人文科ブログ

5月16日(火) 1年生「多面的思考トレーニング」 2年生「ポスター作り3回目」

5月16日(火) 

1年生 多面的思考トレーニング

  1年生の1学期は、「探究マインド育成」「研究対象模索」が大きな目標です。

スプリングセミナーで新入生に周知した、探究活動に欲しい指針「メディアリテラシー」と「多面的思考」。今日は多面的思考のトレーニングです。

 世の中にある未解決の問題について、過去の人々と同じようにしか考えられないと、過去の人々がすでに考えて試してうまくいかなかったのと同じアイディアしか浮かびません。そして問題はやっぱり解決できないでしょう。

 同じ問題を、これまでと違う角度から見てみる。「奇をてらう」とも違う。話題性やユーモア、周囲の反応が目的でその場限りの言葉遊びをするのとは違う。でも場合により、段階により、一見「奇をてらっている」としか周囲が思えないようなアイディアが解決の突破口になることもあるかもしれませんね。多面的思考ができない人は、できる人のいう事を前向きに理解すること自体、できないのかもしれません。

 今回は昨年同様、小難しくならないように、楽しめるように、「頭の体操」的な問題を用意しました。生徒たちには5,6人の班を8班作ってもらい、班ごとに制限時間を切って解答を考えてもらいました。

 

 以下が、問題と「多面的に見てほしいポイント」「解答」「生徒の様子」です。5番以外はそれぞれ1,2分、5番は5分で、班ごとに答えを考えてもらいました。

 

1.次の図で、川の対岸のA地点からB地点まで川に対して直角に橋を架ける場合、どのように架ければ最短で両地点を結べますか?

 (※肝心の図の画像が無いので、言葉で説明します。真っすぐな川があり、川の対岸(上側)の左の方にA地点、こちら側(下側)の右の方にB地点を設けます。両地点の水平方向の距離は、川幅の6~7倍あります。)

●ポイント:橋の形状については、川に垂直であれ、という以外言われていない。街中で、道路の下をドブレベルの幅が狭い川が通る場合、どんな様子になるか。橋の幅の方が川幅より狭くなる、という先入観に気が付けるか。

●解答:A地点からB地点まで覆う、幅の広~い橋を架ければよい。

●様子:今年は正式に解答にこぎつけたられた班はありませんでした。ただ、どの班も活発に話し合って、何班か答えを発表してくれました。中には、カクカク直角に曲がった橋を思いついた班もありました。

 

2.柱2本とハンモック1つの「ハンモックセット」が5セットありますが、1セットが不良品で、柱が1本しか入っていません。5セットすべて問題なく使うには、どうしたらいいですか。

●ポイント:逆に5セット分の部品を全て使わねばならない、とは言われていない。部品をセット間で共有してはならない、とも言われていない。

●解答:不良品セットと完品セット1つを合わせ、柱を1本共有すれば、柱3本でハンモック2つをぶら下げられる。さらに言えば、5セットを円形に配置すれば、柱は全部で5本でもハンモック5つ全て使える。

●様子:これは複数の班が正当にたどり着きました。すばらしい!

 

 

3.つまようじ6本を折らずに使って同じ大きさの正三角形を4つ作りなさい。ようじは重ねてはいけない。

●ポイント:平面で解決しなさい、とは言われていない。2次元と3次元の間に横たわる先入観。

●解答:正三角錐を作る。

●様子:これは、昨年度に条件をいくつか付け忘れて持っていかれたので、今年はバッチリ。こちらの勝ちでした。なにしろ活発なので、複数の班がいくつか案を述べてくれました。最後は皆、多角的視点というものを実感してくれたように感じました。

 

4.マッチ棒4本を折らずに使って、田の字を作りなさい。

●ポイント:マッチ棒は平面に並べろ、とは言われていない。~の字を作れ、という表現はあいまいで、例えばミッキーマークのような幅があり得る。

●解答:マッチ棒には、断面が四角い木片が使われている。4本のマッチ棒を束ねて火薬部分ではない側を見ると、四角い断面が田の字に並ぶ。

●様子:これは、生徒の勝ちでした。もっともずるい、一休さんや彦一のような「とんち」の範疇の問題でしたが、2,3班が早々に「~だ!」と盛り上がって、指名した班長も解答を板書してくれました。お見事!。

※授業では言いませんでしたが、時間制限のないブログ用のネタ

 昔、センター試験だか共通一次試験だかの理科の問題で、何かの条件で温度を計算させる問題だったと思いますが、これに対してある受験生が「温度計を使う」と答えて物議をかもした記憶があります。顛末は覚えておりませんが、問題の意図や目的は「多面的思考」ではなく「理科分野の知識や計算技術」を問うもののはずですから、問題文に温度計を使うな、となくても不正解でいいと思います。今でも職業柄、問題を作成する立場でもありますから、問題文には気を付けたり、テスト前後に意図や常識などもコメントしたりします。

 

さあ、ここからは、現実にあったことをネタに、真面目?にいきます。

 

4.ある県内の市で、市内のカブトムシのいなくなった森に、養殖したカブトムシを数百匹放しました。このことについて「問題点」を発見し、「解決策」を考えなさい。

●ポイント:なぜ「いなくなった」のか。森に放した目的は何か。放されたカブトムシはどうなるのか。

●解答:市は、カブトムシがいなくなった原因を考慮しているとは思えない。また、カブトムシが定着あるいは生存する見込みがない状態での放虫は目的が不明であり、目的がどうあれ、いなくなった原因をただしてから放虫すべきである。

●様子:これはいくつかの班で、こちらの意図した思考をと逆の発想をしてくれて、興味深かったです。カブトムシを、環境に圧を加える問題生物と捉えたりと、思考ステップを踏んでの思わぬ展開。全体的に活発に話し合いが行われ、嬉しい限りでした。

ブログ用解説(6割は授業で早口で話しました)

 カブトムシがいなくなった原因は、温暖化が原因かもしれない「林内の乾燥」もありますが、一番は「木々が樹液を出さなくなった」ことにあります。「樹液」は木の「傷口」から出るもので、「傷口」は「治るもの」です。まず近年、木々に傷自体があまりつきません。理由は、木々の傷はカミキリムシ、タマムシ、コメツキムシなどの昆虫によるものであり、そういう昆虫がまず減少しています。さらに正常な状態の自然では、ボクトウガという蛾の肉食の幼虫が、樹液に集まる小さな虫などを捕食する都合で、猟場である「傷」が治るのを、傷口を定期的にいじって阻止することで樹液が長期間流れるのです。ちなみにこの蛾の幼虫は、自分では樹皮に初期の傷は設けられません。

 何千万年か分かりませんが、こうした環境が悠久に継続したからこそ、「樹液をほぼ専食する」カブトムシ、クワガタムシ、カナブン等が進化してきたわけです。しかし現在、このボクトウガもほとんど見かけません。結果、やっとついた木の傷からせっかく樹液が出ても、傷はすぐふさがってしまうし、近年の夏の暑さでは林床までカサカサ、樹液も8月どころか7月下旬も待たずに乾いてしまいます。

 あともっと直接的な人間の仕業として、市民の森のような一般人が遊歩道で入り込めるエリアにある樹木の樹液には、市町村の職員がスズメバチ対策で乾燥剤や毒液を散布しますや。恐らく自然を都合よくしかとらえられない一部の市民が苦情を訴えるのでしょう。住宅地の自宅の庭じゃないのに。森なのに。スズメバチを先に見つける技、避ける技、急に出会っても怒らせない技を身につけるか、嫌なら森には行かない事。これが筋だと思うのが私の持論でゴザイマス。

 十数年前のことですが、埼玉県内のS市は、餌のない森にカブトムシを放虫して、何がしたかったのでしょう。カブトムシが取れる森にしたかったのでしょうか。それとも潮干狩り用に作った砂浜に養殖アサリを撒くように、ひと夏子どもたちに虫取りできる森を提供したかったのでしょうか。いずれにしましても、その触覚に樹液のにおいを一切感じられないカブトムシたちは、2日と待たずこの森から飛び去ったでしょうね。

 これが鯉の放流などになると、もっとひどい話になります。「〇〇市では、市民と共同で養殖した鯉の稚魚を、魚のいなくなった××川に放流しました。」鯉自体が一部の地域や亜種を除き実は厳密には外来種であり、また人間が都合で仕切った「国」の中でも、もともといなかった地域へ国内から新しく生物を移動定着させると、これは「国内外来種」となり、環境破壊の一環となります。コイは頑丈で繁殖力旺盛で獰猛で、世界的に猛威を振るっています。鯉の増えた水域では他の動物への圧はすさまじいものですから。

 

最後の問題です。

 

5.信号機付きの横断歩道で、通行人がギリギリの駆け込み横断をするのを防止するためのアイディアを話し合って考えなさい(実際に実用化されているものです)。

●ポイント:罰や物理的なハードルでなく、人に駆け込みをさせる心境に着目できるか。「あとどのくらい待たされるか分からない不安」に気が付けるか。

 

 ●解答:歩行者用信号の待ち時間表示の中央に人型のアイコンがあり、この人型アイコンが待ち時間の間「ダンスする」。ヨーロッパのある国で実際に採用された工夫で、人型のダンスはなんと録画やアニメ動画の連続再生ではなく、近くのブース内で係が実際にやっているダンスに人型アイコンの動きが連動する仕組みで、ダンスの動きがしょっちゅう変わるので信号待ちの人々が飽きずに見られる、というもの。

●様子:これは、全班に解答をききました。頭がほぐれた感じの、面白い案がたくさん出ました。やはり考えが至らないのは、その案を実現するための費用や人材等ですね。最も本筋の解答は、「歩行者用信号機に、赤信号でも青信号でも「残り時間」「待ち時間」が分かるようなカウントダウン形式の表示を設ける。」でした。これはしかし、すでに広く実用化されていますので、ベストアンサーではありませんが、発想を褒めました。素晴らしいです!

 ここで、発想の転換の実例を紹介しました。

 オーストラリアかニュージーランドだったと思います。ある郊外の道路で、雨天時にスリップ事故が多発する場所があり、そこに苦慮の末、注意を促す標識を設置した、という話。この標識、「雨天スリップ注意」「事故多発地点」「この先急カーブ」等の文言はなく、幼い女の子の顔が大きく描かれており、晴天時はただそれだけのものなのですが、雨天時はなんとなんと!!女の子の両目から赤い液体が流れる仕組みが!私はこれをテレビ番組で見て、血の涙を流すマリア像やキリスト像の話を思い出しました。初めて見るドライバーはさぞ肝をつぶしたことでしょう。また状況的に「見慣れる」ことは考えにくいので同じドライバーにも長期にわたり有効でしょう。雨天時スリップ事故は激減したそうです。まさに「標識」の「常識」を覆す多面的思考が成功した好例だと思います。

 

 最後に、偉人たちが残した「発想力が鍛えられる名言・格言21選」のプリントを配布し、いくつか選んでコメントしました。是非すべて読んで、なんでしたら座右の銘にしてほしいですね。

 例えば、

ピカソ「子供は誰でも芸術家だ。問題は大人になっても、芸術家でいられるかどうかだ。」

ジャック・ロンドン「ひらめきがやってくるのを待ってはいられない。棍棒を持って追いかけるしかない。」

エジソン「ほとんどすべての人は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。いよいよこれからだというのに・・・」

本物?は、違いますね(決して上からではなく、自ら同じような心境にどのくらい到達できたことがあるか考え、やはりそこまでは思い至らない自分を見つめてのため息)。

 

2年生「ポスター作り3回目」

 今回はまた私は授業者ということで、同じ時間の2年生の様子を覗きに行けませんでした。今回、1年生の担任のY教諭に撮影をお願いしてありましたので、短時間抜けだして2年生の様子も撮影してきてもらいました。

 見た目はやはり地味なデスクワークですが、ちゃんと必要な時間を取って必要な活動をしていますので、手短に様子の紹介です。

おおっ!画像を確認していて、嬉しい発見!昨年度、授業の様子を撮影に行くと、いつも素敵な笑顔でブログ用に愛想を振りまいてくれたKさん、健在じゃないですか!Y教諭、ありがとうございます!当然、登場してもらいます。

さあ、ポスター発表まで2か月ありません、みんな頑張れ!