」の活用パターンは、「ク活用」に「し」を加えたもの(終止形を除く)なので、そのことだけ理解しておけば十分です。
 では、活用表を示しておきます。

 形容詞は、もともとは主活用だけが存在していたようです。しかし、形容詞を述語として用いる場合、助動詞を接続することができませんでした。これはとても不便なので、形容詞の連用形に動詞「あり」を接続させ、そこに助動詞を接続させる、という形が生まれました。例えば、次のようなものです。
[例1] 高く・あら・む
 そして、この形容詞・連用形の「く」と動詞「あり」が融合して、「カリ活用」が発生したのです。
[例2] 高から・む
 したがって、「カリ活用」はラ変型活用です。そして、助動詞が接続する未然形・連用形・連体形と、主活用では存在しなかった命令形だけが「カリ活用」として配置されることになったのです。こういう経緯がありますから、活用パターンを覚える場合は、まず主活用「く・く・し・き・けれ」を覚え、その上で「カリ活用はラ変だ」としておくと、覚えやすいでしょう。

 さて、ここで二つほど、留意点を挙げておきます。
 第一に、未然形「く」「しく」は、「くは」「しくは」の形でだけ出現する、ということです。これらは「もしも~ならば」という意味になります(文法的には、「仮定条件」といいます)。詳細は助詞のところで説明します。
 第二に、形容詞「多し」のカリ活用は、終止形に「多かり」、已然形に「多かれ」という形を持つので注意してください。これは難易度の高い大学で問われることがあります。

 ここで形容詞の音便も確認しておきましょう。形容詞の音便は次の三つです。
①連用形「く・しく」→ウ音便=「う・しう」
 例 よく→よう、をかしく→をかしう
②連体形「き」「しき」→イ音便=「い・しい」
 例 たかき→たかい、かなしき→かなしい
③連体形「かる」「しかる」→撥音便=「かん、しかん」
 例 赤かる→赤かん、あさましかる→あさましかん
 
 形容詞ではもう一つ、「語幹用法」を覚えておきましょう。
1 「あな、【形容詞の語幹】」「【形容詞の語幹】の~や」で感動表現となる。
 例3 あな、をさなや…ああ、おさないこと
    めでたの人や…すばらしい人だなぁ

 この形は、現代語でも「ひど!」「やす!」と言ったりするのでなじみがあると思います。
 さて、次のパターンは確実に押さえてください。とても重要です。
2 「~を【形容詞の語幹】み」の形で、「~が…なので」の意味になる。
 例4 かたをなみ…干潟がないので
    里遠み…人里が遠いので(「を」が省略されることもある)

 形容詞はここまでです。
 次は、「形容動詞」です。
 形容動詞は、主として状態を表す用言で、「ナリ活用」と「タリ活用」があります。ひと目ですぐそれとわかりますが、連用形の「-に」「-と」の形には注意が必要です。

 活用表は次の通り。

 活用パターンは連用形だけ注意しておけば、あとはラ変型ですから、覚えるのにそんなに苦労はないでしょう。ちなみに、「ナリ活用」は和語的、「タリ活用」は漢字の反復を語幹とするので漢語的という違いがあります。

 それにしても、形容動詞はなぜ連用形にだけ「-に」「-と」という活用語尾を持つのでしょうか。これは次のように考えると合理的です。
 「-に」「-と」という形態の方が最初にあり、それに「あり」が接続・融合して「なり」「たり」という活用が発生したのだ、と。
 つまり、例えば「静かに」という形がまずあり、活用はなかった。これは自立語・活用なし・連用修飾語ですから、品詞は副詞になります。この副詞が、動詞「あり」に接続すると、「静かに・あり」となる。意味としては「静かな状態だ」ということでしょう。つまり状態を表現する述語が生まれるわけです。さらに、「に・あり」が融合して「なり」になる。形容動詞の誕生です。
 これは一つの仮説ですが、こう考えれば、形容動詞の連用形に「-に」「-と」という形があることが説明できると思います。

 さて、形容動詞の音便ですが、「ナリ活用」にだけ音便があり、連体形の「-なる」に推定系の助動詞「なり」「めり」が接続すると撥音便となり、「なん」になることがあります。

形容動詞の音便
 ナリ活用連体形 「-なる」+「なり/めり」→撥音便=「-なん・なり/めり」
 例 静かなる・なり→静かなん・なり
 ※撥音便は無表記になることが多いので注意

 では、形容詞、形容動詞について、練習してみましょう。

練習1 傍線部の語を文法的に説明せよ。
①木のさまにくげなれど、楝(あふち)の花いとをかし
②世はさだめなきこそ、いみじけれ
③侍(さぶら)ふ人も、さうざうしげなめり。
④翁(おきな)やうやう豊かになりゆく。
⑤汝がためにはよい敵(かたき)ぞ。

①にくげなれ   (                      )
 をかし     (                      )
②なき      (                      )
 いみじけれ   (                      )
③さうざうしげな (                      )
④豊かに      (                      )
⑤よい       (                      )

練習2 次の和歌について、空欄部を埋めて口語訳を完成させよ。
 [和 歌]湊風さむきうきねのかり枕都を遠み妹夢にみゆ
 [口語訳]港に吹く風が寒々とする、つらい船旅の宿りでは(          )あなたと夢でお会いしました。

 今回はここまでにしておきましょう。
 なお、前回と今回を範囲とする復習問題を掲載しますので、やってみてください。解答は次回に掲載します。また、末尾に前回の補強問題の解答を載せておきます。

 頑張ろう、東高!

練習1・解答
①にくげなれ   ( 形容動詞・ナリ活用・已然形         )
 をかし     ( 形容詞・シク活用・終止形          )
②なき      ( 形容詞・ク活用・連体形           )
 いみじけれ   ( 形容詞・シク活用・已然形          )
③さうざうしげな ( 形容動詞・ナリ活用・連体形・撥音便・無表記 )
④豊かに      ( 形容動詞・ナリ活用・連用形         )
⑤よい       ( 形容詞・ク活用・連体形・イ音        )

※「なし」は形容詞です/「いみじ」は、語尾が濁音ですが「シク活用」です。

練習2・解答
 [口語訳]港に吹く風が寒々とする、つらい船旅の仮寝では( 都が遠いので   )あなたと夢でお会いしました。

 復習問題2

 次の本文を読んで、以下の問いに答えよ。

 おほかた、この所に住みはじめし時はあからさまと①おもひしかども、今すでに五年を②たり。仮の庵も③ややふるさととなりて、軒に朽葉(くちば)深く、土居(つちゐ)に苔むせり。④おのづから事のたよりに都を聞けば、この山に籠(こ)もりゐて後、⑤やむごとなき人の⑥(かくる)たまへるもあまた聞こゆ。ましてその数ならぬたぐひ、尽してこれを知るべからず。たびたびの炎上に⑦滅びたる家またいくそばくぞ。ただ仮の庵のみ⑧のどけくして、恐れなし。ほど狭しといへども、夜臥(ふ)す床あり、昼⑨ゐる座あり、一身を宿すに不足なし。寄居(かむな)は小さき貝を好む。これ事知れるによりてなり。みさごは荒磯にゐる。すなはち人を⑩恐るるがゆゑなり。われまたかくのごとし。事を知り、世を知れれば、願はず、わしらず、ただ⑪静なるを望み、憂へなきを楽しみと⑫す。

問一 傍線部①、⑤、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪、⑫を文法的に説明せよ。

問二 傍線部②は動詞の連用形である。読み仮名を記せ。

問三 傍線部③、④の古語の意味を記せ。

問四 ⑥(かくる)は、「亡くなる」という意味の動詞であるが、ここでは連用形にするのが適当である。「かくる」の連用形を記せ。

補強問題1A(品詞) 解答

1 次の単語の品詞を、以下の選択肢か選んで、記号で記せ。

 ①受く  ②されど  ③かかる  ④なし  ⑤さらに  ⑥あな
 ⑦しのぶ草  ⑧こそ  ⑨恐ろしげなり  ⑩けり

 選択肢
  ア 名詞  イ 連体詞  ウ 副詞  エ 接続詞  オ 感動詞
  カ 動詞  キ 形容詞  ク 形容動詞  ケ 助動詞  コ 助詞

2 次の傍線部の語の品詞を、1の選択肢から選んで、記号で記せ。

 よろづのことは、月見るにこそ①慰むものなれ。②ある人の、「月ばかり③おもしろきものはあらじ」と言ひしに、④またひとり、「露こそ⑤あはれなれ」とあらそひしこそをかしけれ。折にふれ⑥、⑦かはあはれならざら⑧。月花はさらなり、風のみこそ、人に心はつくめれ。岩にくだけて⑨清く流るる水のけしきこそ、時をもわかずめでたけれ。「沅・湘日夜東に流れ去る。愁人のためにとどまること⑩しばらくもせず」と言へる詩をば見はべりしこそあはれなりしか。


1 ①(カ ) ②(エ ) ③(イ ) ④(キ ) ⑤(ウ )
  ⑥(オ ) ⑦(ア ) ⑧(コ ) ⑨(ク ) ⑩(ケ )

2 ①(カ ) ②(イ ) ③(キ ) ④(エ ) ⑤(ク )
⑥(コ ) ⑦(ア ) ⑧(ケ ) ⑨(キ ) ⑩(ウ )

 

 

 

 

 

 


補強問題1B(動詞1) 解答

1 次の動詞の活用の種類を、以下の選択肢から選んで記せ。

 ①見る  ②死ぬ  ③思ふ  ④蹴る  ⑤受く
 ⑥をり  ⑦過ぐ  ⑧おはす  ⑨来

 選択肢
  ア 四段  イ 上一段  ウ 上二段  エ 下一段  オ 下二段
  カ カ行変格  キ サ行変格  ク ナ行変格  ケ ラ行変格

2 次の傍線部の動詞の、活用の種類(必ず行も記すこと)と活用形を記せ。

 ①「いかにぞ」と問へば、
 ②牛のかぎり引きいでて往ぬる
 ③来る音のすれ
 ④夏果てず。
 ⑤あの扇の矢を


1 ①(イ ) ②(ク ) ③(ア ) ④(エ ) ⑤(オ )
  ⑥(ケ ) ⑦(ウ ) ⑧(キ ) ⑨(カ )

2 ①(ハ行四段・已然形  ) ②(ナ行変格・連体形  )
  ③(サ行変格・已然形  ) ④(タ行下二段・未然形 )
  ⑤(ヤ行上一段・連用形 )

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古典文法講座第四回

古典文法講座 第四回

 今回は、「動詞」の続きから入ります。
 動詞に関しては、まだ何点か触れておかなければなりません。その第一は、活用行の判断についてです。ア行、ヤ行、ワ行は混乱しやすいので、注意が必要です。この点に関しては、鉄則があるので押さえて下さい。すなわち、
 ア行で活用する動詞は、「得(う)」一語である 
ということです。(例外はありますが、高校生には必要ありません)これさえ理解していれば、混乱は防げるはずです。例をあげてみましょう。

 例文 ①老いたる者、矢を②たるに、人の③植うる柿の木に当たれり。

 ここにはア行で活用する動詞は一語もありません。なにしろ、ア行で活用する動詞は、「得」一語なのですから。では、何行か。解答を記しましょう。

 解答 ①ヤ行上二段  ②ヤ行上一段  ③ワ行下二段

 説明するまでもないと思いますが、念のため。「老い」の「い」はア行ではないとすると、「やいゆえよ」の「い」しかない。「射(い)」も同じこと。「植うる」の「う」もア行でないとすれば、「わゐうゑを」の「う」しかない。それだけのことです。
 ちなみに、ヤ行上二段は「老(お)ゆ」「悔(く)ゆ」「報(むく)ゆ」の三語だけ、ワ行下二段は「植(う)う」「飢(う)う」「据(す)う」の三語だけに限定されるので、覚えておきましょう。

 さて、第二の注意点。次にあげる動詞は、活用の種類を間違えやすいので、独立して押さえる必要があります。
 「恋(こ)ゆ」「恨(うら)む」
 活用の種類がわかるでしょうか。前回の講座で説明した手順に従って、考えてみましょう。
 まず、所属動詞を覚えておくべき活用の種類を確認する。上一段=「きみにいひゐ-る」、下一段=「蹴る」、カ変=「来」、サ変=「す」「おはす」、ナ変=「死ぬ」「往ぬ」、ラ変=「あり」「をり」「はべり」「いまそかり」。この中にはありませんね。ならば、先にあげた二つの動詞は、四段・上二段・下二段のいずれかということになります。その判定は、「ず」を付けることによって行うわけですが、ここで問題が生じます。「ず」を付けた形を記してみましょう。
 「恋い・ず」「恨み・ず」
 こうなります。現代語の語感と少し違いますね。それで混乱するのです。しかし、このような動詞は他にはそうありませんから、まずこの二つは別に覚えておきましょう。念のため、この二つの活用の種類を記しておきます。
 「恋ゆ」=ヤ行上二段、「恨む」=マ行上二段

 また、次に挙げる三つは、一文字の動詞で、混乱しがちですから、まとめておいた方がいいでしょう。
 「得(う)」=ア行下二段、「経(ふ)」=ハ行下二段、「寝(ぬ)」=ナ行下二段

 次に、第三の注意点。動詞の中には、二つの異なる活用の種類をもつものがあります。そして、活用の種類によって意味が異なるのです。その代表的な二例だけ、とりあえず押さえておいて下さい。

「頼(たの)む」
・四 段→「たよりにする」
・下二段→「たよりにさせる」
「給(たま)ふ」
・四 段→「尊敬」の動詞・補助動詞
・下二段→「謙譲」の補助動詞(会話文や手紙のみ、訳は「~です、ます」)

 「給ふ」については、敬語を解説する際に詳しく見ていきますので、とりあえず、二つの活用の種類があるのだ、ということだけ押さえて下さい。

 最後に、動詞の音便を確認しておきましょう。四段・ナ変・ラ変の動詞は、その連用形において、活用語尾が「い・う・ん・つ」に変化することがあります。これらをそれぞれ、「イ音便」「ウ音便」「撥(はつ)音便」「促(そく)音便」と呼びます。
 また、ラ変動詞では、連体形が撥音便になることがあります。
 音便において重要なのは、音便の四つの種類と、それらが連用形の活用語尾が変化したもの(例外は、ラ変動詞の連体形が撥音便になったもの)である、ということだけです。
 例を挙げておきます。
(例)
[連用形]
 イ音便‥書きて → 書いて
 ウ音便‥歌ひて → 歌うて
 撥音便‥死にて → 死んで
 促音便‥ありて → あつて

[連体形]
 撥音便‥あるなり → あんなり

※ラ変動詞と同じ活用をするものに、形容詞カリ活用、形容動詞、「なり」などの助動詞があります。これらの連体形も撥音便になることがあります。
 また、ラ変型活用の撥音便が無表記(文字化されないこと)になる場合があります。これは、「ん」という文字が生まれたのが、おおむね中世以降であったためと考えられます。
(例)
 海月(くらげ)のななり → 海月のなンなり〈「ン」が表記されていない〉

 では、ここまで述べてきたことをまとめておきましょう。

 

 

※補足
 念のため、二点ほど補足しておきます。
 まず一点目。同音異義語の動詞があるので、典型的なものを挙げておきます。
 「きる」 = 「着る」(カ行上一段)、「切る」(ラ行四段)
 「いる」 = 「射る」「鋳る」(ヤ行上一段)、「入る」(ラ行四段)

 次に、二点目。知覚動詞などでは、上代に使われた助動詞の「ゆ」と融合して、別の動詞になったものがあります。また、助動詞「す」と融合したものもあります。典型的なものを挙げておきます。

・「見る」系動詞
 「 見る 」(マ行上一段)‥「見る」の意
 「 見ゆ 」(ヤ行下二段)‥「見える」の意
 「 見す 」(サ行下二段)‥「見せる」の意

・「聞く」系動詞
 「 聞く 」( カ行四段 )‥「聞く」の意
 「聞こゆ」(ヤ行下二段)‥「聞こえる」の意

・「思ふ」系動詞
 「 思ふ 」( ハ行四段 )‥「思う」の意。
 「思(おも)ほゆ」「覚(おぼ)ゆ」(ヤ行下二段)‥「思われる」の意

 今回はここまでです。以下の練習問題をやってみてください。

練習1 次にあげる動詞の活用の種類を記せ。
  ①矢をたり。      (          )
  ②恨みざりけり。     (          )
  ③手づから植うる梅。   (          )
  ④あやまちを悔いてけり。 (          )
  ⑤美しうてたり。    (          )

練習2 次の傍線部の語を文法的に説明せよ。
  例  足うち折つて      ( 動詞・ラ行四段活用・連用形・促音便   )
  ①中にて転んで落ち      (                     )
  ②重きものを抱いたりして   (                     )
  ③おろかならぬ人々にこそめれ(                     )


練習1・解答
①ヤ行上一段活用  ②マ行上二段活用  ③ワ行下二段活用  ④ヤ行上二段活用
⑤ワ行上一段活用

練習2・解答
①動詞・バ行四段活用・連用形・撥音便
②動詞・カ行四段活用・連用形・イ音便
③動詞・ラ行変格活用・連体形・撥音便・無表記

 以下に前回の復習問題の解答と解説を載せておきますので、参照してください。

 頑張ろう、東高!


現代語訳
 尼君は、「なんと、まあ幼いこと。どうしようもなくていらっしゃいますね。私が、このように今日明日と思われる命であるのを、なんともお思いにならないで、すずめを慕いなさることですよ。罪を得ることだと、いつも申し上げているのに、情けないこと」と言って、「こちらへ」と言うと、(女の子は)膝をついて座った。顔つきはたいそうかわいらしくて、眉のあたりがけぶるようで、あどけなく髪をかきやった額のあたりや、髪の様子が、ほんとうに可憐である。成長してゆく様子を見てみたい人だなと、(源氏は)目をおとめになる。それというのも、この上なくお慕い申し上げる人に、たいそうよく似申し上げているので、自然と見守られるのだなあ、と思うにつけても、涙が落ちる。

解説
一 ①感動詞は、現代語訳すると「ああ」とか「まあ」とかなるものです。②自立語・活用なし。何に掛かっているか考えましょう。④「ほど」=「程度」⑦接続助詞です。⑨終止形は「いはけなし」です。
二 ③「おぼえ-ず」となり、下二段。⑤唯一のア行で活用する動詞です。⑧終止形は「ゐる」、覚えておく動詞です。⑩「とまら-ず」となって、四段。⑪終止形は「似る」、これも覚えておく動詞です。
三 ⑥「常に・聞こゆる・を」となります。⑫「涙・ぞ・落つる」となります。この問題に限らず、動詞の末尾を助動詞と勘違いしないよう注意して下さい。とりあえず、練習段階では動詞の活用表を作って確認することです。最初は面倒ですが、慣れて来ると瞬時に頭の中でできるようになります。
四 ア-「な~そ」の形です。とても重要です。イ-「さらに~ず」、呼応の副詞です。ウ-「やや」に注意しましょう。これは「やうやう」がつづまった形で、「だんだんと、しだいに」と訳します。

 

  ※復習問題1の補強問題を以下に掲載します。基礎事項をしっかり身につけたい人はやってみてください。解答は次回に掲載します。

 

 

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