人文科ブログ
5月16日(火) 1年生「多面的思考トレーニング」 2年生「ポスター作り3回目」
5月16日(火)
1年生 多面的思考トレーニング
1年生の1学期は、「探究マインド育成」「研究対象模索」が大きな目標です。
スプリングセミナーで新入生に周知した、探究活動に欲しい指針「メディアリテラシー」と「多面的思考」。今日は多面的思考のトレーニングです。
世の中にある未解決の問題について、過去の人々と同じようにしか考えられないと、過去の人々がすでに考えて試してうまくいかなかったのと同じアイディアしか浮かびません。そして問題はやっぱり解決できないでしょう。
同じ問題を、これまでと違う角度から見てみる。「奇をてらう」とも違う。話題性やユーモア、周囲の反応が目的でその場限りの言葉遊びをするのとは違う。でも場合により、段階により、一見「奇をてらっている」としか周囲が思えないようなアイディアが解決の突破口になることもあるかもしれませんね。多面的思考ができない人は、できる人のいう事を前向きに理解すること自体、できないのかもしれません。
今回は昨年同様、小難しくならないように、楽しめるように、「頭の体操」的な問題を用意しました。生徒たちには5,6人の班を8班作ってもらい、班ごとに制限時間を切って解答を考えてもらいました。
以下が、問題と「多面的に見てほしいポイント」「解答」「生徒の様子」です。5番以外はそれぞれ1,2分、5番は5分で、班ごとに答えを考えてもらいました。
1.次の図で、川の対岸のA地点からB地点まで川に対して直角に橋を架ける場合、どのように架ければ最短で両地点を結べますか?
(※肝心の図の画像が無いので、言葉で説明します。真っすぐな川があり、川の対岸(上側)の左の方にA地点、こちら側(下側)の右の方にB地点を設けます。両地点の水平方向の距離は、川幅の6~7倍あります。)
●ポイント:橋の形状については、川に垂直であれ、という以外言われていない。街中で、道路の下をドブレベルの幅が狭い川が通る場合、どんな様子になるか。橋の幅の方が川幅より狭くなる、という先入観に気が付けるか。
●解答:A地点からB地点まで覆う、幅の広~い橋を架ければよい。
●様子:今年は正式に解答にこぎつけたられた班はありませんでした。ただ、どの班も活発に話し合って、何班か答えを発表してくれました。中には、カクカク直角に曲がった橋を思いついた班もありました。
2.柱2本とハンモック1つの「ハンモックセット」が5セットありますが、1セットが不良品で、柱が1本しか入っていません。5セットすべて問題なく使うには、どうしたらいいですか。
●ポイント:逆に5セット分の部品を全て使わねばならない、とは言われていない。部品をセット間で共有してはならない、とも言われていない。
●解答:不良品セットと完品セット1つを合わせ、柱を1本共有すれば、柱3本でハンモック2つをぶら下げられる。さらに言えば、5セットを円形に配置すれば、柱は全部で5本でもハンモック5つ全て使える。
●様子:これは複数の班が正当にたどり着きました。すばらしい!
3.つまようじ6本を折らずに使って同じ大きさの正三角形を4つ作りなさい。ようじは重ねてはいけない。
●ポイント:平面で解決しなさい、とは言われていない。2次元と3次元の間に横たわる先入観。
●解答:正三角錐を作る。
●様子:これは、昨年度に条件をいくつか付け忘れて持っていかれたので、今年はバッチリ。こちらの勝ちでした。なにしろ活発なので、複数の班がいくつか案を述べてくれました。最後は皆、多角的視点というものを実感してくれたように感じました。
4.マッチ棒4本を折らずに使って、田の字を作りなさい。
●ポイント:マッチ棒は平面に並べろ、とは言われていない。~の字を作れ、という表現はあいまいで、例えばミッキーマークのような幅があり得る。
●解答:マッチ棒には、断面が四角い木片が使われている。4本のマッチ棒を束ねて火薬部分ではない側を見ると、四角い断面が田の字に並ぶ。
●様子:これは、生徒の勝ちでした。もっともずるい、一休さんや彦一のような「とんち」の範疇の問題でしたが、2,3班が早々に「~だ!」と盛り上がって、指名した班長も解答を板書してくれました。お見事!。
※授業では言いませんでしたが、時間制限のないブログ用のネタ
昔、センター試験だか共通一次試験だかの理科の問題で、何かの条件で温度を計算させる問題だったと思いますが、これに対してある受験生が「温度計を使う」と答えて物議をかもした記憶があります。顛末は覚えておりませんが、問題の意図や目的は「多面的思考」ではなく「理科分野の知識や計算技術」を問うもののはずですから、問題文に温度計を使うな、となくても不正解でいいと思います。今でも職業柄、問題を作成する立場でもありますから、問題文には気を付けたり、テスト前後に意図や常識などもコメントしたりします。
さあ、ここからは、現実にあったことをネタに、真面目?にいきます。
4.ある県内の市で、市内のカブトムシのいなくなった森に、養殖したカブトムシを数百匹放しました。このことについて「問題点」を発見し、「解決策」を考えなさい。
●ポイント:なぜ「いなくなった」のか。森に放した目的は何か。放されたカブトムシはどうなるのか。
●解答:市は、カブトムシがいなくなった原因を考慮しているとは思えない。また、カブトムシが定着あるいは生存する見込みがない状態での放虫は目的が不明であり、目的がどうあれ、いなくなった原因をただしてから放虫すべきである。
●様子:これはいくつかの班で、こちらの意図した思考をと逆の発想をしてくれて、興味深かったです。カブトムシを、環境に圧を加える問題生物と捉えたりと、思考ステップを踏んでの思わぬ展開。全体的に活発に話し合いが行われ、嬉しい限りでした。
ブログ用解説(6割は授業で早口で話しました)
カブトムシがいなくなった原因は、温暖化が原因かもしれない「林内の乾燥」もありますが、一番は「木々が樹液を出さなくなった」ことにあります。「樹液」は木の「傷口」から出るもので、「傷口」は「治るもの」です。まず近年、木々に傷自体があまりつきません。理由は、木々の傷はカミキリムシ、タマムシ、コメツキムシなどの昆虫によるものであり、そういう昆虫がまず減少しています。さらに正常な状態の自然では、ボクトウガという蛾の肉食の幼虫が、樹液に集まる小さな虫などを捕食する都合で、猟場である「傷」が治るのを、傷口を定期的にいじって阻止することで樹液が長期間流れるのです。ちなみにこの蛾の幼虫は、自分では樹皮に初期の傷は設けられません。
何千万年か分かりませんが、こうした環境が悠久に継続したからこそ、「樹液をほぼ専食する」カブトムシ、クワガタムシ、カナブン等が進化してきたわけです。しかし現在、このボクトウガもほとんど見かけません。結果、やっとついた木の傷からせっかく樹液が出ても、傷はすぐふさがってしまうし、近年の夏の暑さでは林床までカサカサ、樹液も8月どころか7月下旬も待たずに乾いてしまいます。
あともっと直接的な人間の仕業として、市民の森のような一般人が遊歩道で入り込めるエリアにある樹木の樹液には、市町村の職員がスズメバチ対策で乾燥剤や毒液を散布しますや。恐らく自然を都合よくしかとらえられない一部の市民が苦情を訴えるのでしょう。住宅地の自宅の庭じゃないのに。森なのに。スズメバチを先に見つける技、避ける技、急に出会っても怒らせない技を身につけるか、嫌なら森には行かない事。これが筋だと思うのが私の持論でゴザイマス。
十数年前のことですが、埼玉県内のS市は、餌のない森にカブトムシを放虫して、何がしたかったのでしょう。カブトムシが取れる森にしたかったのでしょうか。それとも潮干狩り用に作った砂浜に養殖アサリを撒くように、ひと夏子どもたちに虫取りできる森を提供したかったのでしょうか。いずれにしましても、その触覚に樹液のにおいを一切感じられないカブトムシたちは、2日と待たずこの森から飛び去ったでしょうね。
これが鯉の放流などになると、もっとひどい話になります。「〇〇市では、市民と共同で養殖した鯉の稚魚を、魚のいなくなった××川に放流しました。」鯉自体が一部の地域や亜種を除き実は厳密には外来種であり、また人間が都合で仕切った「国」の中でも、もともといなかった地域へ国内から新しく生物を移動定着させると、これは「国内外来種」となり、環境破壊の一環となります。コイは頑丈で繁殖力旺盛で獰猛で、世界的に猛威を振るっています。鯉の増えた水域では他の動物への圧はすさまじいものですから。
最後の問題です。
5.信号機付きの横断歩道で、通行人がギリギリの駆け込み横断をするのを防止するためのアイディアを話し合って考えなさい(実際に実用化されているものです)。
●ポイント:罰や物理的なハードルでなく、人に駆け込みをさせる心境に着目できるか。「あとどのくらい待たされるか分からない不安」に気が付けるか。
●解答:歩行者用信号の待ち時間表示の中央に人型のアイコンがあり、この人型アイコンが待ち時間の間「ダンスする」。ヨーロッパのある国で実際に採用された工夫で、人型のダンスはなんと録画やアニメ動画の連続再生ではなく、近くのブース内で係が実際にやっているダンスに人型アイコンの動きが連動する仕組みで、ダンスの動きがしょっちゅう変わるので信号待ちの人々が飽きずに見られる、というもの。
●様子:これは、全班に解答をききました。頭がほぐれた感じの、面白い案がたくさん出ました。やはり考えが至らないのは、その案を実現するための費用や人材等ですね。最も本筋の解答は、「歩行者用信号機に、赤信号でも青信号でも「残り時間」「待ち時間」が分かるようなカウントダウン形式の表示を設ける。」でした。これはしかし、すでに広く実用化されていますので、ベストアンサーではありませんが、発想を褒めました。素晴らしいです!
ここで、発想の転換の実例を紹介しました。
オーストラリアかニュージーランドだったと思います。ある郊外の道路で、雨天時にスリップ事故が多発する場所があり、そこに苦慮の末、注意を促す標識を設置した、という話。この標識、「雨天スリップ注意」「事故多発地点」「この先急カーブ」等の文言はなく、幼い女の子の顔が大きく描かれており、晴天時はただそれだけのものなのですが、雨天時はなんとなんと!!女の子の両目から赤い液体が流れる仕組みが!私はこれをテレビ番組で見て、血の涙を流すマリア像やキリスト像の話を思い出しました。初めて見るドライバーはさぞ肝をつぶしたことでしょう。また状況的に「見慣れる」ことは考えにくいので同じドライバーにも長期にわたり有効でしょう。雨天時スリップ事故は激減したそうです。まさに「標識」の「常識」を覆す多面的思考が成功した好例だと思います。
最後に、偉人たちが残した「発想力が鍛えられる名言・格言21選」のプリントを配布し、いくつか選んでコメントしました。是非すべて読んで、なんでしたら座右の銘にしてほしいですね。
例えば、
ピカソ「子供は誰でも芸術家だ。問題は大人になっても、芸術家でいられるかどうかだ。」
ジャック・ロンドン「ひらめきがやってくるのを待ってはいられない。棍棒を持って追いかけるしかない。」
エジソン「ほとんどすべての人は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。いよいよこれからだというのに・・・」
本物?は、違いますね(決して上からではなく、自ら同じような心境にどのくらい到達できたことがあるか考え、やはりそこまでは思い至らない自分を見つめてのため息)。
2年生「ポスター作り3回目」
今回はまた私は授業者ということで、同じ時間の2年生の様子を覗きに行けませんでした。今回、1年生の担任のY教諭に撮影をお願いしてありましたので、短時間抜けだして2年生の様子も撮影してきてもらいました。
見た目はやはり地味なデスクワークですが、ちゃんと必要な時間を取って必要な活動をしていますので、手短に様子の紹介です。
おおっ!画像を確認していて、嬉しい発見!昨年度、授業の様子を撮影に行くと、いつも素敵な笑顔でブログ用に愛想を振りまいてくれたKさん、健在じゃないですか!Y教諭、ありがとうございます!当然、登場してもらいます。
さあ、ポスター発表まで2か月ありません、みんな頑張れ!
5月9日(火)1年生「ネタ帳を作ろう②(資料・文献収集)」 2年生「ポスター発表用資料作り②」
5月9日(火)1年生「ネタ帳を作ろう②(資料・文献収集)」
今回も、1年生は図書室で授業です。
「ネタ帳を作ろう」と言っても、なかなか難しいものがあります。なにしろ興味がある、面白いとおもったものは、書籍でも新聞記事でもSNS上の情報でも、パッと記録に残してファイリングする…そのファイルがネタ帳なのですが、物理的に作り始まらないと、動き出しにくいものです。
今回は、担任のY教諭主導で、まずはネタ帳を物理的に作り始めてみよう、と。
始めに、前回図書室で司書さんにお願いした授業の時の資料を見返します(iPad便利)。通っている高校の図書室だけでなく、身近な図書館…県立や市立の…の利用の仕方などを復習しました。
本棚にある図書(開架図書)ばかりでなく、書庫に保管されている書籍(閉架図書)も、利用できるようになるといいね、とのお話。興味の対象について、利用する図書館の蔵書を積極的に調べて、それが閉架図書であっても窓口で手続きして借りる…そんな体験を是非皆にしてほしいものです。
春休みの宿題も返却されました。これをネタ帳の最初に閉じ込んで、今日あらためて最低2ネタ綴じ込めば、ネタ帳は今日ここで3ネタになる(厳密には、春課題は「最低3ネタ」としてありましたので、最低5ネタ)…という目的の時間です。
春休みの宿題は、入学前ですが、「興味のあること」を記入してあるはずです。今日はそこから、記入したネタに関係がある書籍を書架(本棚)から最低2冊見つけてきて、必要な情報を専用の記録用紙に記入して、ネタ帳に挟む、ということになります。
さあ、みんなめいめいに本の森に入っていきます。
見つけてきた本について、必要な情報を記録します。
みんな、ネタ帳が「最低5ネタ」になりましたでしょうか???ガンバレ~!
2年生「ポスター作り③」
2年生はやっぱりこんな感じで、画像は代わり映えしません。今後とも…です。
絵としては日を変えて繰り返しても面白味がありませんが、ちゃんと作業は進んでいます。人文科の2年生は、例年PCの扱いに明るい生徒が多く、多くの者がそれでも初めていじる「パワーポイント」というアプリに物おじせず、どんどん資料を作っていきます。
時折、先週の「個別指導担当へ初顔合わせ」の時に該当教員の都合がつかず会えなかった者で、この時間にアポイントメントを取れた生徒…が出入りしたり、研究内容に加えたい、あるいは改めて調べてみたいことが生じた者が、PC室の出入り口と廊下を挟んで反対側にある図書室裏口からチョット入って書籍を探したり、と、全員黙ってPCの前に座っているだけではない…のですが。
素敵なプレゼンテーションができるといいですね。楽しみです。
5月2日(月) 1年生「SDGs関連」 2年生「個別指導担当へ挨拶」
5月2日(月) 1年生「SDGs関連」 2年生「個別指導担当へ挨拶」
1年生「SDGs関係(地球カレンダー)」
SDGsにつきましては、数年前に「視点を取り入れる」という表現で学習機会を設け始めました。生徒にとりまし8て、探究論文作成に向けたテーマの設定時にあまりSDGsにこだわりすぎますと、自由な発想が制限される恐れがあります。人文科としまして、まずは単純に「疑問→仮説→論証→結論」の流れを自ら設定すること、それについて手順を踏んで研究し論文にすること、この流れをスムーズに体験することを優先しまして、実情は「後付けで」自分の研究はSDGs17項目のどれに貢献できるか考える…くらいの強さでやっております。
一方、SDGsそのものは、悲しいかな「エコ~」と同様、商標化してしまっているような場面も見受けますが、現在の地球に生きる人類として、あらゆる場面で考えてゆくべきことのはずです。この世界の傷み具合は、学校の全科目で前面に押し出して扱ってもおかしくないレベルと言えます。できれば探究授業年間計画に定期的に入れたいくらいの内容ですが、実際の計画では(当然でもありますが)論文作成に向けた流れを最優先としています。今日は、年間数回の貴重なチャンスの1回です。
SDGsは国連の考える「持続可能な開発目標」ということで、その17項目は人間の開発分野全般にわたりますが、そのうちの半数近くが「環境問題」にかかわる分野です。
たまたま、主任の私は三十数年前(ここ春日部東に「人文科」ができるずっと前)、この母校で2年生の頃に、とあるきっかけから環境問題に興味を持ちました。その後、大学は学部こそ英語ですがゼミは「英語で自然について考える」ゼミをとり、環境問題への関心を深めました。就職活動で教員を目指したのも「生徒たちに環境について伝えたい」と考えたからでした。そのあたりはカミングアウト的な話がまだあるのですが、ここでは割愛します。
さて環境問題と一口に言ってしまうと分野が大きすぎて、まとめる際の立ち位置もしっかりせねばなりませんが、今回は、はっきり環境問題に特化して話す初回、と考えますと、私としましては「問題」以前の「本来」をまず知ってほしい、普段何気ない瞬間に本来の環境そのものの「偉大さ」「存在自体の奇跡さ加減」「脆弱さ」に思いを馳せてほしいと考えます。
「地球は、太陽系の中で、どのように惑星になったのか」
「地球の地殻は、大気は、海は、いつ頃どうできたのか」
「最初の生命の誕生する条件はいつ頃どう整ったのか」
「酸素は何者がどう生み出してくれたのか」
「オゾン層はいつ頃どういう経緯でできたのか」
「私達生物はどういう経緯で進化し今こうしているのか」
・・・つまりは我々が今現在、生命としてこの惑星に存在できる根本的な条件は、何のお陰でどのように整ったのか。そして私たちはどこから来たのか。こういった、ある意味「環境の下地に関する一般常識」とも呼べる知識を、まずしっかり確認したいと思いました。
そこで、このために昨年「地球カレンダー」をワークシート化しました。ご興味のある方は是非検索してみてください。「地球カレンダー」とは、地球の誕生から現在までの歴史・・・46億年と言われていますが、この46億年の間に起こった出来事を、1年間365日のカレンダーに換算して当てはめると、何月何日にそれが起こったか分かる。つまり長すぎて見当もつかない46億年そのままで理解するのではなく、長さの見当がつく12か月365日に直して、出来事の間隔やタイミングを把握できる、そういうカレンダーです。
むかし、A3判の紙2枚に365日を入れ込んだプリントは作ったことがありました。昨年、これをA4判1枚に1か月、全部で12枚、プラス12月31日のみを24時間に直したら何時何分に何があったのかで1枚、計13ページ(両面印刷で枚数は半分)のワークシート束に仕立てました。カレンダー内のおもな出来事は、全消しか空欄を設けました。元旦から順番に、途方もない出来事については想像しやすいようにプロジェクターで例の画像を示しながら説明していく、という授業です。昨年わりとうまくいきましたので、今回は少しだけ画像を選びなおしました。
ご想像通り、11月から急に出来事が増えますが、6月まででも重要な出来事はあるにはあります。設けた空欄を全て埋めてもらいながら時間内に全て話せるか、予め「今日は無謀なことをするぞ!」等と言って、時計を見ながら必死で、でもなるべく分かりやすく面白くトークしました!結果としましては今回はギリギリ時間内?なんとか伝わりましたでしょうか。
1月12日(44.5億年くらい前)。地球に小天体が激突して「月が分離」したあたり。
大まじめです、太陽系が生まれるあたりから話し始めましたので。
1月16日(44億年くらい前)。「地殻」の形成の話…の前に、地球の構造と地殻ってなんだ?の話。プレートやら日本列島の地震やら。
私は授業をやっていますので、カメラマンは1年9組副担任のM教諭にお願いしてあります。2年生の様子も撮影をお願いしてありますので、画像は飛び飛びです。
5月31日(27億年くらい前)。シアノバクテリア(藍藻)が、この惑星に初めて「酸素」を放出し始めました。ストロマトライトといって、この藻類が集まって固まったものが化石になって見つかっております。たまに石屋さんで磨いた石玉が打っています。画像は、なんとその頃の様子を現代に伝えていると名高いオーストラリアのハメリンプールという浜の写真です。黒い岩は岩ではなくストロマトライトそのもので、表面の生きた藍藻が陽光を浴びると光合成にて酸素を泡にして放出する様が見られます(現地で生で見たことはありませんが、以前、科学番組で動画で見ました)。
似たような現象で良ければ、よく観察すれば身の回りでも見かけられます。
8月3日(19億年くらい前)。超大陸ヌーナ形成の話ですね。超大陸と言えば「パンゲア」や「ゴンドワナ」が有名でしょうか?ヌーナは地球で最初の超大陸です。地球全体のプレートの動きによって、地球では過去に何度も超大陸が形成されては分裂し、ということを繰り返してきました。
科学の力も大したもので、現在の各大陸がこの時だいたいここにあった、ということすら分かるようですね。
私が授業をやっている写真はここまでです。
ここで、今回の授業に使用した「実例」を写真で紹介します。画像以外にいくつか鉢植えなど本物を見せました。私が生物部の顧問もやっておりますので、ストックからぱっと見つくろって、予め廊下に置いておきました。
まずは「藻類」の見本から。ストロマトライトの化石の磨いた石玉を自宅からもってきても、多分ピンとこないので、仲間は違いますが、多分「緑藻類」の実物です。生物室のとある水槽ではびこっていたので、ペットボトルに汲んできました。写真は時間が経ってから撮影しましたので、大分薄まってしまっていますが、授業で見せた時は濃く新鮮な緑茶にしか見えませんでした。大雑把ですが、地球の海を酸素で満たし、大気にまでふんだんに含ませてくれた種族です。リスペクト!
ここからは、少しストーリー付きで。
11月27日!海の中ではすでに魚類までが進化し繁栄していましたが、この日より2億年ほど前…もとい、2週間ちかく前の11月14日からオゾン層が形成されはじめ、UV対策など色々と準備が整い、27日にようやく植物が上陸に向けて動き出します。まずは浅い海や河口に藻類が、そして次に湿地帯にコケ植物がじわじわと上陸!といっても「湿った環境」までです。ちなみに、動物は一切まだです!
11月28日!植物が(はっきり)初上陸!
この、今より4億年ちょっと前…もとい、「大晦日の現在から1か月と3日前」に初めて上陸した頃と、ほとんど姿を変えずに現在まで生き残っている「生きた化石」が「マツバラン」の仲間です。
一応、広義にシダ植物と分類されていますが、これはかなり大雑把な分け方で、動物でいいますと魚から私達哺乳までまとめた「脊椎動物」と、「エビ」だの「貝」だのまで、ほとんどの動物をいっしょくたにしてしまうくらい適当な分け方です。
もうすでに授業では全然そこまで話していない「ブログネタレベル」になっていますが、ここだけ!古い植物の分類の入り口だけ!ちゃんとすると、
「古マツバラン門」
「ヒカゲノカズラ門」
「トクサ門」
…ツクシンボウは、あれはあの植物の本体でないことはご存じでしょうか。ツクシの本体は「スギナ」という植物で、一度生えると根絶が困難なスーパー雑草です。ツクシは「胞子を散布するための、被子植物でいうところの「花」にあたる器官です。ガーデニングなどやっていると本当にどうしようもない雑草ですが、言い換えれば、数億年もの間姿を変えずかつ大繁栄しているので、地球に活きる生物としては「大当たり」の生体デザインを誇る種族ですね。そのツクシ…もといスギナがいるグループがトクサ門です。写真はトクサの新芽です。
「ハナヤスリ門」
「シダ植物門」
etc…となっております。
このリストはだいたい歴史上も上陸ないし進化してきたグループ順です。トップバッターの「コケより進化しているけど、コケを超える中では一番原始的な植物」であるマツバランは、体の構造もかなり変。土中部分を掘り出しても、まともなシダのようにはっきり根と呼べそうなものはなく、ウネウネと茎らしき構造が這いまわっているだけなのです。
葉っぱもないし。11月28日の陸にはこんなヘンテコな草ばかりが繁茂し、12月3日に大森林が陸に発達するころの植物もまだほとんど「シダ植物門」まで。
現在の森や草原とは、ぱっと見の印象もまったく異なる事でしょう。
ツクシやトクサの化け物の大木が林立していたりとか、
想像するとロマン以外のなにものでもありませんね!
白亜紀あたりになると、裸子植物(種の胚がむき出しの、マツ、スギ、ソテツ、次の画像のイチョウ、etc)
がメインの大森林から、だんだん被子植物も増えてきて、草食の巨大恐竜が食べなれたサラダと違う風味のサラダが増えていきます。その後の氷河期をもって、現代にかけて生態系は被子植物と哺乳類が台頭していきます。
写真ありきのコーナーですので、これはここまで。
最後に、この授業のしめくくり部分の情報を記載します。
12月31日午後11時37分・・・現生人類ホモ・サピエンス登場
12月31日午後11時58分52秒・・・農耕牧畜開始(1万年前)
12月31日午後11時59分46秒・・・キリスト降誕
12月31日午後11時59分56秒・・・ルネッサンス
12月31日午後11時59分58秒・・・産業革命
12月31日午後11時59分59秒・・・20世紀が始まり終わる
…私達人類は今、地球の歴史上何度もあった寒冷化と温暖化の繰り返し…生物の歴史だけで考えてもかつて何度となくあった大絶滅…そのどれとも違う形で、「秒」で地球を暖め、最速で種の絶滅を進めて、自分たちも頼って生きている世界を破壊している、というわけです(白亜紀後期の恐竜大絶滅すら、1種類毎の減少開始から絶滅までの所要時間は、平均で1000年かかった、という説もあります)。
46億年かけて整ったものを、です!
生物として言えば39億年かけて、複数回の巨大隕石激突すら乗り越えて、白亜紀終焉とその後の氷河期から今に至る安定期だけで言っても1億年近くかけて整った生態系を、です!!
SDGs!待ったなしです!
本当は世界のすべての国と地域で一丸となって取り組むべきです。争っている場合ではないはず!
次回のSDGs関連授業では、かつてのアメリカ副大統領アル・ゴア氏による「不都合な真実」を使いたい(=DVD視聴)と考えています!ただ、長いので昨年はいろいろ工夫して3回くらいに分けて見せました。(どうしよう)
2年生 人文科探究個別指導担当者にご挨拶
毎年、人文科の2年生全員を、担任あるいは人文科の教員(主任含め7人)がパワーポイントデータや論文の誤字脱字にいたるまで事細かに指導するのは物理的に無理があります。我々7人にも、通常の授業や部活や学年の仕事などがありますので。そこで、春日部東では、人文科生徒が2年生になると、「各部署の主任級」や「進路指導で通年てんてこまいになる3年生の正担任」等を除く全教員に、お1人につき1名、面倒をみていただいております。
これにつきましても、人文科としてあまり負担を職員間に増すわけにもいきませんので、いただくご指導につきましては原則「生徒の言っていること、作ってきたデータ、書いてきた論文」が、「分かるか、追加で調べたらいいことがあるか、誤字脱字はあるか」くらいとしてあります。我々が言うところの「探究論文」の形になるかは、砦として人文科の担任と主任が指導をするわけですが、例年、先生方には温かいご指導をいただいているところです。
先生方(同じ職場の同僚ですが、今回は敬称な感じで!)には、あらかじめ2年生各自が1年生の末まででなんとか立てた「研究のタイトル名」のみを示して、どの研究をしている生徒を面倒見たいか、希望調査をとります。今年も担任のT教諭が、一任も含め、できるだけ先生方のご希望にそえるよう割り振りを行いました。
この7時間目の時間帯は、普通科でも1年生全クラス、2年生全クラスで通常の授業を行っております。その授業担当が個別指導担当に当たっていれば、この時間には会えませんので、そういう先生が担当になっている生徒は、PC教室に残ってポスターを進めます。
彼らは別でアポをとって合いに行きます。そういったこともトレーニングです。
春日部東には、廊下に面談や1対1での学習指導用に長机が豊富にありますが、各階の長机はご覧の通り。
…さあ、次回にうかがう時は、研究内容のポスター発表会に向けて、ウィンドウズアプリ「パワーポイント」での資料作りが進んだ頃。個別指導では単に作ったものを見ていただくだけではなく、生徒は「アポイントの取り方」「礼儀作法」等も学ぶことになります。大切なことです。2年生諸君、今年も頑張りたまへ。
4月25(火)1年生「ネタ帳を作ろう①」図書室ガイダンス(文献収集に向けて)、2年「ポスター発表に向けて①」
1年生図書室ガイダンス(文献収集に向けて)
普通に図書室ガイダンスと聞くと、多くの高校で例えば国語の授業、あるいはLHRなどをうまく使って、図書館の使い方について説明を受ける時間…というようなイメージを持たれるかと思います。
人文科の生徒にとりまして、しかしこれは特別重要な研修になります。今日もとてもまじめな 「人文科探究」の授業です。何しろ論文完成までフルに2年間…いえ、調べものや読書や学習スペースの利用が習慣化されれば、ここ図書室には入試後の卒業式まで!!お世話になるのですから。論文完成まで上手に時間を使っていけるかどうかは、まさに今日ここにかかっているとも言えます。
レジュメをそのまま掲載するのもなんですので、サブタイトルだけ記します。
1.はじめに
2.なぜ図書館を利用するの?
3.図書館資料の探し方
4.図書館資料の使い方
5.最後に
司書の先生が現S先生に替わって2年目、やっぱり思うのですが、司書の方ってスゴイ!プレゼン用も配布用も、資料がととてもシステマティックかつスタイリッシュ!今年も、プレゼン用のデータは全体向けの表示画面と同じものが生徒各自のiPadに配信されました。遠い人は手元で確認!
この科目のテキストブック「学びの技」も時折開きます。
まずは「論文とはなんぞや」から入り、各自がテーマを決めるのに向けて「ネタ探し」の指南、そして書籍からwebサイトまで現代にある各種情報源の特徴や長所短所について学びました。
次に、図書館の本がそもそもどういった法則で整理され並んでいるのか。これを学ぶためのワークシートが面白い!自分が高校生の時もやってほしかったです!
「日本十進分類法」!用語だけ言われて説明だけ受けても面白くありませんよね。
そこでこのワークシート!中央に自分の興味があるモノを記入し、そこからまずは直接関係がある分野を10個から選び、選んだ分野へ飛びます。次に、飛んだ先の分野がさらに細かく分かれているので、自分が気になる小項目を選んでチェックします。次に、他にも関連がありそうな大分野を残り9つからさらに選び、それぞれで同じ作業をしてみます。
「図書室の本って、こう並んでんだ~」
次に、実際に該当の本棚に赴き、書籍を選んで手に取ってみます。
一見、本屋さんで欲しい本を探すのと同じ作業ですが、ここでは「図書室における書籍、または図書室そのものの在りよう」をきちんと学んでの体験になります。実際、今後本屋さんで本を探すときに、レベルアップした探し方に結びつくといいですね。
この後、各自最低1冊、気になる本をもってきて席に座ります。今度はその書籍の見方について学びます。
人文科探究で多くなる書籍等の利用の仕方は、小説を楽しみながら読むようなものとは異なります。各自の論文について、自分で考えた「疑問(つまり課題)」に対する自分で考えた「仮説」が正しいと証明するための情報が載っているかどうか。そこからその本を利用するかどうかになりますので。
キーワードが司書のS先生からでました。「ぶらぶらブラウジング」。ブラウジングとはパラパラ読みのこと。ネタ探しの段階ではそれでいいのです。中身を深く見る必要はありません。「タイトル」「表紙・裏表紙・帯」「目次・索引・参考文献」「はじめに・おわりに」といった情報をぱーっと見て、何の本なのかだいたい把握する。関係ないと思えば返し、関係ありそうと思えば借りる(買う)。図書室をなにしろぶらついて、んっと思った本を手に取りブラウジング。探究はここから始まります。
とりあえず手元にもってきたら、スキミング(流し読み)やスキャニング(キーワード等の拾い読み)。昨年度、内心これらもキーワード化して欲しい とい思ったのですが(すきすきスキミング、すきゃすきゃスキャニング)、さすがにないですね。
さて、せっかく何かしら興味がある書籍なりを手にしたのですから、これは是非記録に残したいところ。実際、記録に残さなかったがために、「絶対必要な情報なのに、アレ何の本だっけ?webだったっけ?」という状況は、ままあることです。ここでまた特別なワークシートの登場です。
後々に、自分の論文に「参考文献」として引用したり情報を掲載したりしたい、と思った時のために、何をしておくべきか。今目の前にある書籍のどこにどういう情報があり、それをどう見て、どんな情報を記録すればいいか。ワークシートを埋めながら合理的に学びます。
今年も充実した内容でした。これで初めての図書室での「人文科探究」授業は終わりです。あっという間ですね。「書籍を調べる」ゴールデンウイーク課題について指示もありました。終わりの挨拶。みなさんお疲れ様でした。
さて、同時刻に2年生はといいますと、
「ポスター発表準備①」
です。初めて、パソコン室で人文科探究の授業を受けます。そして今年度はほぼここになります。最初ですし、主任の私が授業をさせていただきました。
●ポスターとは?ポスター発表とは?
年度も替わりましたので、あらためまして。
我々の言う「ポスター」とは、献血や緑化のポスターのことではありません。プレゼンテーションのために視覚的に提示したい資料のことで、ウィンドウズのアプリ「パワーポイント」を使って作成します。
また、「ポスター発表」とは、複数の発表者が会場内に散らばってポスターを使用しながら短時間でプレゼンテーションをし、聴衆は数人ずつに分かれて、発表を聞いては移動する、という発表会スタイルのことです。ここ数年つまりコロナ禍とデジタル化の波の中で、人文科のポスター発表会はスタイルが多少変化しておりまして、複数教室に2か所ないし4か所の発表場所を設けて、発表者はクロムブックとプロジェクターを利用してパワーポイントプレゼンテーションをするスタイルになってきました。
一方、生徒が作成するデータはほとんど変わりません。アナログのポスター作りも大切ですので、従来通りやります。基本はA4版の横置きで10枚になります。1枚の模造紙に貼れるポスター枚数ははみ出させても12枚が限度ですが、投映用でしたら時間内に発表さえできれば枚数がもう少し多くても構いません。
残りのポスター関連の情報(生徒に指導した項目)は、以下の様に分類して掲載します。
●ポスター発表の目的
恐らく本来は、例えば会社などで「新商品を開発する」といった時に、企画開発部の人や社内一般にアイディアを公募し、応募者がコンペの日に自分のアイディアを発表していく、といった場面で用いられてきた発表形式なのだと思います。つまりは「完成した発表内容」を「勝負レベル」で発表する、そういう場だと思います。一方、逆の目的で用いられることもあり、人文科の場合はそちらです。
「それまでの研究内容を発表してみて、聴衆の反応をフィードバックし、自分の研究内容の隙や弱点を見つけて改善するために、小規模に発表してみる」
2年生には、この目的を忘れずに頑張ってもらいたいです。
●ポスター作成上の注意点
アプリで作品を作っていると、ついつい、作品自体が目的に感じられてしまうものですが、口酸っぱく伝えました。パワポのポスターは、あくまで発表のための小道具である、と。失敗例をいくつか挙げますと…
・始めに各自に配信する白紙枠にあるサブタイトル(自分の表現に直してよいもの)をそのまま残してしまい、スペースを狭め、そのページ全体の見やすさを損ねている
・重要な文言が小さくて、もくじ文言が太く大きなフォントになっている
・まるで文章化した論文そのものであるかの如く小さな字でこまごまと多くの情報を載せる
・ポスター枚数が論文の本体でなく前置きなどに偏る
・背景色と文字色の組み合わせに、プリントアウト後を考えていない→PC画面は発光体なので、見え方が違う
※ポスターの画像はふんだんにありますが、例え名前を隠しても、見れば本人や友人には誰の作品かはわかってしまいますので、よくない例の実物を掲載するのはやめます。
…こういったことを意識せず作ってしまうと、せっかくの研究内容がちゃんと論展開ができていて、トークも上手なのに、発表時に聴衆はポスターを見なかったり、何処に集中してみればいいか分からなかったりします。あくまでも自分のトーク内容を聴衆に納得させるための要点を「視覚的効果」を意識しながら表示できるといいでしょう。
失敗例を、先輩たちの残してくれた大切な実物を活用して示しました。皆には前にきてもらいました。ステージに数枚ずつ並べて、見比べながら/入れ替えながら、これから作るもののゴールとして実物を示しながら、要改善点を示す形にしましたので、初回として効果的な時間をとれたかな、と思います。今後の皆の取り組みが楽しみです。
4月21日(金)1年生スプリングセミナー
去る4月21日(金)に、人文科独自行事で新入生対象の「スプリングセミナー」を、無事実施できました。
かつては、加須元気プラザにて1泊2日で行っていたものです。新型コロナの影響もあり、また規定により全員参加の宿泊行事は年に1回まで、ということもあり、宿泊の可能性を春に残すか夏(サマースクール)に残すか考えどころ…ということもありますが、とにかくコロナ初年度は中止、そして今年度は校内実施3回目となります。
目的を考えれば、「学年に1クラスしかない学科の新入生として、学習や生活をどのように進めていくべきか、ここで意識を高める」ことももちろんありますが、一番は、やはりこれから2年間学習していく「人文科探究」のオリエンテーション、ということになります。
それでは、実際にどのような6時間であったのか、簡単にですが追体験してみてください!
ようこそ人文科へ! 「令和5年度 人文科1学年 スプリングセミナー」
★1時間目「校長挨拶」「学年主任挨拶」「人文科探究0(ゼロ)」
1.校長挨拶
校長からは、この日の時間割を話題にしていただき、セミナー中の過ごし方や新聞作りについてアドバイスをいただきました。また、陸上競技選手「川内優輝氏」について、校長と彼はたまたま過去に2年間ほど同じ職場で働いたことがあったが、定時制高校の事務職員とマラソンランナーを両立していた彼は、午前中はマラソンの練習をして、昼から出勤すると、退勤まで仕事に没頭していた。大変な切り替え力だった。彼はここ春日部東高校人文科の出身であり、切り替えの力を始め、多くをここ人文科で学んで卒業したのだ、といったお話でした。有名人かと思われた川内選手も、知っているという生徒は少数でしたが、偉大な先輩がいるのだなと認識を改めていました。
2.学年主任挨拶
学年主任のI教諭からは、本校人文科で実施している教育内容が最先端なのだ、という話をいただきました。「探究」という言葉について、高校にある「総合的な探求の時間」も少し前は「総合的な学習の時間」だった、文科省もしきりに探究と言い出しているが、人文科は皆さんで30期生。もうずっと探究に取り組んでいる。折しも昨年度、わざわざ宮城県から本校の探究について研修しにきたくらい。そのくらい最先端の内容を学習する君たちは、ここから日本を変えてもいい!この春日部から、日本を変えてみよう! …といった熱いご挨拶でした!ハードルが上がった…??
ただでさえ高校生活が始まったばかりで不安があるでしょうし、さらに人文科ということで、これからの3年間に水面下で大きな不安を抱えている生徒は存外多いのではと推測します。そんな生徒たちにとって、大変に励みになるお話でした。
3.人文科探究0
いよいよ、人文科主任の授業です。まずはオリエンテーション的な時間を取ります。学校説明会に来たことがあるかどうか尋ねると、多数手が上がりましたので、復習、ということで。
①人文科学とは
せっかく珍しい名前の学科に入学したのですから、まず始めに学科名が冠する用語「人文」科学という用語について確認します。
★科学を3つに大分する場合… 「自然科学」「社会科学」「人文科学」となり、人文科学は「哲学、歴史学、文学、言語学など」を含みます。
★科学を2つに大分する場合…「自然科学」「人文科学」となり、「人文科学」には社会学、経済学、政治学、法学、教育学などから哲学、文学、芸術学、歴史学などの広い分野にわたる学問が含まれ、要するに普段「文系?理系?」と分ける場合に「文系」となる学問はほぼ含まれる、とのことでした。
…このことから本校人文科のカリキュラムを考えてみますと、確かに人文科学に属しそうな教科、英語・国語・地歴公民のいわゆる文系科目が大変に多いです。そこでしかし!それではただの文系じゃないですか、と。(うなずく生徒たち )そこで!満を持して学校設定科目「人文科探究」の登場なのです。
②人文科探究とは
次に、なぜ春日部東高校の先人たちは、ただの文系特化ではなく、人文科探究という科目を設定し、人文科という学科を設置したのでしょう。どんないいことがあるのでしょうか。
ここで、今度は「探究」という用語について確認しました。
★物事の真相・価値・在り方などを深く考えて、すじ道をたどって明らかにすること。
「真相」つまり「それって本当はどうなってるの?」、「価値」つまり「それは何にどう役立つの?」、「在り方」つまり「それって本当にその状態でいいものなの?」といったことを、軽くもやもやとではなく、言葉に直して「深く」考えて、適当ではなく「すじ道」をたどって、論理的に明らかにする…こと。
ふむふむ。
次に、ここ数年、教科書的に使っている書籍「学びの技」(玉川大学出版部)の登場です。
まず始めにこの本の12ページ「column 存在しない職業」を読んでもらいました。
簡単に内容を紹介しますと、アメリカで2011年に小学校に入学した子どもの65%は2027年に当時存在しなかった新しい職業に就くだろう、根拠として人類史上、文化の移り変わりとともに古い職業の消滅と新しい職業の誕生が繰り返されており、現代でそのカギとなるのは人工知能(AI)であると。AIが1000字の内容を50字に要約することができる段階まで進めば、影響を受けない(つまり職を失う心配のない)事務労働者はいない、とのことです。
個人的には、人が社会生活を送るために職業が存在しており、いくら限定場面的に便利な技術革新であっても、AIのような形で無数の人々から生きるすべを奪う技術なら本末転倒、ITも脳や体が発達しきる前に使いすぎると、それらが十分発達しないままになる、つまり人類のアナログ能力は今後どんどん退化する、と思っています。それでも実情は、デジタル化の波から降りることはできず、これからの生徒たちはその時存在する時間の中でこの世界に居場所を確保していかねばなりません。
さて、p12には、答えも紹介されています。 → このような事態にどう対応すればいいのか、その答えが「探究学習」にあります。問題発見能力、その問題の解決に必要な情報の収集・分析・活用、論理的思考や創造的思考をもって問題にあたる能力…こういった、当面の間、AIがとうてい及ばぬ力を、探究学習では育めるのです。
次に、4,5ページ「Did you know?」を読んでもらいました。「2007年に、アメリカのある教師たちが、生徒たちに現代社会の移り変わりの激しさを実感させ、生き方を考えさせるために作った動画」の一部を紹介する記事です。そこには「2006年にインドの大学を卒業した人の英語を話せる率は100%」「英単語の数は54万語を超え、これはシェイクスピア時代の5倍」といった事実がいくつか紹介されています。ブログ読者の皆様はご存じでしたか?私は知りませんでした。
物知りと思われる人々も、確かに常人よりはるかに知識量は多いかもしれませんが、この世界の全てを考えれば、「知っていることに関して知っているだけ」とも言えます。どれほど多くの知識を持っていても、持っているだけなら電子辞書でいいわけでして、上記の黄色マーカー部分のような力、つまり「探究力」は絶対的に欲しい。しかし、たくさん知っていることは悪いことか。それは違いますね。知っていることは多い方がいい、というのも否定されざる事実。インターネットやSNSによって、かつての世界とは比べ物にならないくらいの膨大な情報の海に、我々人類は泳ぎだしました。この海の旅は、常識情報、不要情報、ゴミ情報や危険情報の中から、「探究」に役立つ「自分の興味にかなう情報」「問題解決に役立つ情報」、お宝情報になりうる情報を探す旅のはずです。
「探究」するために「情報を探す旅」に出るには、道しるべも欲しいところですね。「探究0」の授業でかかげるヒントは「情報リテラシー」と「多角的視点」です。情報リテラシーは予定通り2時間目に紹介するとして、多角的視点というものを、少しだけ体験してもらいました。
「幽霊の存在を論理的に否定してみてください。その際、今まで聞いたことのない理由が大歓迎です。近くの人と話してみましょう」
これは、少し盛り上がりました。本来は「幽霊」という用語の定義も必要なのですが、割愛しました。それはおいおい学んでいただきましょう。
「幽霊は実在するのだろうか」という「問い」に対して、私の「仮説」は「いない」です。個人的にオカルトは決して嫌いではありません。いるならいてもいいと思います。私の母は私が小学2年生の時に亡くなりました。その母の若いころの写真を遺影として仏壇に飾っています。私の娘がようやく言葉を発するようになったころ、誰も教えていないのにこの遺影を見て「おばあちゃん」と言いました。赤ん坊の頃、仰向けに寝ていて、誰もいないところを凝視してケタケタ笑っていた、アレは亡くなった母が遊びにきていたのか…なんて…。しかし、私が自分で考えた大きく3つの根拠は、これまで誰からも聞いたことが無く、「多角的視点」ということにおいて自信があります。生徒たちにごく簡単に披露しましたところ、少しウケました!けっこうとっておきのネタですので、ブログでは秘密です!もちろん、幽霊を検証する書籍があれば出て来るでしょうけど…中学3年生のみなさん!春日部東高校人文科にてお待ちしております!!。まだ時間がとれましたので、もう1ネタ、「タイムマシンやテレポート(瞬間移動)を、同様に論理的に否定してみましょう。」これは本邦初公開!出前授業用のネタとしてまだ磨き中のものです。詳細はやっぱりここでは秘密です!
★2時間目「ワークショップ①」
時間枠はワークショップということにしてありますが、前半は「探究0」の続きです。
①SDGsガイダンス
本校人文科におきましては、一昨年から探究活動にSDGsの視点を導入しています。
こだわりすぎると、せっかく柔軟に探究活動を進めていきたいところ、生徒たちが研究テーマとして日常の疑問をリストアップするのに圧をかけてしまいかねません。ですので、自らかかげた疑問が、SDGs17項目で言うとどれに該当しそうか、はっきり該当したらいいね!モヤッとしか該当しなくても、それはそれでいいのですよ、というレベルにしてあります。とは言え、現代社会、いや世界が抱える問題は視野には入れてほしいですし、逆に現代に生きる者として関心を持たなくていい、ということはありません。初日に是非触れたい話題です。
M(ミレニアム)DGsの段階で問題だった世界の共有度を改善し、「誰も置いていかない」スタンスで「持続可能な開発目標」を国連が2015年にかかげて、8年経ちました。達成目標年は2030年、残り7年です。世界が抱える闇を垣間見てみましょう。
私こと人文科主任が、探究0にてまず提示した問題は、「核」です。理由は、人類(いえ、地球の生態系)滅亡の原因にもっとも近い話題でありながら、実情は特定の場面でしか人々が話題にしないからです。保有国のもつ核兵器はもちろん…威力が広島級の6600倍という水爆すら、かつて大気圏内で爆発実験が行われており、日本ならば4、5発で滅ぼしきれる…核戦争になったら地球はいったいどうなってしまうのか…といったことも心配ですが、何の変哲もなく思える日常生活に深く関わっているのが原発問題です。我が家は映画が大好きで、多種多様な映画を見てきましたが、まずどんな「地球規模の災害パニック映画」や「感染型ゾンビパニック映画」にも、いま現在世界に無数にある原子力発電所がその災害でどうなるのかが描かれていません。現実は、「地下に作ってしまった発電施設に津波が入っただけ」で、福島第一原発のあの惨状です。あの原発の被災炉自体と炉に関わる汚染を完全にナシにするには、はれ物に触るようにして数千年かかる、という表現も見たことがあります。数千年後に日本という国は存在するのでしょうか…
この件は核実験の動画を背後に流しつつ口頭で投げかけるだけにして、つぎにiPadの出番です。次の用語を検索して、少し見てもらいました。ブログ読者の皆様も、よろしければ是非検索してみてください。
◆「温暖化が北極圏を壊していく」
◆「中国河川汚染」(画像検索)・・・おっと!閲覧注意なので生徒のiPadでは見られない!?
(◆時間の関係で割愛したのでブログ用ネタ「プラゴミでできた島を国に?」「ファストファッション/南米、衣類廃棄」)
どれにも、凄まじい情報が見て取れます。それでも、SDGsで掲げる17項目で言えば、環境問題系のいくつかであるだけです(情報が事実かどうかの問題は「情報(メディア)リテラシー」のコーナーで)。また、17項目はそれぞれ単独に存在するわけではなく、ほとんどが相互に関わっていることもポイントですね。
単純に、どうやら私たちの生きる世界は、かつてないほどのとんでもない闇を抱えている、ということが見えてきました。それでも、私たちはこの世界で、存在する今の時間を、そしてこれからを、生きていきます!しかもできれば楽しく!そのために、そして子々孫々が存続していけるように、やっと、やっと世界が手を取り合って現実に目を向け始め、間に合うのかおそばせながらでも一歩踏み出した、その表れがSDGsと言えます。
でも、まだ話題にしなければならない大問題があります!
1つは、そう、新型コロナです。自然が好きで、自然保護に少々偏った感覚を持っていた私などからすれば非常にショッキングなことなのですが、まさか、経済というものが人間にとってこれほどに重要なものだとは…それもこれも、我々が「人間」であるから。価値観の違う相手を否定したくても、その先には戦争しかなく、平和のうちに解決するには、どうにかして全ての人が納得できるようにしなければならない…暮らしが立ち行かないようでは、環境保護どころではない、それではsustainableなdevelopmentはできない…この3年間、それをマザマザと見せつけられました。SDGsの前進にとっては大打撃ですよね。
と思っていたら、2つ目は、ロシアのウクライナ侵攻です。昨年度もこの場で話しましたが、なんとなんとの1年以上続いてしまっている悲劇…教育公務員ですので政治的な意見は申し上げませんが、単純な事実として、やはりこれも大打撃です。歴史の教科書に載るはずの、大型隕石衝突級の事件のダブルパンチ。おおおぉ…、なんということ…
以上、私たちが「今」生きている世界のことです。私は、生徒たちは、皆さまは、どうしましょう/どうしますか?
今、やれること、やるべきことをやる。本校人文科の生徒は、高校生として、春日部東高校人文科生徒として、健全に「探究」活動を進める。そして、その中で進めた研究が、もしも何かの形でSDGsに貢献できたら、それは素晴らしいことですね。はっきりSDGsに分類しにくい、例えば前半に出した「幽霊」のような研究でも、例えばもしも高校で生徒の間で「幽霊騒ぎ」が起こって、それが健全な学校生活に支障をきたすような状況になった時に、思い込みや固定観念の外側から多角的視点で論じた根拠によって、生徒あるいは教育環境に安心材料を提供することになれば、人の役に立ったことになります。最小単位でいけば、研究した内容を誰かが「ふーん、へええ、そうかぁ」と思ってくれたならそれで充分です。探究活動は論文を1本完成させて終わるものではなく、探究マインドを育んで、それをもって、これから各自が歩む人生の中で世界と渡り合っていくためにやるのですから!
②情報(メディア)リテラシー
1時間目に提示した、情報の海をうまく渡っていくためのもう一つの指標です。まずは英語のお話をしました。
◆media (仲介)マスメディア、マスコミ
※mass 塊、大量の~
◆literacy 読み書き能力
◆派生語:literal文字通りの literally文字通りに
literary文学の literarily文学的には
literature文学 etc
…出所はコトバンクのブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より、「メディアリテラシー」の解説です。
◆メディアリテラシー media literacy : メディアの特性を理解して使いこなす複合的な能力。(中略)情報がもたらす影響を予測する能力,双方向コミュニケーションにおけるいろいろなトラブルを処理・回避する能力などである。(後略)(是非、検索してみてください)
…世の中に溢れる情報は、全て元は誰かが発信したものであり、「誰か」が人間である以上、発信された情報には「間違い」や「悪意」は必ず存在し得ます。今回のウクライナの件で、「プロパガンダ」という用語も頻繁に耳にするようになりました。また当然、情報を受け止める側にも「間違い」や「悪意」は存在し得ます。「炎上」というワードもすっかり新しい用語という感じはしなくなりました。
ちょうど、SDGsの時間に検索してもらった「温暖化が北極圏を壊していく」ですが、これで共有したあるサイトは海外のビジネスマン向けのもので、非常に「ちゃんとした」サイトに思えます。ところが、そこにある1つの情報に、
◆グリーンランドと北極の氷床を合わせると、地球上の真水の99%以上を占める。
という一節があるのですが、私の認識では、北極の氷は海水を多く含む氷で、南極の氷は大陸に乗った真水の氷、のはずです。これはどういうことでしょうか。このサイトを日本語に翻訳する係が、ArcticとAntarcticaを間違えて翻訳したのか、それともこの一節自体が「間違い」なのか、「私が間違っている」のか。
こういったことはしょっちゅうあります。私は自分の興味関心から生物系の情報を頻繁に検索・閲覧しますが、そこら辺の方々がほいほい自由にアップした個人的なサイトは、はっきり言って間違いだらけです!その上、由緒正しそうでも、例えば各新聞社には各新聞社の、各放送局には各放送局の「カラー」や主義・方向性があります。政府には政府の、そして私にも「春日部東高校人文科に前向きな興味を持った中学3年生が大勢受験しに来て倍率を争ってほしい」という意図がありますあしからず。受け止める側は、誰がどこで発信した情報で、それをどこまで信用するのか、特に探究活動においては気を付けたいところです。
そこで、入学当初に生徒たちに注意ですが、メディアリテラシーの一環で、情報はできるだけちゃんとした書籍から得るようにしてほしいと思います。情報発信元があやふやな雑誌類や、不特定多数が上書き可能な「まとめサイト」等は、探究活動においては信頼度が低いのです。
③「じんぶんしんぶん」作成に向けて
ここからワークショップの導入部分です。
「じんぶんしんぶん」とは、ここ数年、人文科で壁新聞を作成する際に使っている仮名称です。授業では過去に先輩たちが作成した実例をいくつか示しました。班ごとに新聞名はパンチやユーモアを利かせます。
始めに、人文科探究初回で壁新聞を作る意味を紹介します。大きく2つ述べました。
1つ目は、自分たちで記事集めから編集会議を経て新聞を作成することで、作り手側の意図が分かるようになり、そうなれば読み手として能動的・客観的に新聞を読めるようになる、です。
もう1つは、テキスト「学びの技」の8ページから。そこには「探究学習のステップ」が円状の図になっているのですが、ここでは箇条書きにて紹介します。
New
→ 周辺知識を得る (好奇心を持つ。興味深いアイディアを発見する。)
→ 議論(問い)を決める (多角的に見る。)
→ 情報を収集する (重要な情報をさらに集める。)
→ 情報を取捨選択する (不要な情報は捨てる。)
→ 論理的にまとめる (集めた情報を意味付ける。)
→ 発表する (学びを共有する。)
→ 評価する (最終成果と探究過程を振り返る。)
→ Next (次の研究へ)
…壁新聞作りは、2年間かけて大きく一巡する予定のこの流れを、ダイジェスト版で体験できるのです。
「なので、3時間目から5時間目にかけてやるワークショップ「じんぶんしんぶん」作りは、そのつもりでやってください。」
ここで、新聞の豆知識を紹介しました。
・読売新聞の「読み」「売り」という呼称の由来は?(江戸時代のかわら版の売り方から・・・)
・新聞社は1日にどのくらいの紙を使っている?(地球を1週するにちかいくらい・・・)
・なぜ新聞の切断辺はギザギザなのか(極めて短時間に厚みのある紙束を一発できれいに切断したい・・・)
この辺りで、さすがに班を作った方が説明しやすくなりますので、4人1組で10班、班を作りました。5時間目までは班活動になります。
各班に同じ日付の新聞4社分を配布し(春日部東では全教室に毎日4社分の新聞が配られますので、予約の上、主に1、2年生の教室から前日分をいただくのです )、その中から私のほうで1社選び、各班でそれを中央に置き、全員で共有しました。そして、1面から注意深く、全体の構成や記事以外の記載情報、記事が下段に飛ぶ際の書式などを、改めて観察してみました。せっかくですから、「号数を365で割ると、だいたい何年くらい続いている新聞かわかる」ことや、「なぜ3面が社会面であるのか」「全く同じ日付・時間の新聞でも、工場で膨大な部数を刷っている間に新しい情報が追加されるので、版数を見ると何回情報が刷新されたかわかる。初回が12版となっているので、14版であれば同じ新聞でもすでに2回情報が新しくなっていることがわかる」などの豆知識も紹介しました。
最後に10分ほどとれましたので、各班で1人1部新聞をとり、じっくり見てもらいました。特定の記事に入り込んでいくのも構いませんが、まずは「全体のレイアウト」「サブタイトルの様子」「欄外の細かい情報」「広告の入り方」など、それこそ「多角的視点」で見て欲しい所です。
…主任の出番はここまでです。3時間目からは、いよいよ担任のY教諭の登場です。
★3時間目~5時間目「ワークショップ②③④ じんぶんしんぶん作り」
本校勤務2年目のY教諭、今年度私が声掛けが遅れて、かなり短時間でセミナーの授業の準備をするはめになってしまったのですが、巧みにモチベーション作りから考えてきてくれました。
後で問い合わせたところ、厚労省で出している情報から、とのことでした。
「企業が求める力」
生徒に聞いたところ、「発想力」や、中には「企業の犬をやる力?」のような面白い回答まで出ましたが、
1位:コミュニケーション力
2位:基礎学力
3位:責任感
4位:積極性・外向性
5位:資格
6位:行動力、実行力
とのことでした。これから、せっかくグループで学習活動をするのだから、これらの中の特に1位のコミュニケーション力や4位の積極性・外向性などを、是非発揮して頑張ろう、とのことでした。
また、AIは「質問に答えてくれる」が、「問いを考えることはできない」…なるほど!ということことから、探究を頑張ろう、と。
ここで、ここから3時間かけてやる壁新聞作りの流れをざっと紹介します。
①まず各自で自分の興味のある記事を探して切り取る。
②SDGsに関連があればSDGs付箋、関連が良く分からなければ普通の付箋を貼り、コメントを記入する。
③次に、班内で自分の選んだ記事についてミニプレゼンをし合う。
④編集会議を開き、班ごとの壁新聞の名称を決める。
⑤自分たちの新聞の方向性も含めて、各自が選んだ記事のどれを採用するか話し合う。
⑥掲載する記事が決定したら、各自が納得できるように全体のレイアウトを決める。
⑦実際に糊付けする。
⑧仕上げに、模様や写真、ロゴ、コメント、追加記事などを加えて充実させる。
⑨班内で壁新聞のプレゼン練習をし、他班へ発表する際の主旨を共有する。
⑩担任のタイムキープと全体4回のローテーションで全員が1回ポスター発表する。
⑪プレゼンを聞いたり、やったりした反省点や気づいた点を振り返りシートに記録する。
…ところどころに入るアドバイスも含め、ツボをおさえた明確な説明のお陰で、生徒たちは初めての活動をスムーズに行えました。発表に際してはテキスト「学びの技」にて「ポスター発表(ここで採用している発表会の形式名)」の上手なやり方・受け方をさらい、また生徒たちの積極性や元気の良さも相まって、今回のプレゼンも非常にうまくいったように感じました。発表が聞き取りにくい場合に、口頭で言わなくても聴衆がちらっと提示して発表者が気が付いて改善できるようにと準備した「聞こえません棒」というツールも、一応今年も全員に持たせたのですが、それを使う場面は見受けませんでした。
まずは、各自、興味のある記事を探します。せっかくなので、SDGsの視点で探してみよう、とのこと。
次に、班内で自分の選んだ記事をプレゼンし合います。
・・・もう、この段階でとっくに活発です!いい!
編集会議の様子です。活動の最も本体ともいえる部分、コマ送り的に全体が進んでいくさまが分かるよう、写真を沢山用意しました。次の区切りまで流してみてください。
お昼休みを挟んで5時間目、いよいよプレゼンタイム。
まずは「学びの技」にて、プレゼンの流儀や目的についてさらいます。
「本番」では、孤独に班員から離れ、1人で他班の人に向けて自分たちが作った新聞について発表します。その前に、まずは班内で、自分たちの壁新聞のプレゼン練習をします。
班ごとに新聞の主旨や限られた時間で紹介する内容の共有をしました。
そして、いよいよ他班の人の前で、自分の班で作った壁新聞をプレゼンします。各班、4人いますので、発表ローテーションは4回。発表の番が来たら、自分の班の新聞が掲示してある場所へ戻ります。一方、聞く側は、同じ班の発表の番の者をのぞく3人でまとまって、ローテーションごとに左隣の班の発表を聞くために移動していきます。発表を聞きながら、振り返りシートを持参して、「気になった記事、発表者の意見、自分の感想」を記入していきます。
ここでちょっと裏方の様子。この後の6時間目OBOG講演会に向け、30分程度前には講師の卒業生たちがこうして控室に集合しています。私のクラスから卒業したメンバー達!私はセミナー会場とここを行ったり来たりしましたが、彼らは始めは懐かしく近況報告など楽しんでいました。出番が近づくにつれ、なんだか緊張してきた??
佳境の新聞プレゼンに戻りましょう。
昨年度、人文科フェアにて「うちの子に発表なんてできるのだろうか」と大変ご心配なさっていた保護者の方がいらっしゃいましたが、まさに心配ご無用です!大丈夫です!始めからみんな立派な事!
…こうして、3時間分の「じんぶんしんぶん作り」は大成功でした。さあ、2年間、探究活動をおおいに楽しもう!
★6時間目「OGOB講演会」
最後は恒例の「人文科卒業生のお話を聞く」時間です。
今年は、Aさん、Bさん、C君、D君の4名が参加してくださいました。
4人とも、ちょうど1年前、私のクラスを卒業した大学2年生です。皆様、初回授業の時期で条件の厳しい中、ご参加くださいました。皆、もう高校生が私服を着ているのとはまるで異なる大人ぶりでした。私事ですが、こうした生徒さんたちの卒業後の成長ぶりに触れられるのが、この職業の醍醐味の1つでございます。
4人の先輩方にはまず、現在の大学生活の様子を紹介していただきました。それから、高校時代にやっておけばよかったこと、また「人文科あるある」などアドバイスをいただきました。
「暗記物は1年生からやっておくべき」
「何を勉強するか迷ったら英単語」
「隙間時間の活用」
「部活は最後まで頑張ろう」
「探究のネタは常にストックしよう」
「考え付いた事をメモする習慣を」
「考えることをやめないで」
「お手元の『学びの技』は、大学に行っても使えます、人文科探究が終わっても捨てない方がいい」
今年の4名も、話してくれた内容は極めて貴重で、もと担任としては本当にいいクラスに恵まれたなとあらためて実感した次第です。一般の講演会講師と主催者も同じでしょうが、こういった行事ですから、事前にあまり「あれは是非言ってくれ」「あれは言うな、これも言うな」というふうに仕込むべきではないですし、いざ会が始まってしまえば、話し中の方を遮るのも、聴衆からしたら恣意的に感じられてしまいますし。それでも招待した講演者を信頼して現場に臨むわけですが、何と言いますか、言葉に直してしまうとどうしても多少の語弊はあると思いますが、「期待以上」の内容でした(それも言ってくれるのか!それもその形で話題にしてくれるのか!願ったりかなったり)!彼ら卒業生の後輩を面倒見ていく現場にとりまして、誠に有難い、力のある内容でした。『『そうだよ!そうだよね!その通り!そうなんだよ1年生!』』感謝です。皆さん、どんどん成長して立派になっていきますね!とても感慨深かったです。
毎年のことですが、卒業生の言葉には、同じような当たり前のコメントでも、我々教職員とはまた違う重みと実感があり、当然ながら現役生は食いつきます。大変有意義な1コマとなりました。号令とお礼の挨拶ののち、私が先輩たちを控室に誘導し、生徒たちは時間まで1日の感想・反省を入力し、今年度のスプリングセミナーは幕を閉じました。主任も担任もホっとしました。
ダソクですが、生徒が1年9組に移動した後、卒業生にはここL.L.教室の片づけを手伝っていただきました。前日に仕込んでおいた新聞掲示用のマグネットやら、セミナーのロゴやら、工作道具、プレゼン道具などを集めて、一緒に人文科資料室に運んでいただきました。(こういう状況がもうウレシイ。)
卒業生が「先生も入れて集合写真を撮りましょう」とまた嬉しい提案をしてくれたので、お手すきの職員が近くを通りかかるまで、しばしおしゃべりタイム。数日前の人文科対面式で使用したトークリンクカードについて話題にして懐かしんでいましたので、さっそく1セット出してあげると、なんとその場で4人でやり始めました。間もなくシャッターを押していただける先生をつかまえてお願いし、幸せなひと時も無事終了しました。