人文科ブログ

2017年9月の記事一覧

人文科講演会を実施しました!

 9月6日(水)に、春日部市の東部地域振興ふれあい拠点施設(ふれあいキューブ)にて、人文科講演会を実施しました。人文科講演会は、各界で活躍している方の講演を通して人生観や職業観の確立に役立てることを目的として、毎年実施しています。講演を通して人文科生の教養を高める、人文科独自の行事です。

 今年度は、日本大学文理学部国文学科准教授の武内 佳代氏をお招きして、『村上春樹 「レキシントンの幽霊」を読む-物語の深層を掘り起こす実践例として-』という演題で、ご講演いただきました。

 

 生徒達は事前に『レキシントンの幽霊』を読み、当日の講演を聴きました。村上春樹氏や『レキシントンの幽霊』についての基本情報、分析の前提を丁寧にご説明いただいた後、まずは"第1の物語―幽霊との邂逅"というテーマで、物語中の"幽霊"についての解釈に関するお話をしていただきました。真に霊的な意味での幽霊、ジャズやレコードの精霊、ケイシー一族の過去の栄華の名残、はたまた語り手たる「僕」自信の深層心理が現れたもの等、様々な見方についてご紹介いただきました。

 

 次に、"第2の物語―「ある種のものごと」をめぐって"というテーマで、本文中の「深く眠る」ということの意味について考えました。

 最後は"もう一つの物語へ 物語の深みに降りる"というテーマで、本文中の「悪いけれど、君しか思いつけなかったんだ」というケイシーのセリフから、なぜ留守番を他の人に頼めなかったのか?という点を出発点に、小説が描かれた時代背景に関するお話をしていただきました。限られた時間の中でしたが、小説を読み解く様々な「視点」が得られたのではないかと思います。

以下、生徒の感想です。

■今まで一つの小説をこんなに深く掘り下げてみることがなかったので、面白かったです。「レキシントンの幽霊」は、普通に読むのは先生が仰っていたように小学校高学年でもできると思います。でも、その奥にある作者の思いや時代背景、登場人物の関係を読み解くのは難しいと思います。先生のお話やいろいろな先行研究を見て、ここまで読み解くことができるんだなと驚きました。特に印象に残ったのは、「レコードコレクション」をrecord(記録・記念)として読むというものです。自分の中に全くない視点だったのでとても驚きました。これから色々な本を読んでいくと思いますが、今日学んだことを思い出しながら読みたいです。

■私は村上春樹氏の作品をきちんと読んだことがなく、今回の講演会に向けて初めて「レキシントンの幽霊」を読みました。読み終えた後の感想は、不思議でよくわからない話だなと思っただけでした。けれど、講演会で自分がひっかかった部分が解明されていって、本を読むというのは、こんなにも奥が深いのか!と本当に驚きました。特に、「ある種のものごとは、別のかたちをとるんだ。それは別のかたちをとらずにはいられないんだ」という部分の解釈を聞いたときは、鳥肌が立ちました。自分が普段本を読む時、少しは内容について想像するにしても、ここまで文章が書かれた意図を考えることはないので、本から学べることの半分も吸収できていないのではないかと思いました。私の本を読むことに対する考え方が変わりました。今回の講演、本当に面白かったです。

■「レキシントンの幽霊」を昨日読んだ時は、ただ幽霊がいて、それが"僕"の夢だとは思っていたのですが、まさかいろいろな読み方があるとは思いませんでした。そしてケイシーが同性愛者だと一人で読んだ時は分からなかったので「まさか!」という感じでした。聞いていてとてもわくわくしました。全然違う見方だったので、そういう見方も今後できたらいいと感じました。一つ気になることがあったのですが、"僕"は着替えて下におりていますが、幽霊と気づいた後寝室に戻り、そのまま朝が来て、パジャマのままだったことに私は疑問を感じています。それはやはり"僕"の空想を示唆していたのでしょうか。今日はありがとうございました。とても楽しかったです。

 その他にも、「論文作成の参考になりました」という感想が多数ありました。人文科では「人文科探究」という取り組みで、論文作成を行なっています。今回の講演を通して、生徒たちは「先行研究から独自の論を組み立てていく」という過程を追体験し、今後の論文作成について大きなヒントを得ることができたようです。

 

武内先生、お忙しい中ご講演いただき、本当にありがとうございました。

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