5月29日(月)1年生「SDGs関連学習②」2年生「ポスター作り4回目」
5月29日(月)
1年生「SDGs関連学習②」
人文科探究=1単位の授業(週1回の授業)で、扱いたいことは山盛りです。それぞれのテーマを十分に扱うことは、正直できません。貴重な授業機会を、できるだけ確実な「とっかかり」にするしかありません。
SDGsに特化した時間は、取れて年間数回。時代柄、すでにこのテーマは多くの教科の教材にもある程度入り込んできておりますが、私が気になるのは、ある意味「商標化してしまっていないか」ということです。
SDGsは人類にとっての持続可能な開発目標ですから、17項目にはもちろん環境問題以外の分野も含まれていますが、私はここ人文科では、分野を環境問題に絞った上で「そもそもなぜ環境を保護する必要があるのか」、言い換えれば「環境とは何か」を大事にしたいです。そしてそこからの「今、何が起こっているのか」だと考えています。
初回では、この地球の環境の成り立ちを、「地球カレンダー」を使って、ものすごく駆け足ですが、さらってみました。
今回は、なんと前回、このテーマで話をする上で初めて(個人的には就職以来、何度も話してきた内容なのです)力強く訴えることを忘れてしまった「ある事実」から、話を始めました。焼きが回った、というやつでしょうか…。
今回見せる動画が「温暖化」についてのものなので、かえっていいおさらいになりましたが。
「太陽のような、自ら光る『恒星』は、誕生から悠久の時を経て超新星として大爆発して、光すら出ていけない超重力の存在『ブラックホール』、または『白色矮星』になって寿命を終えるまで、僅かずつではありますが段々と大きくなり続け、温度も上昇を続けるものだとのこと。我々の『太陽』は寿命半ばを過ぎたくらいとのこと。
つまり、太陽から地球までの距離が変わらないなら、太陽の膨張と温度上昇に合わせて、地球の平均気温も太古の昔から現在までにかけて、上昇を続けているはず。
ところが、科学の力で分かっていることとして、もう何億年も地球の平均気温はほとんど変わらずにきている、ということがあります。これはなぜなのか。
ちなみに地球に大気が生まれた頃、大気成分はなんと98%が二酸化炭素。その頃はそれくらいの割合で大気中に温室効果ガスがあって、はじめて絶対零度の宇宙空間で今と同じくらいの平均気温を保てたわけです。さもなくば地球は星ごと凍り付いてしまいす。…さて、現在の大気の組成は?二酸化炭素の割合は何%?その変化は何のお陰?」
現在、大気成分のうち、最も存在感のある温室効果ガス「二酸化炭素」は1%以下です。そしてそれが現在はちょうどいい組成の割合なのです。昔98%もあったものを、誰がこのちょうどいい1%以下にまで減らしてくれたのか。それは植物です!
この話は、すぐ気が付くこととして、億年単位でみれば破綻がきます。植物の存在を考えれば、この温室効果ガスはナシにはできませんが、太陽の温度上昇を考えれば、二酸化炭素を含めた温室効果ガスは総量としてこれからもずっと減らし続けねばならない。生命の存在する星「宇宙船地球号」が、本来のペースで寒冷化と温暖化を繰り返し続けていくとしても、今後何億年も経てばいつかはバランスが破れて「生命が存在し得ない」状況になるわけです。
ただし、肝心なのはこれは億年単位の話であって、振り返れる歴史がせいぜい数千年である人類が真面目に気にするべき未来のスパンではありません。気にすべきは、話を小さく小さく見て、千年単位、いや百年単位で現在の地球の環境を考えた場合、どうやら人類はこの星に一線を越えた影響を与えているようだ、ということですね。せっかく1%以下になった二酸化炭素を「一瞬の間」にジャンジャン増やして、気候変動を招きつつあるわけですから。
本題ですが、今回見せた映画は「不都合な真実」an inconvinient truthです。
簡単に紹介しますと、かつてアメリカで副大統領までいき、大統領選で惜しくもブッシュ氏(息子)に敗れた政治家「アル・ゴア」氏が、環境活動家として調査・研究し世界各地で講演会を実施してきたその内容をドキュメンタリーにまとめたものです。
今さらですが、そして残念ながら、つくずく「珍しいタイプの政治家」だな、と思ってしまいます。教育公務員としては現場では政治や思想的に中立であらねばなりませんので、ここ日本の政治家の皆様の様子についてはコメントを控えます(そもそもあちらの業界の中を批評できるほどちゃんと見えているはずもなし)が、ただの印象として、アメリカの政治家で他国にまで名前が知られている人々の中で、彼ほど、自国にとどまらず世界全体の環境問題を主眼に置いた先行きを憂いて本気で活動した政治家がいたでしょうか?
「あ~あ~、ゴアさんがアメリカの大統領になっていたらなぁ。それも歴任で8年くらいやってくれていたらなぁ。大国アメリカを地球全体の環境問題の先鋒として動かせていたら、温暖化を始めとする環境問題の現状も、だいぶちがっていたんじゃないかなぁ~」…タラレバですね(涙)。
昔からよく言われますが、環境問題は長く「経済」とたもとを分かってきましたので、環境問題を本気で訴える政治家には票が入りません。環境のことなど考えてこなかったかつての大多数の企業にとりましては、邪魔な思想でしかありませんので。ところが、ほんの数十年の間に、科学者達やゴア氏のような人々が科学的根拠に基づき予測して憂いてきた環境破壊の度合いが、それをはるかに上回る数値で当たり前のようにニュースになり、また体感もできるようになってしまいました(この前の5月の高温は何??)。かつてゴア氏を「嘘つき」と揶揄し、温暖化の問題について真逆の考えで活動してきた者達は、いまや厚かましくも手のひらを返してこの問題に向き合ったふりをせねばならなくなりました。しかし、状況はそれでは手遅れなのです。
また一方で、「経済」の大切さも、コロナ禍によって民衆に共有された形です。実感せざるを得ないことは、結局は経済的にある程度以上の余裕がないと、例え先がない道であっても人間は歩み続けてしまう、ということです。
ゴア氏ご本人を巡る人間模様は人間模様であって環境問題そのもではありませんが、人類が1人1人「人間をやめることができない」以上、SDGsを本気でじっくり進めるしかないのでしょう(そもそも「開発目標」であって「開発をやめろ」ではありません)。そういう点でも、生徒たちには、上辺でなく土台をしっかりした上での科学的見地から状況を憂いて欲しい…またその一方で、問題の解決にあたっては必ずそこに自分以外の「人」が存在する、ということも学んでほしい次第です。
この映画は「とっておき」のネタの1つで、かつまた全てを見せるには付随する解説も入れて3コマは欲しい所ですが、実際には40分程度だけ見せて終わり、です。それでも、2005年の段階で判明していた恐ろしい「不都合な真実」についてのゴア氏の見事なプレゼンの様子は、ハイライトの1つを含めて見せられました。
7時間目ですし、もともとの生徒それぞれの興味関心もありますので、全員が最後まで集中できたかと言うと、まあ全員ではありませんでしたが(自然です)、全体の雰囲気としましては「ガツン」と気持ちを投入できたかな、と。
2年生「ポスター作り4回目」
さて、昨年度に上記のビデオを、働き方改革などの流れからなくなってしまった「朝勉」の時間も使ってフル視聴できた現2年生はと言いますと、本番まで数週間にせまった「ポスター発表」に向けたパワーポイント資料作りが佳境に入ってきました。あっという間ですね。ブログを書いている今はもう「夏」に入ってしまいましたし。
佳境と申し上げましたが、担任のT先生によると、6月13日のプレ発表会の段階でもまだ多くの者に内容の訂正や改善が出そうだ、とのこと。紙の「ポスター」作りは、それを経てからにしたい、とのことでした。
模造紙に資料を貼り付けて、ブツとしてのポスターを作るのは、当初の予定ですと6月6日(火)になるのかな、と考えていたのですが、実情からすると人文科探究の授業の外で、6月19日からの三者面談期間(午前中授業)の午後にでも、私が出向いて作業をみるべき状況の様です。
ポスター発表本番では、ここ数年のこととしまして、生徒はプロジェクターでパワーポイント資料を1枚ずつ投映しながらの発表になり、その際に昔ながらの紙の「ポスター」は必須かと言いますと、なくてもできないことはありません。しかし、質疑応答の際に、発表者が見せたい資料または聴衆が質問してきた対象の資料を探して、投映してある電子データを前に後ろにスクロールするのも時間がもったいなく、スクリーンの脇に「発表者も聴衆も一目で必要な情報に目が向けられる」紙のポスターが掲示してあることのメリットは大きいのです。
また、個人的に絶対大切にしたいこと、また人文科で主任として部の皆にお願いもしていることとしまして、「アナログ能力の維持」があります。タブレットやプロジェクター、スクリーンが無いと発表できない、というのも情けないことです。機材に振り回されている状態です。機材は、使いこなすものです。スマホが無いと調べものもできないのか。パソコンが無いと仕事ができないのか。「ポスター作り」作業そのものでは、大きなサイズの紙の扱いに始まり、レイアウト、糊付け等の工作も体験します。センスが必要です。こんな当たり前の誰でもできそうな工作の能力が、ところがどっこい、私が教育業界に身を置いてほんの約30年の間に、生徒たちからみるみる失われてきております。カッターを逆さに使う者。ドライバーでネジを回せない者。ミシン目で紙を上手に切り離せない者。珍しくありません。本当です。やっておきましょうアナログ作業!大学生そして社会人になる前に!