4月15日(金) スプリングセミナー! (前半のレポート、後半もこうご期待)
去る4月15日(金)に、今年度初の人文科独自行事、新入生対象の「スプリングセミナー」を、無事実施できました。
かつては、加須元気プラザにて1泊2日で行っていたものです。新型コロナの影響もあり、また規定により全員参加の宿泊行事は年に1回まで、ということもあり、宿泊の可能性を春に残すか夏(サマースクール)に残すか考えどころ…ということもありますが、とにかくコロナ初年度は中止、そして昨年度は1日のみで校内実施、今年度もやはり校内実施で1日のみ、でした。
目的を考えれば、「学年に1クラスしかない学科の新入生として、学習や生活をどのように進めていくべきか、ここで意識を高める」ことももちろんありますが、一番は、やはりこれから2年間学習していく「人文科探究」のオリエンテーション、ということになります。
それでは、実際にどのような6時間であったのか、簡単にですが追体験してみてください!
ようこそ人文科へ! 「令和4年度 人文科1学年 スプリングセミナー」
★1時間目「校長挨拶」「学年主任挨拶」「人文科探究0(ゼロ)」
1.校長挨拶
校長からは、現在学芸大にお勤めで、かつて本校人文科1期生で、実は校長が当時本校で部活で面倒を見た方と、少し前に仕事上でやり取りする機会があり、そのことでその方から届いたお礼のお手紙についてのお話でした。その方が、校長は記憶も遠く薄れてしまっていた当時の「選手紹介のプリント」を数十年も大切に保管しており、それを今回お手紙に同封してこられ、感激し感慨深かった、といったお話でした。
本校46期生、人文科では29期生の人たちにも、こういった温かい「一期一会の再交差」があるといいですね。
2.学年主任挨拶
学年主任のN教諭からは、本校人文科で実施している教育内容が、現代を生きる者に絶対に必要な力を育ててくれる内容であり、普通科でも(諸条件が可能なら)やりたいくらいだ、といったお話をいただきました。
ただでさえ高校生活が始まったばかりで不安があるでしょうし、さらに人文科ということで、これからの3年間に水面下で大きな不安を抱えている生徒は存外多いのではと推測します。そんな生徒たちにとって、大変に励みになるお話でした。
3.人文科探究0
①人文科学とは
いよいよ、新米人文科主任の出番です!
ここから5時間目までは、「班活動」としました。4人1班で8班作りました。
じっくり導入します。せっかく珍しい名前の学科に入学したのですから、まず始めに「人文科学」という用語について調べてみました。今年の新入生から、全員がiPadを持っています(!)。インターネットで「人文科学」という用語を検索し、「コトバンク」というサイトの情報を共有してみました。それによると(簡単には)…
★科学を3つに大分する場合… 「自然科学」「社会科学」「人文科学」となり、人文科学は「哲学、歴史学、文学、言語学など」を含みます。
★科学を2つに大分する場合…「自然科学」「人文科学」となり、社会学、経済学、政治学、法学、教育学などから哲学、文学、芸術学、歴史学などの広い分野にわたる学問を含む、とのことでした。
…このことから本校人文科のカリキュラムを考えてみますと、確かに人文科学に属しそうな教科、英語・国語・地歴公民のいわゆる文系科目が大変に多いです。そこでしかし!それではただの文系じゃないですか、と。(うなずく生徒たち)そこで!満を持して学校設定科目「人文科探究」の登場なのです
②人文科探究とは
次に、なぜ春日部東高校の先人たちは、ただの文系特化ではなく、人文科探究という科目を設定し、人文科という学科を設置したのでしょう。どんないいことがあるのでしょうか。
ここで再びiPadの出番。今度は「探究」という用語を検索してもらいました。
・物事の真相・価値・在り方などを深く考えて、すじ道をたどって明らかにすること。
・思考によって論証したり問題解決を図ったりすること、あるいは、論証や問題解決のために深く思考すること。
ふむふむ。
次に、ここ数年、教科書的に使っている書籍「学びの技」(玉川大学出版部)の登場です。
まず始めにこの本の12ページ「column 存在しない職業」を読んでもらいました。
簡単に内容を紹介しますと、アメリカで2011年に小学校に入学した子どもの65%は2027年に当時存在しなかった新しい職業に就くだろう、根拠として人類史上、文化の移り変わりとともに古い職業の消滅と新しい職業の誕生が繰り返されており、現代でそのカギとなるのは人工知能(AI)であると。AIが1000字の内容を50字に要約することができる段階まで進めば、影響を受けない(つまり職を失う心配のない)事務労働者はいない、とのことです。
個人的には、人が社会生活を送るために職業が存在しており、いくら限定場面的に便利な技術革新であっても、AIのような形で無数の人々から生きるすべを奪う技術なら本末転倒、ITも脳や体が発達しきる前に使いすぎると、それらが十分発達しないままになる、つまり人類のアナログ能力は今後どんどん退化する、と思っています。それでも実情は、デジタル化の波から降りることはできず、これからの生徒たちはその時存在する時間の中でこの世界に居場所を確保していかねばなりません。
さて、p12には、答えも紹介されています。 → このような事態にどう対応すればいいのか、その答えが「探究学習」にあります。問題発見能力、その問題の解決に必要な情報の収集・分析・活用、論理的思考や創造的思考をもって問題にあたる能力…こういった、当面の間、AIがとうてい及ばぬ力を、探究学習では育めるのです
次に、4,5ページ「Did you know?」を読んでもらいました。「2007年に、アメリカのある教師たちが、生徒たちに現代社会の移り変わりの激しさを実感させ、生き方を考えさせるために作った動画」の一部を紹介する記事です。そこには「2006年にインドの大学を卒業した人の英語を話せる率は100%」「英単語の数は54万語を超え、これはシェイクスピア時代の5倍」といった事実がいくつか紹介されています。ブログ読者の皆様はご存じでしたか?私は知りませんでした。
物知りと思われる人々も、確かに常人よりはるかに知識量は多いかもしれませんが、この世界の全てを考えれば、「知っていることに関して知っているだけ」とも言えます。どれほど多くの知識を持っていても、持っているだけなら電子辞書でいいわけでして、上記の黄色マーカー部分のような力、つまり「探究力」は絶対的に欲しい。しかし、たくさん知っていることは悪いことか。それは違いますね。知っていることは多い方がいい、というのも否定されざる事実。インターネットやSNSによって、かつての世界とは比べ物にならないくらいの膨大な情報の海に、我々人類は泳ぎだしました。この海の旅は、常識情報、不要情報、ゴミ情報や危険情報の中から、「探究」に役立つ「自分の興味にかなう情報」「問題解決に役立つ情報」、お宝情報になりうる情報を探す旅のはずです。
「探究」するために「情報を探す旅」に出るには、道しるべも欲しいところですね。「探究0」の授業でかかげるヒントは「情報リテラシー」と「多角的視点」です。1時間目の時間はあと10分。情報リテラシーは予定通り2時間目に紹介するとして、多角的視点というものを、ギリギリでしたが体験してもらいました。
「幽霊の存在を否定してみてください。その際、今まで聞いたことのない理由が大歓迎です。」
これは、各班、少し盛り上がりました。本当は各班の意見を聞いてみるつもりでしたが、時間が少々おしました。本来は「幽霊」という用語の定義も必要なのですが、割愛しました。それはおいおい学んでいただきましょう。
「幽霊は実在するのだろうか」という「問い」に対して、私の「仮説」は「いない」です。個人的にオカルトは決して嫌いではありません。いるならいてもいいと思います。(時間制限のないブログ用のネタですが、私の母は私が小学2年生の時に亡くなりました。その母の若いころの写真を遺影として仏壇に飾っています。私の娘がようやく言葉を発するようになったころ、誰も教えていないのにこの遺影を見て「おばあちゃん」と言いました。赤ん坊の頃、仰向けに寝ていて、誰もいないところを凝視してケタケタ笑っていた、アレは亡くなった母が遊びにきていたのか…なんて…)しかし、私が自分で考えた大きく3つの根拠は、これまで誰からも聞いたことが無く、「多角的視点」ということにおいて自信があります。生徒たちに披露しましたところ、まだ生徒たちは静かにしている時期ですので、少しウケました!そしてそれらによって、どうやら幽霊の存在は強力に否定できそうです(けっこうとっておきのネタですので、ブログでは秘密です!もちろん、幽霊を検証する書籍があれば出て来るでしょうけど…中学3年生のみなさん!春日部東高校人文科にてお待ちしております!!)。
この根拠から、仮説の証明に使える参考文献の分野は「脳科学」や「心理学」と言えそうです。そうなれば、それらの書籍を図書室を中心に探し、書籍の中に「ほら!」と使えそうな情報があれば正しい作法で引用して、学術論文の書式で論文を書く。「そういったことを皆さん2年間で体験するんですよ!」というところで1時間目終了です。(休み時間に盛り上がる生徒たち)
続く!