人文科ブログ

2022年5月の記事一覧

5月17日 1年生 ネタ帳を作ろう①  +2年生の活動も少し紹介

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※1年生の活動を連続して取り上げておりますが、先にこのところの2年生の様子をここで紹介させてください。

 2年生は6月28日のポスター発表を控え、パソコン室でプレゼンテーション用アプリのパワーポイントで資料作りに励んでおります。

 ポスター発表とは、発表内容を効果的に口頭で説明して聞き手を納得させられるように、キーワードや資料を分かりやすく掲示物に仕立て、それらを壁などに貼り、その前に立って、集まった聞き手に掲示物を利用しながら発表する発表形式のことです。聞き手が次々に移動していく以外は、恐らく多くの会社で新企画の検討の場などで似たようないわゆる「プレゼン」が行われていることでしょう。

 昨年度は初めて、ポスター自体も紙ではなくプロジェクターでスクリーンに投影する形式で実施され、大学や会社のような感じでした。今年度も担任は同様に考えております。

 ということでして、2年生は火曜7時間目やほかの曜日の放課後も使いながらパワーポイント資料を鋭意作成中です。今後も本番までしばし「作っては個別指導担当に見てもらう、直しては見てもらう」を何度か繰り返します。

 

ネタ帳を作ろう①

  本校人文科における「ネタ帳」とは、論文作成に向けた各自の「興味がある記事や資料やとじ込み可能な実物が綴じ込まれたファイル」を指します。1年生の2学期頭までがネタ帳作成期間であり、論文テーマが未定のこの期間においては、とにかく少しでも面白い、興味がある、と思ったネタをメディアの違いに関わらずため込むようにします。

  例えばお菓子のパッケージに疑問や興味がある場合、手に入ったパッケージをそのまま綴じ込んでもいいのです。あるいはA4版1枚程度の大きさに収まるなら、広告や説明書やパンフレットをそのまま綴じ込んでもいいのです。ただし、では興味があるからと言って雑誌や新聞や書籍をそのまま綴じ込んでは、ものの1冊2冊でファイルはパンパンになりますから、基本的な形は専用の「ネタ帳台紙」に該当メディアの基本情報や興味がある文面などを記入して、後でいつでも必要になった時にその資料に戻れるようにします。新聞などは台紙の必要事項を埋めた後、該当記事部分を切り抜いて裏面に張り付けるなどします。webなども、とにかく何度でもその情報にアクセスできるように発信元の情報などを細かく記録しておきます。

 いずれ、ネタ帳の中で、特に興味があってそれを「問い」の形に言語化して、それに対して自分なりの「仮説」を立てられるようなものを、論文のテーマとして選ぶことになります。テーマが決まったら、その後はそのテーマに合う資料、つまり自分の仮説を正しいと論証するのに使える情報を含んだメディアをネタとして追加していきます。

 今の時期はとにかく手あたり次第ネタ集めをすればいいのですが、それは普段やってもらうことですので、今回の授業と次回6月7日とで、テキスト「学びの技」(玉川大学出版部)を使って、少し高度な資料収集の技を2回に分けて体験します。

 まずは精神論としまして、手軽に同種メディア、特にインターネットばかりからネタを集めるのではなく、頭を使い、手足を動かし、書籍を中心に様々な種類のメディアからネタを集めるよう言いました。書籍、雑誌、新聞、オンラインデータベース、ウェブサイト等、それぞれに特性と短所長所があるので、特に手軽なウェブサイトに偏ると論の信憑性も偏ることになります。

 今日は書籍に重きをおいて、実際にネタ帳を作成するのではなく、そのために今後利用してほしい各種検索サービスの調べ体験をします。

 図書室の利用に関しましては4月26日にしっかり体験しましたので、体はあまり動きませんが、教室の自席でiPadにて活動します。

 ① OPAC   Online Public Access Catalog

 今の時代、国内の多くの図書館では、蔵書をデータにしてインターネットで検索できるようにしています。狙った図書館について、書名が分かっていればその書籍があるかないかはすぐ分かりますし、キーワードから自分の興味や論文テ―マに関連がありそうな書籍を調べることもできます。インターネットで通常の検索をするのと違い、書名にその用語が無いとうまくヒットしないので、関連ワード検索にはコツが必要です。その図書館に会員登録すれば、蔵書のpdf(各ページの写真)にて内容を読むことすら可能です。

 全国どこの図書館でもいいのですが、リアリティーを持たせるため、生徒各自の地元の図書館のホームページを立ち上げてもらいました。通常、トップページにOPACがあるので、そこから興味に応じたキーワードや書名で検索体験をしました。所蔵している蔵書であれば、かなりの情報が判明します。 

② カーリル

 狙った図書館にその書籍があるかないか、ではなく、先に欲しい書籍が決まっていて、学校の図書室に無い!地元の図書館にも本屋にも無い!と言った場合に、国内でその書籍を所蔵している図書館を検索すことができるサービスです。現実問題として借りに行ける距離の図書館、ということで県や市町村で限定することもできますし、その瞬間その書籍がそれぞれの図書館で借りられているかどうかまで分かります。

 自分の論文で、仮説の論証に必要!これが決め手になる!というような場合は、是非とも借りたいわけですから、使えるサービスです!

 

③ Webcat Plus

 似たようなサービスの、全国大学図書館版です。書名が決まっていれば「一致検索」から利用、キーワードから使えそうな書籍を検索するなら「連想検索」を利用します。

④ 新書マップ

 ①②③の図書館絡みの検索サービスではなく、どちらかというとデータベースになります。自分の論文のテーマや興味に関連のありそうな新書を検索できるサービスです。こちらは時間の関係で紹介だけにしました。

 

 

 

一通り検索体験した後、実際に検索した書籍を「ネタ帳台紙」に記録する作業をしました。本当の興味より、一度手順を体験することを優先しました。地元図書館を基本に、検索体験①②③で一番うまく検索出来たサービスを使って、できれば文面まで閲覧できるような書籍まであらためてたどり着いたら、その書籍の情報を台紙に記入し、ファイルに挟む。時間内に作業を終えられないケースが目立ち、授業のやり方を調整する必要性も感じました。

 

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5月10日 1年生 多面的思考トレーニング①

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1年生 多面的思考トレーニング①

 

1年生の1学期は、「探究マインド育成」「研究対象模索」が大きな目標です。

スプリングセミナーで新入生に周知した、探究活動に欲しい指針「メディアリテラシー」と「多面的思考」。今日は多面的思考トレーニングの1回目です。

世の中にある未解決の問題について、過去の人々と同じようにしか考えられないと、過去の人々がすでに考えて試してうまくいかなかったのと同じアイディアしか浮かびません。そして問題はやっぱり解決できないでしょう。

同じ問題を、これまでと違う角度から見てみる。「奇をてらう」とも違う。話題性やユーモア、周囲の反応が目的でその場限りの言葉遊びをするのとは違う。でも場合により、段階により、一見「奇をてらっている」としか周囲が思えないようなアイディアが解決の突破口になることもあるかもしれませんね。多面的思考ができない人は、できる人のいう事を前向きに理解すること自体、できないのかもしれません。

今回は、小難しくならないように、楽しめるように、「頭の体操」的な問題を用意しました。生徒たちには5,6人の班を6班作ってもらい、班ごとに制限時間を切って解答を考えてもらいました。

 

以下が、問題と「多面的に見てほしいポイント」「解答」「生徒の様子」です。5,6番以外はそれぞれ1,2分、5番6番はそれぞれ5分で、班ごとに答えを考えてもらいました。

 

1.次の図で、川の対岸のA地点からB地点まで川に対して直角に橋を架ける場合、どのように架ければ最短で両地点を結べますか?

 (※肝心の図が張り付かないので、言葉で説明します。真っすぐな川があり、川の対岸(上側)の左の方にA地点、こちら側の右の方にB地点を設けます。両地点の水平方向の距離は、川幅の6~7倍あります。)

●ポイント:橋の形状については、川に垂直であれ、という以外言われていない。街中で、道路の下をドブレベルの幅が狭い川が通る場合、どんな様子になるか。橋の幅の方が川幅より狭くなる、という先入観に気が付けるか。

●解答:A地点からB地点まで覆う、幅の広~い橋を架ければよい。

●様子:正式に解答にこぎつけたのは1班だけでした。それも周囲から「いやそれはないんじゃないか」っぽい声がきこえていた気がします。

 

2.柱2本とハンモック1つの「ハンモックセット」が5セットありますが、1セット不良品で柱が1本しか入っていません。5セットすべて問題なく使うには、どうしたらいいですか。

●ポイント:逆に5セット分の部品を全て使わねばならない、とは言われていない。部品をセット間で共有してはならない、とも言われていない。

●解答:不良品セットと完品セット1つを合わせ、柱を1本共有すれば、柱3本でハンモック2つをぶら下げられる。さらに言えば、5セットを円形に配置すれば、柱は全部で5本でもハンモック5つ全て使える。

●様子:これは1番と違う班が見事答えてみせました。すばらしい!

3.つまようじ6本を折らずに使って正三角形を4つ作りなさい。

●ポイント:平面で解決しなさい、とは言われていない。2次元と3次元の間に横たわる先入観。

●解答:正三角錐を作る。

●様子:これは私が失敗しました!実は「交差させてはならない」または「4つ限定」または「同じ大きさの」という条件をうっかり忘れてしまったのです。1番を解いた班が、「別解」を提示してきました!うぬぬ、素晴らしい!まず3本で正三角形を作り、各辺の中央を2か所ずつ通るように残りの3本を置いていく、というものでした。焦って「正解!」としてしまいましたが、ただし厳密にはこれは大小5つできてしまいます。

 

4.マッチ棒4本を折らずに使って、田の字を作りなさい。

●ポイント:マッチ棒は平面に並べろ、とは言われていない。~の字を作れ、という表現はあいまいで、例えばミッキーマークのような幅があり得る。

●解答:マッチ棒には、断面が四角い木片が使われている。4本のマッチ棒を束ねて火薬部分ではない側を見ると、四角い断面が田の字に並ぶ。

●様子:これは、こちらの勝ちでした。今日もっともずるい、一休さんや彦一のような「とんち」の範疇の問題でした。

※(授業では言いませんでしたが、時間制限のないブログ用のネタ)昔、センター試験だか共通一次試験だかの理科の問題で、何かの条件で温度を計算させる問題だったと思いますが、これに対してある受験生が「温度計を使う」と答えて物議をかもした記憶があります。顛末は覚えておりませんが、問題の意図や目的は「多面的思考」ではなく「理科分野の知識や計算技術」を問うもののはずですから、問題文に温度計を使うな、となくても不正解でいいと思います。今でも、職業柄問題を作成する立場でもありますから、問題文には気を付けたり、テスト前後に意図や常識などもコメントしたりします。)

 

 

さあ、ここからは、現実にあったことをネタに、真面目?にいきます。

4.ある県内の市で、市内のカブトムシのいなくなった森に、養殖したカブトムシを数百匹放しました。このことについて「問題点」を発見し、「解決策」を考えなさい。

●ポイント:なぜ「いなくなった」のか。森に放した目的は何か。放されたカブトムシはどうなるのか。

●解答:市は、カブトムシがいなくなった原因を考慮しているとは思えない。また、カブトムシが定着あるいは生存する見込みがない状態での放虫は目的が不明であり、目的がどうあれ、いなくなった原因をただしてから放虫すべきである。

●様子:これは多くの班で、こちらの意図した思考をたどってくれました。活発に話し合いが行われ、嬉しい限りでした。

ブログ用解説(6割は授業で早口で話しました):カブトムシがいなくなった原因は、温暖化が原因かもしれない「林内の乾燥」もありますが、一番は「木々が樹液を出さなくなった」ことにあります。「樹液」は木の「傷口」から出るもので、「傷口」は「治るもの」です。まず近年、木々に傷自体があまりつきません。理由は、木々の傷はカミキリムシ、タマムシ、コメツキムシなどの昆虫によるものであり、そういう昆虫がまず減少しています。さらに正常な状態の自然では、ボクトウガという蛾の肉食の幼虫が、樹液に集まる小さな虫などを捕食する都合で、猟場である「傷」が治るのを、傷口を定期的にいじって阻止することで樹液が長期間流れるのです。ちなみにこの蛾の幼虫は、自分では樹皮に初期の傷は設けられません。

 何千万年か分かりませんが、こうした環境が悠久に継続したからこそ、「樹液をほぼ専食する」カブトムシ、クワガタムシ、カナブン等が進化してきたわけです。しかし現在、このボクトウガもほとんど見かけません。結果、やっとついた木の傷からせっかく樹液が出ても、傷はすぐふさがってしまうし、近年の夏の暑さでは林床までカサカサ、樹液も8月どころか7月下旬も待たずに乾いてしまいます。

 あともっと直接的な人間の仕業として、市民の森のような一般人が遊歩道で入り込めるエリアにある樹木の樹液には、市町村の職員がスズメバチ対策で乾燥剤や毒液を散布しますや。恐らく自然を都合よくしかとらえられない一部の市民が苦情を訴えるのでしょう。住宅地の自宅の庭じゃないのに。森なのに。スズメバチを先に見つける技、避ける技、急に出会っても怒らせない技を身につけるか、嫌なら森には行かない事。これが筋だと思うのが私の持論でゴザイマス。

 十数年前のことですが、埼玉県内のS市は、餌のない森にカブトムシを放虫して、何がしたかったのでしょう。カブトムシが取れる森にしたかったのでしょうか。それとも潮干狩り用に作った砂浜に養殖アサリを撒くように、ひと夏子どもたちに虫取りできる森を提供したかったのでしょうか。いずれにしましても、その触覚に樹液のにおいを一切感じられないカブトムシたちは、2日と待たずこの森から飛び去ったでしょうね。

 これが鯉の放流などになると、もっとひどい話になります。「〇〇市では、市民と共同で養殖した鯉の稚魚を、魚のいなくなった××川に放流しました。」鯉自体が一部の地域や亜種を除き実は厳密には外来種であり、また人間が都合で仕切った「国」の中でも、もともといなかった地域へ国内から新しく生物を移動定着させると、これは「国内外来種」となり、環境破壊の一環となります。コイは頑丈で繁殖力旺盛で獰猛で、世界的に猛威を振るっています。鯉の増えた水域では他の動物への圧はすさまじいものですから。

最後の問題です。

5.① 信号機付きの横断歩道で、通行人がギリギリの駆け込み横断をするのを防止するためのアイディアを話し合って考えなさい(実際に実用化されているものです)。

●ポイント:罰や物理的なハードルでなく、人に駆け込みをさせる心境に着目できるか。「あとどのくらい待たされるか分からない不安」に気が付けるか。

●解答:歩行者用信号機に、赤信号でも青信号でも「残り時間」「待ち時間」が分かるようなカウントダウン形式の表示を設ける。

●様子:これは敢えて6班全てに解答を聞きました。半数が正解、半数がおもしろいアイディアを出してくれました。おもしろいのですが、全ての信号に警備員を配置する、とか全ての信号に遮断機を付ける、とか、人件費や人材、工事代機材代で現実的とは言えないモノが多かったです。思考トレーニングとしては実にいい状態だったと思います。

5.② 上記①の解答(実用アイディア)をさらに発展させるアイディアを考えてみましょう。

●ポイント:①で判明した「待たされる不安」を解消するその先にある、「待ち時間という認識から気をそらす/待ち時間を楽しむ」という別角度ないしは逆転の発想ができたか。

●解答:歩行者用信号の待ち時間表示の中央に人型があり、この人型が待ち時間の間「ダンスする」。ヨーロッパのある国で実際に採用された工夫で、人型のダンスはなんと録画やアニメ動画の連続再生ではなく、近くのブース内で係が実際にやっているダンスに人型アイコンの動きが連動する仕組みで、ダンスの動きがしょっちゅう変わるので信号待ちの人々が飽きずに見られる、というもの。

●様子:ほぼ正解が確か2班ほど出ました。発想の転換とその応用が実用化された例ですので、近いアイディアを思いつけた生徒たちは嬉しそうでした。

 

ブログネタ:オーストラリアかニュージーランドだったと思います。ある郊外の道路で、雨天時にスリップ事故が多発する場所があり、そこに苦慮の末、注意を促す標識を設置した、という話。この標識、「雨天スリップ注意」「事故多発地点」「この先急カーブ」等の文言はなく、幼い女の子の顔が大きく描かれており、晴天時はただそれだけのものなのですが、雨天時はなんとなんと!!女の子の両目から赤い液体が流れる仕組みが!私はこれをテレビ番組で見て、血の涙を流すマリア像やキリスト像の話を思い出しました。初めて見るドライバーはさぞ肝をつぶしたことでしょう。また状況的に「見慣れる」ことは考えにくいので同じドライバーにも長期にわたり有効でしょう。雨天時スリップ事故は激減したそうです。まさに「標識」の「常識」を覆す多面的思考が成功した好例だと思います。

 

 5月17日の「参考文献・資料の集め方①」を挟んで、次回の「多面的思考トレーニング」は5月31日。

前主任がヘルプで久しぶりに授業を行う予定です。学校説明会などで4年間ずっと広報柱だった、新入生の今年度の年間計画を設定した張本人のご登場です。色々と申し訳ありませんが、せっかくですので甘えようと思いますほくそ笑む・ニヤリ

 

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