4月21日(金)1年生スプリングセミナー
去る4月21日(金)に、人文科独自行事で新入生対象の「スプリングセミナー」を、無事実施できました。
かつては、加須元気プラザにて1泊2日で行っていたものです。新型コロナの影響もあり、また規定により全員参加の宿泊行事は年に1回まで、ということもあり、宿泊の可能性を春に残すか夏(サマースクール)に残すか考えどころ…ということもありますが、とにかくコロナ初年度は中止、そして今年度は校内実施3回目となります。
目的を考えれば、「学年に1クラスしかない学科の新入生として、学習や生活をどのように進めていくべきか、ここで意識を高める」ことももちろんありますが、一番は、やはりこれから2年間学習していく「人文科探究」のオリエンテーション、ということになります。
それでは、実際にどのような6時間であったのか、簡単にですが追体験してみてください!
ようこそ人文科へ! 「令和5年度 人文科1学年 スプリングセミナー」
★1時間目「校長挨拶」「学年主任挨拶」「人文科探究0(ゼロ)」
1.校長挨拶
校長からは、この日の時間割を話題にしていただき、セミナー中の過ごし方や新聞作りについてアドバイスをいただきました。また、陸上競技選手「川内優輝氏」について、校長と彼はたまたま過去に2年間ほど同じ職場で働いたことがあったが、定時制高校の事務職員とマラソンランナーを両立していた彼は、午前中はマラソンの練習をして、昼から出勤すると、退勤まで仕事に没頭していた。大変な切り替え力だった。彼はここ春日部東高校人文科の出身であり、切り替えの力を始め、多くをここ人文科で学んで卒業したのだ、といったお話でした。有名人かと思われた川内選手も、知っているという生徒は少数でしたが、偉大な先輩がいるのだなと認識を改めていました。
2.学年主任挨拶
学年主任のI教諭からは、本校人文科で実施している教育内容が最先端なのだ、という話をいただきました。「探究」という言葉について、高校にある「総合的な探求の時間」も少し前は「総合的な学習の時間」だった、文科省もしきりに探究と言い出しているが、人文科は皆さんで30期生。もうずっと探究に取り組んでいる。折しも昨年度、わざわざ宮城県から本校の探究について研修しにきたくらい。そのくらい最先端の内容を学習する君たちは、ここから日本を変えてもいい!この春日部から、日本を変えてみよう! …といった熱いご挨拶でした!ハードルが上がった…??
ただでさえ高校生活が始まったばかりで不安があるでしょうし、さらに人文科ということで、これからの3年間に水面下で大きな不安を抱えている生徒は存外多いのではと推測します。そんな生徒たちにとって、大変に励みになるお話でした。
3.人文科探究0
いよいよ、人文科主任の授業です。まずはオリエンテーション的な時間を取ります。学校説明会に来たことがあるかどうか尋ねると、多数手が上がりましたので、復習、ということで。
①人文科学とは
せっかく珍しい名前の学科に入学したのですから、まず始めに学科名が冠する用語「人文」科学という用語について確認します。
★科学を3つに大分する場合… 「自然科学」「社会科学」「人文科学」となり、人文科学は「哲学、歴史学、文学、言語学など」を含みます。
★科学を2つに大分する場合…「自然科学」「人文科学」となり、「人文科学」には社会学、経済学、政治学、法学、教育学などから哲学、文学、芸術学、歴史学などの広い分野にわたる学問が含まれ、要するに普段「文系?理系?」と分ける場合に「文系」となる学問はほぼ含まれる、とのことでした。
…このことから本校人文科のカリキュラムを考えてみますと、確かに人文科学に属しそうな教科、英語・国語・地歴公民のいわゆる文系科目が大変に多いです。そこでしかし!それではただの文系じゃないですか、と。(うなずく生徒たち )そこで!満を持して学校設定科目「人文科探究」の登場なのです。
②人文科探究とは
次に、なぜ春日部東高校の先人たちは、ただの文系特化ではなく、人文科探究という科目を設定し、人文科という学科を設置したのでしょう。どんないいことがあるのでしょうか。
ここで、今度は「探究」という用語について確認しました。
★物事の真相・価値・在り方などを深く考えて、すじ道をたどって明らかにすること。
「真相」つまり「それって本当はどうなってるの?」、「価値」つまり「それは何にどう役立つの?」、「在り方」つまり「それって本当にその状態でいいものなの?」といったことを、軽くもやもやとではなく、言葉に直して「深く」考えて、適当ではなく「すじ道」をたどって、論理的に明らかにする…こと。
ふむふむ。
次に、ここ数年、教科書的に使っている書籍「学びの技」(玉川大学出版部)の登場です。
まず始めにこの本の12ページ「column 存在しない職業」を読んでもらいました。
簡単に内容を紹介しますと、アメリカで2011年に小学校に入学した子どもの65%は2027年に当時存在しなかった新しい職業に就くだろう、根拠として人類史上、文化の移り変わりとともに古い職業の消滅と新しい職業の誕生が繰り返されており、現代でそのカギとなるのは人工知能(AI)であると。AIが1000字の内容を50字に要約することができる段階まで進めば、影響を受けない(つまり職を失う心配のない)事務労働者はいない、とのことです。
個人的には、人が社会生活を送るために職業が存在しており、いくら限定場面的に便利な技術革新であっても、AIのような形で無数の人々から生きるすべを奪う技術なら本末転倒、ITも脳や体が発達しきる前に使いすぎると、それらが十分発達しないままになる、つまり人類のアナログ能力は今後どんどん退化する、と思っています。それでも実情は、デジタル化の波から降りることはできず、これからの生徒たちはその時存在する時間の中でこの世界に居場所を確保していかねばなりません。
さて、p12には、答えも紹介されています。 → このような事態にどう対応すればいいのか、その答えが「探究学習」にあります。問題発見能力、その問題の解決に必要な情報の収集・分析・活用、論理的思考や創造的思考をもって問題にあたる能力…こういった、当面の間、AIがとうてい及ばぬ力を、探究学習では育めるのです。
次に、4,5ページ「Did you know?」を読んでもらいました。「2007年に、アメリカのある教師たちが、生徒たちに現代社会の移り変わりの激しさを実感させ、生き方を考えさせるために作った動画」の一部を紹介する記事です。そこには「2006年にインドの大学を卒業した人の英語を話せる率は100%」「英単語の数は54万語を超え、これはシェイクスピア時代の5倍」といった事実がいくつか紹介されています。ブログ読者の皆様はご存じでしたか?私は知りませんでした。
物知りと思われる人々も、確かに常人よりはるかに知識量は多いかもしれませんが、この世界の全てを考えれば、「知っていることに関して知っているだけ」とも言えます。どれほど多くの知識を持っていても、持っているだけなら電子辞書でいいわけでして、上記の黄色マーカー部分のような力、つまり「探究力」は絶対的に欲しい。しかし、たくさん知っていることは悪いことか。それは違いますね。知っていることは多い方がいい、というのも否定されざる事実。インターネットやSNSによって、かつての世界とは比べ物にならないくらいの膨大な情報の海に、我々人類は泳ぎだしました。この海の旅は、常識情報、不要情報、ゴミ情報や危険情報の中から、「探究」に役立つ「自分の興味にかなう情報」「問題解決に役立つ情報」、お宝情報になりうる情報を探す旅のはずです。
「探究」するために「情報を探す旅」に出るには、道しるべも欲しいところですね。「探究0」の授業でかかげるヒントは「情報リテラシー」と「多角的視点」です。情報リテラシーは予定通り2時間目に紹介するとして、多角的視点というものを、少しだけ体験してもらいました。
「幽霊の存在を論理的に否定してみてください。その際、今まで聞いたことのない理由が大歓迎です。近くの人と話してみましょう」
これは、少し盛り上がりました。本来は「幽霊」という用語の定義も必要なのですが、割愛しました。それはおいおい学んでいただきましょう。
「幽霊は実在するのだろうか」という「問い」に対して、私の「仮説」は「いない」です。個人的にオカルトは決して嫌いではありません。いるならいてもいいと思います。私の母は私が小学2年生の時に亡くなりました。その母の若いころの写真を遺影として仏壇に飾っています。私の娘がようやく言葉を発するようになったころ、誰も教えていないのにこの遺影を見て「おばあちゃん」と言いました。赤ん坊の頃、仰向けに寝ていて、誰もいないところを凝視してケタケタ笑っていた、アレは亡くなった母が遊びにきていたのか…なんて…。しかし、私が自分で考えた大きく3つの根拠は、これまで誰からも聞いたことが無く、「多角的視点」ということにおいて自信があります。生徒たちにごく簡単に披露しましたところ、少しウケました!けっこうとっておきのネタですので、ブログでは秘密です!もちろん、幽霊を検証する書籍があれば出て来るでしょうけど…中学3年生のみなさん!春日部東高校人文科にてお待ちしております!!。まだ時間がとれましたので、もう1ネタ、「タイムマシンやテレポート(瞬間移動)を、同様に論理的に否定してみましょう。」これは本邦初公開!出前授業用のネタとしてまだ磨き中のものです。詳細はやっぱりここでは秘密です!
★2時間目「ワークショップ①」
時間枠はワークショップということにしてありますが、前半は「探究0」の続きです。
①SDGsガイダンス
本校人文科におきましては、一昨年から探究活動にSDGsの視点を導入しています。
こだわりすぎると、せっかく柔軟に探究活動を進めていきたいところ、生徒たちが研究テーマとして日常の疑問をリストアップするのに圧をかけてしまいかねません。ですので、自らかかげた疑問が、SDGs17項目で言うとどれに該当しそうか、はっきり該当したらいいね!モヤッとしか該当しなくても、それはそれでいいのですよ、というレベルにしてあります。とは言え、現代社会、いや世界が抱える問題は視野には入れてほしいですし、逆に現代に生きる者として関心を持たなくていい、ということはありません。初日に是非触れたい話題です。
M(ミレニアム)DGsの段階で問題だった世界の共有度を改善し、「誰も置いていかない」スタンスで「持続可能な開発目標」を国連が2015年にかかげて、8年経ちました。達成目標年は2030年、残り7年です。世界が抱える闇を垣間見てみましょう。
私こと人文科主任が、探究0にてまず提示した問題は、「核」です。理由は、人類(いえ、地球の生態系)滅亡の原因にもっとも近い話題でありながら、実情は特定の場面でしか人々が話題にしないからです。保有国のもつ核兵器はもちろん…威力が広島級の6600倍という水爆すら、かつて大気圏内で爆発実験が行われており、日本ならば4、5発で滅ぼしきれる…核戦争になったら地球はいったいどうなってしまうのか…といったことも心配ですが、何の変哲もなく思える日常生活に深く関わっているのが原発問題です。我が家は映画が大好きで、多種多様な映画を見てきましたが、まずどんな「地球規模の災害パニック映画」や「感染型ゾンビパニック映画」にも、いま現在世界に無数にある原子力発電所がその災害でどうなるのかが描かれていません。現実は、「地下に作ってしまった発電施設に津波が入っただけ」で、福島第一原発のあの惨状です。あの原発の被災炉自体と炉に関わる汚染を完全にナシにするには、はれ物に触るようにして数千年かかる、という表現も見たことがあります。数千年後に日本という国は存在するのでしょうか…
この件は核実験の動画を背後に流しつつ口頭で投げかけるだけにして、つぎにiPadの出番です。次の用語を検索して、少し見てもらいました。ブログ読者の皆様も、よろしければ是非検索してみてください。
◆「温暖化が北極圏を壊していく」
◆「中国河川汚染」(画像検索)・・・おっと!閲覧注意なので生徒のiPadでは見られない!?
(◆時間の関係で割愛したのでブログ用ネタ「プラゴミでできた島を国に?」「ファストファッション/南米、衣類廃棄」)
どれにも、凄まじい情報が見て取れます。それでも、SDGsで掲げる17項目で言えば、環境問題系のいくつかであるだけです(情報が事実かどうかの問題は「情報(メディア)リテラシー」のコーナーで)。また、17項目はそれぞれ単独に存在するわけではなく、ほとんどが相互に関わっていることもポイントですね。
単純に、どうやら私たちの生きる世界は、かつてないほどのとんでもない闇を抱えている、ということが見えてきました。それでも、私たちはこの世界で、存在する今の時間を、そしてこれからを、生きていきます!しかもできれば楽しく!そのために、そして子々孫々が存続していけるように、やっと、やっと世界が手を取り合って現実に目を向け始め、間に合うのかおそばせながらでも一歩踏み出した、その表れがSDGsと言えます。
でも、まだ話題にしなければならない大問題があります!
1つは、そう、新型コロナです。自然が好きで、自然保護に少々偏った感覚を持っていた私などからすれば非常にショッキングなことなのですが、まさか、経済というものが人間にとってこれほどに重要なものだとは…それもこれも、我々が「人間」であるから。価値観の違う相手を否定したくても、その先には戦争しかなく、平和のうちに解決するには、どうにかして全ての人が納得できるようにしなければならない…暮らしが立ち行かないようでは、環境保護どころではない、それではsustainableなdevelopmentはできない…この3年間、それをマザマザと見せつけられました。SDGsの前進にとっては大打撃ですよね。
と思っていたら、2つ目は、ロシアのウクライナ侵攻です。昨年度もこの場で話しましたが、なんとなんとの1年以上続いてしまっている悲劇…教育公務員ですので政治的な意見は申し上げませんが、単純な事実として、やはりこれも大打撃です。歴史の教科書に載るはずの、大型隕石衝突級の事件のダブルパンチ。おおおぉ…、なんということ…
以上、私たちが「今」生きている世界のことです。私は、生徒たちは、皆さまは、どうしましょう/どうしますか?
今、やれること、やるべきことをやる。本校人文科の生徒は、高校生として、春日部東高校人文科生徒として、健全に「探究」活動を進める。そして、その中で進めた研究が、もしも何かの形でSDGsに貢献できたら、それは素晴らしいことですね。はっきりSDGsに分類しにくい、例えば前半に出した「幽霊」のような研究でも、例えばもしも高校で生徒の間で「幽霊騒ぎ」が起こって、それが健全な学校生活に支障をきたすような状況になった時に、思い込みや固定観念の外側から多角的視点で論じた根拠によって、生徒あるいは教育環境に安心材料を提供することになれば、人の役に立ったことになります。最小単位でいけば、研究した内容を誰かが「ふーん、へええ、そうかぁ」と思ってくれたならそれで充分です。探究活動は論文を1本完成させて終わるものではなく、探究マインドを育んで、それをもって、これから各自が歩む人生の中で世界と渡り合っていくためにやるのですから!
②情報(メディア)リテラシー
1時間目に提示した、情報の海をうまく渡っていくためのもう一つの指標です。まずは英語のお話をしました。
◆media (仲介)マスメディア、マスコミ
※mass 塊、大量の~
◆literacy 読み書き能力
◆派生語:literal文字通りの literally文字通りに
literary文学の literarily文学的には
literature文学 etc
…出所はコトバンクのブリタニカ国際大百科事典 小項目事典より、「メディアリテラシー」の解説です。
◆メディアリテラシー media literacy : メディアの特性を理解して使いこなす複合的な能力。(中略)情報がもたらす影響を予測する能力,双方向コミュニケーションにおけるいろいろなトラブルを処理・回避する能力などである。(後略)(是非、検索してみてください)
…世の中に溢れる情報は、全て元は誰かが発信したものであり、「誰か」が人間である以上、発信された情報には「間違い」や「悪意」は必ず存在し得ます。今回のウクライナの件で、「プロパガンダ」という用語も頻繁に耳にするようになりました。また当然、情報を受け止める側にも「間違い」や「悪意」は存在し得ます。「炎上」というワードもすっかり新しい用語という感じはしなくなりました。
ちょうど、SDGsの時間に検索してもらった「温暖化が北極圏を壊していく」ですが、これで共有したあるサイトは海外のビジネスマン向けのもので、非常に「ちゃんとした」サイトに思えます。ところが、そこにある1つの情報に、
◆グリーンランドと北極の氷床を合わせると、地球上の真水の99%以上を占める。
という一節があるのですが、私の認識では、北極の氷は海水を多く含む氷で、南極の氷は大陸に乗った真水の氷、のはずです。これはどういうことでしょうか。このサイトを日本語に翻訳する係が、ArcticとAntarcticaを間違えて翻訳したのか、それともこの一節自体が「間違い」なのか、「私が間違っている」のか。
こういったことはしょっちゅうあります。私は自分の興味関心から生物系の情報を頻繁に検索・閲覧しますが、そこら辺の方々がほいほい自由にアップした個人的なサイトは、はっきり言って間違いだらけです!その上、由緒正しそうでも、例えば各新聞社には各新聞社の、各放送局には各放送局の「カラー」や主義・方向性があります。政府には政府の、そして私にも「春日部東高校人文科に前向きな興味を持った中学3年生が大勢受験しに来て倍率を争ってほしい」という意図がありますあしからず。受け止める側は、誰がどこで発信した情報で、それをどこまで信用するのか、特に探究活動においては気を付けたいところです。
そこで、入学当初に生徒たちに注意ですが、メディアリテラシーの一環で、情報はできるだけちゃんとした書籍から得るようにしてほしいと思います。情報発信元があやふやな雑誌類や、不特定多数が上書き可能な「まとめサイト」等は、探究活動においては信頼度が低いのです。
③「じんぶんしんぶん」作成に向けて
ここからワークショップの導入部分です。
「じんぶんしんぶん」とは、ここ数年、人文科で壁新聞を作成する際に使っている仮名称です。授業では過去に先輩たちが作成した実例をいくつか示しました。班ごとに新聞名はパンチやユーモアを利かせます。
始めに、人文科探究初回で壁新聞を作る意味を紹介します。大きく2つ述べました。
1つ目は、自分たちで記事集めから編集会議を経て新聞を作成することで、作り手側の意図が分かるようになり、そうなれば読み手として能動的・客観的に新聞を読めるようになる、です。
もう1つは、テキスト「学びの技」の8ページから。そこには「探究学習のステップ」が円状の図になっているのですが、ここでは箇条書きにて紹介します。
New
→ 周辺知識を得る (好奇心を持つ。興味深いアイディアを発見する。)
→ 議論(問い)を決める (多角的に見る。)
→ 情報を収集する (重要な情報をさらに集める。)
→ 情報を取捨選択する (不要な情報は捨てる。)
→ 論理的にまとめる (集めた情報を意味付ける。)
→ 発表する (学びを共有する。)
→ 評価する (最終成果と探究過程を振り返る。)
→ Next (次の研究へ)
…壁新聞作りは、2年間かけて大きく一巡する予定のこの流れを、ダイジェスト版で体験できるのです。
「なので、3時間目から5時間目にかけてやるワークショップ「じんぶんしんぶん」作りは、そのつもりでやってください。」
ここで、新聞の豆知識を紹介しました。
・読売新聞の「読み」「売り」という呼称の由来は?(江戸時代のかわら版の売り方から・・・)
・新聞社は1日にどのくらいの紙を使っている?(地球を1週するにちかいくらい・・・)
・なぜ新聞の切断辺はギザギザなのか(極めて短時間に厚みのある紙束を一発できれいに切断したい・・・)
この辺りで、さすがに班を作った方が説明しやすくなりますので、4人1組で10班、班を作りました。5時間目までは班活動になります。
各班に同じ日付の新聞4社分を配布し(春日部東では全教室に毎日4社分の新聞が配られますので、予約の上、主に1、2年生の教室から前日分をいただくのです )、その中から私のほうで1社選び、各班でそれを中央に置き、全員で共有しました。そして、1面から注意深く、全体の構成や記事以外の記載情報、記事が下段に飛ぶ際の書式などを、改めて観察してみました。せっかくですから、「号数を365で割ると、だいたい何年くらい続いている新聞かわかる」ことや、「なぜ3面が社会面であるのか」「全く同じ日付・時間の新聞でも、工場で膨大な部数を刷っている間に新しい情報が追加されるので、版数を見ると何回情報が刷新されたかわかる。初回が12版となっているので、14版であれば同じ新聞でもすでに2回情報が新しくなっていることがわかる」などの豆知識も紹介しました。
最後に10分ほどとれましたので、各班で1人1部新聞をとり、じっくり見てもらいました。特定の記事に入り込んでいくのも構いませんが、まずは「全体のレイアウト」「サブタイトルの様子」「欄外の細かい情報」「広告の入り方」など、それこそ「多角的視点」で見て欲しい所です。
…主任の出番はここまでです。3時間目からは、いよいよ担任のY教諭の登場です。
★3時間目~5時間目「ワークショップ②③④ じんぶんしんぶん作り」
本校勤務2年目のY教諭、今年度私が声掛けが遅れて、かなり短時間でセミナーの授業の準備をするはめになってしまったのですが、巧みにモチベーション作りから考えてきてくれました。
後で問い合わせたところ、厚労省で出している情報から、とのことでした。
「企業が求める力」
生徒に聞いたところ、「発想力」や、中には「企業の犬をやる力?」のような面白い回答まで出ましたが、
1位:コミュニケーション力
2位:基礎学力
3位:責任感
4位:積極性・外向性
5位:資格
6位:行動力、実行力
とのことでした。これから、せっかくグループで学習活動をするのだから、これらの中の特に1位のコミュニケーション力や4位の積極性・外向性などを、是非発揮して頑張ろう、とのことでした。
また、AIは「質問に答えてくれる」が、「問いを考えることはできない」…なるほど!ということことから、探究を頑張ろう、と。
ここで、ここから3時間かけてやる壁新聞作りの流れをざっと紹介します。
①まず各自で自分の興味のある記事を探して切り取る。
②SDGsに関連があればSDGs付箋、関連が良く分からなければ普通の付箋を貼り、コメントを記入する。
③次に、班内で自分の選んだ記事についてミニプレゼンをし合う。
④編集会議を開き、班ごとの壁新聞の名称を決める。
⑤自分たちの新聞の方向性も含めて、各自が選んだ記事のどれを採用するか話し合う。
⑥掲載する記事が決定したら、各自が納得できるように全体のレイアウトを決める。
⑦実際に糊付けする。
⑧仕上げに、模様や写真、ロゴ、コメント、追加記事などを加えて充実させる。
⑨班内で壁新聞のプレゼン練習をし、他班へ発表する際の主旨を共有する。
⑩担任のタイムキープと全体4回のローテーションで全員が1回ポスター発表する。
⑪プレゼンを聞いたり、やったりした反省点や気づいた点を振り返りシートに記録する。
…ところどころに入るアドバイスも含め、ツボをおさえた明確な説明のお陰で、生徒たちは初めての活動をスムーズに行えました。発表に際してはテキスト「学びの技」にて「ポスター発表(ここで採用している発表会の形式名)」の上手なやり方・受け方をさらい、また生徒たちの積極性や元気の良さも相まって、今回のプレゼンも非常にうまくいったように感じました。発表が聞き取りにくい場合に、口頭で言わなくても聴衆がちらっと提示して発表者が気が付いて改善できるようにと準備した「聞こえません棒」というツールも、一応今年も全員に持たせたのですが、それを使う場面は見受けませんでした。
まずは、各自、興味のある記事を探します。せっかくなので、SDGsの視点で探してみよう、とのこと。
次に、班内で自分の選んだ記事をプレゼンし合います。
・・・もう、この段階でとっくに活発です!いい!
編集会議の様子です。活動の最も本体ともいえる部分、コマ送り的に全体が進んでいくさまが分かるよう、写真を沢山用意しました。次の区切りまで流してみてください。
お昼休みを挟んで5時間目、いよいよプレゼンタイム。
まずは「学びの技」にて、プレゼンの流儀や目的についてさらいます。
「本番」では、孤独に班員から離れ、1人で他班の人に向けて自分たちが作った新聞について発表します。その前に、まずは班内で、自分たちの壁新聞のプレゼン練習をします。
班ごとに新聞の主旨や限られた時間で紹介する内容の共有をしました。
そして、いよいよ他班の人の前で、自分の班で作った壁新聞をプレゼンします。各班、4人いますので、発表ローテーションは4回。発表の番が来たら、自分の班の新聞が掲示してある場所へ戻ります。一方、聞く側は、同じ班の発表の番の者をのぞく3人でまとまって、ローテーションごとに左隣の班の発表を聞くために移動していきます。発表を聞きながら、振り返りシートを持参して、「気になった記事、発表者の意見、自分の感想」を記入していきます。
ここでちょっと裏方の様子。この後の6時間目OBOG講演会に向け、30分程度前には講師の卒業生たちがこうして控室に集合しています。私のクラスから卒業したメンバー達!私はセミナー会場とここを行ったり来たりしましたが、彼らは始めは懐かしく近況報告など楽しんでいました。出番が近づくにつれ、なんだか緊張してきた??
佳境の新聞プレゼンに戻りましょう。
昨年度、人文科フェアにて「うちの子に発表なんてできるのだろうか」と大変ご心配なさっていた保護者の方がいらっしゃいましたが、まさに心配ご無用です!大丈夫です!始めからみんな立派な事!
…こうして、3時間分の「じんぶんしんぶん作り」は大成功でした。さあ、2年間、探究活動をおおいに楽しもう!
★6時間目「OGOB講演会」
最後は恒例の「人文科卒業生のお話を聞く」時間です。
今年は、Aさん、Bさん、C君、D君の4名が参加してくださいました。
4人とも、ちょうど1年前、私のクラスを卒業した大学2年生です。皆様、初回授業の時期で条件の厳しい中、ご参加くださいました。皆、もう高校生が私服を着ているのとはまるで異なる大人ぶりでした。私事ですが、こうした生徒さんたちの卒業後の成長ぶりに触れられるのが、この職業の醍醐味の1つでございます。
4人の先輩方にはまず、現在の大学生活の様子を紹介していただきました。それから、高校時代にやっておけばよかったこと、また「人文科あるある」などアドバイスをいただきました。
「暗記物は1年生からやっておくべき」
「何を勉強するか迷ったら英単語」
「隙間時間の活用」
「部活は最後まで頑張ろう」
「探究のネタは常にストックしよう」
「考え付いた事をメモする習慣を」
「考えることをやめないで」
「お手元の『学びの技』は、大学に行っても使えます、人文科探究が終わっても捨てない方がいい」
今年の4名も、話してくれた内容は極めて貴重で、もと担任としては本当にいいクラスに恵まれたなとあらためて実感した次第です。一般の講演会講師と主催者も同じでしょうが、こういった行事ですから、事前にあまり「あれは是非言ってくれ」「あれは言うな、これも言うな」というふうに仕込むべきではないですし、いざ会が始まってしまえば、話し中の方を遮るのも、聴衆からしたら恣意的に感じられてしまいますし。それでも招待した講演者を信頼して現場に臨むわけですが、何と言いますか、言葉に直してしまうとどうしても多少の語弊はあると思いますが、「期待以上」の内容でした(それも言ってくれるのか!それもその形で話題にしてくれるのか!願ったりかなったり)!彼ら卒業生の後輩を面倒見ていく現場にとりまして、誠に有難い、力のある内容でした。『『そうだよ!そうだよね!その通り!そうなんだよ1年生!』』感謝です。皆さん、どんどん成長して立派になっていきますね!とても感慨深かったです。
毎年のことですが、卒業生の言葉には、同じような当たり前のコメントでも、我々教職員とはまた違う重みと実感があり、当然ながら現役生は食いつきます。大変有意義な1コマとなりました。号令とお礼の挨拶ののち、私が先輩たちを控室に誘導し、生徒たちは時間まで1日の感想・反省を入力し、今年度のスプリングセミナーは幕を閉じました。主任も担任もホっとしました。
ダソクですが、生徒が1年9組に移動した後、卒業生にはここL.L.教室の片づけを手伝っていただきました。前日に仕込んでおいた新聞掲示用のマグネットやら、セミナーのロゴやら、工作道具、プレゼン道具などを集めて、一緒に人文科資料室に運んでいただきました。(こういう状況がもうウレシイ。)
卒業生が「先生も入れて集合写真を撮りましょう」とまた嬉しい提案をしてくれたので、お手すきの職員が近くを通りかかるまで、しばしおしゃべりタイム。数日前の人文科対面式で使用したトークリンクカードについて話題にして懐かしんでいましたので、さっそく1セット出してあげると、なんとその場で4人でやり始めました。間もなくシャッターを押していただける先生をつかまえてお願いし、幸せなひと時も無事終了しました。