人文科ブログ

2023年5月の記事一覧

5月16日(火) 1年生「多面的思考トレーニング」 2年生「ポスター作り3回目」

5月16日(火) 

1年生 多面的思考トレーニング

  1年生の1学期は、「探究マインド育成」「研究対象模索」が大きな目標です。

スプリングセミナーで新入生に周知した、探究活動に欲しい指針「メディアリテラシー」と「多面的思考」。今日は多面的思考のトレーニングです。

 世の中にある未解決の問題について、過去の人々と同じようにしか考えられないと、過去の人々がすでに考えて試してうまくいかなかったのと同じアイディアしか浮かびません。そして問題はやっぱり解決できないでしょう。

 同じ問題を、これまでと違う角度から見てみる。「奇をてらう」とも違う。話題性やユーモア、周囲の反応が目的でその場限りの言葉遊びをするのとは違う。でも場合により、段階により、一見「奇をてらっている」としか周囲が思えないようなアイディアが解決の突破口になることもあるかもしれませんね。多面的思考ができない人は、できる人のいう事を前向きに理解すること自体、できないのかもしれません。

 今回は昨年同様、小難しくならないように、楽しめるように、「頭の体操」的な問題を用意しました。生徒たちには5,6人の班を8班作ってもらい、班ごとに制限時間を切って解答を考えてもらいました。

 

 以下が、問題と「多面的に見てほしいポイント」「解答」「生徒の様子」です。5番以外はそれぞれ1,2分、5番は5分で、班ごとに答えを考えてもらいました。

 

1.次の図で、川の対岸のA地点からB地点まで川に対して直角に橋を架ける場合、どのように架ければ最短で両地点を結べますか?

 (※肝心の図の画像が無いので、言葉で説明します。真っすぐな川があり、川の対岸(上側)の左の方にA地点、こちら側(下側)の右の方にB地点を設けます。両地点の水平方向の距離は、川幅の6~7倍あります。)

●ポイント:橋の形状については、川に垂直であれ、という以外言われていない。街中で、道路の下をドブレベルの幅が狭い川が通る場合、どんな様子になるか。橋の幅の方が川幅より狭くなる、という先入観に気が付けるか。

●解答:A地点からB地点まで覆う、幅の広~い橋を架ければよい。

●様子:今年は正式に解答にこぎつけたられた班はありませんでした。ただ、どの班も活発に話し合って、何班か答えを発表してくれました。中には、カクカク直角に曲がった橋を思いついた班もありました。

 

2.柱2本とハンモック1つの「ハンモックセット」が5セットありますが、1セットが不良品で、柱が1本しか入っていません。5セットすべて問題なく使うには、どうしたらいいですか。

●ポイント:逆に5セット分の部品を全て使わねばならない、とは言われていない。部品をセット間で共有してはならない、とも言われていない。

●解答:不良品セットと完品セット1つを合わせ、柱を1本共有すれば、柱3本でハンモック2つをぶら下げられる。さらに言えば、5セットを円形に配置すれば、柱は全部で5本でもハンモック5つ全て使える。

●様子:これは複数の班が正当にたどり着きました。すばらしい!

 

 

3.つまようじ6本を折らずに使って同じ大きさの正三角形を4つ作りなさい。ようじは重ねてはいけない。

●ポイント:平面で解決しなさい、とは言われていない。2次元と3次元の間に横たわる先入観。

●解答:正三角錐を作る。

●様子:これは、昨年度に条件をいくつか付け忘れて持っていかれたので、今年はバッチリ。こちらの勝ちでした。なにしろ活発なので、複数の班がいくつか案を述べてくれました。最後は皆、多角的視点というものを実感してくれたように感じました。

 

4.マッチ棒4本を折らずに使って、田の字を作りなさい。

●ポイント:マッチ棒は平面に並べろ、とは言われていない。~の字を作れ、という表現はあいまいで、例えばミッキーマークのような幅があり得る。

●解答:マッチ棒には、断面が四角い木片が使われている。4本のマッチ棒を束ねて火薬部分ではない側を見ると、四角い断面が田の字に並ぶ。

●様子:これは、生徒の勝ちでした。もっともずるい、一休さんや彦一のような「とんち」の範疇の問題でしたが、2,3班が早々に「~だ!」と盛り上がって、指名した班長も解答を板書してくれました。お見事!。

※授業では言いませんでしたが、時間制限のないブログ用のネタ

 昔、センター試験だか共通一次試験だかの理科の問題で、何かの条件で温度を計算させる問題だったと思いますが、これに対してある受験生が「温度計を使う」と答えて物議をかもした記憶があります。顛末は覚えておりませんが、問題の意図や目的は「多面的思考」ではなく「理科分野の知識や計算技術」を問うもののはずですから、問題文に温度計を使うな、となくても不正解でいいと思います。今でも職業柄、問題を作成する立場でもありますから、問題文には気を付けたり、テスト前後に意図や常識などもコメントしたりします。

 

さあ、ここからは、現実にあったことをネタに、真面目?にいきます。

 

4.ある県内の市で、市内のカブトムシのいなくなった森に、養殖したカブトムシを数百匹放しました。このことについて「問題点」を発見し、「解決策」を考えなさい。

●ポイント:なぜ「いなくなった」のか。森に放した目的は何か。放されたカブトムシはどうなるのか。

●解答:市は、カブトムシがいなくなった原因を考慮しているとは思えない。また、カブトムシが定着あるいは生存する見込みがない状態での放虫は目的が不明であり、目的がどうあれ、いなくなった原因をただしてから放虫すべきである。

●様子:これはいくつかの班で、こちらの意図した思考をと逆の発想をしてくれて、興味深かったです。カブトムシを、環境に圧を加える問題生物と捉えたりと、思考ステップを踏んでの思わぬ展開。全体的に活発に話し合いが行われ、嬉しい限りでした。

ブログ用解説(6割は授業で早口で話しました)

 カブトムシがいなくなった原因は、温暖化が原因かもしれない「林内の乾燥」もありますが、一番は「木々が樹液を出さなくなった」ことにあります。「樹液」は木の「傷口」から出るもので、「傷口」は「治るもの」です。まず近年、木々に傷自体があまりつきません。理由は、木々の傷はカミキリムシ、タマムシ、コメツキムシなどの昆虫によるものであり、そういう昆虫がまず減少しています。さらに正常な状態の自然では、ボクトウガという蛾の肉食の幼虫が、樹液に集まる小さな虫などを捕食する都合で、猟場である「傷」が治るのを、傷口を定期的にいじって阻止することで樹液が長期間流れるのです。ちなみにこの蛾の幼虫は、自分では樹皮に初期の傷は設けられません。

 何千万年か分かりませんが、こうした環境が悠久に継続したからこそ、「樹液をほぼ専食する」カブトムシ、クワガタムシ、カナブン等が進化してきたわけです。しかし現在、このボクトウガもほとんど見かけません。結果、やっとついた木の傷からせっかく樹液が出ても、傷はすぐふさがってしまうし、近年の夏の暑さでは林床までカサカサ、樹液も8月どころか7月下旬も待たずに乾いてしまいます。

 あともっと直接的な人間の仕業として、市民の森のような一般人が遊歩道で入り込めるエリアにある樹木の樹液には、市町村の職員がスズメバチ対策で乾燥剤や毒液を散布しますや。恐らく自然を都合よくしかとらえられない一部の市民が苦情を訴えるのでしょう。住宅地の自宅の庭じゃないのに。森なのに。スズメバチを先に見つける技、避ける技、急に出会っても怒らせない技を身につけるか、嫌なら森には行かない事。これが筋だと思うのが私の持論でゴザイマス。

 十数年前のことですが、埼玉県内のS市は、餌のない森にカブトムシを放虫して、何がしたかったのでしょう。カブトムシが取れる森にしたかったのでしょうか。それとも潮干狩り用に作った砂浜に養殖アサリを撒くように、ひと夏子どもたちに虫取りできる森を提供したかったのでしょうか。いずれにしましても、その触覚に樹液のにおいを一切感じられないカブトムシたちは、2日と待たずこの森から飛び去ったでしょうね。

 これが鯉の放流などになると、もっとひどい話になります。「〇〇市では、市民と共同で養殖した鯉の稚魚を、魚のいなくなった××川に放流しました。」鯉自体が一部の地域や亜種を除き実は厳密には外来種であり、また人間が都合で仕切った「国」の中でも、もともといなかった地域へ国内から新しく生物を移動定着させると、これは「国内外来種」となり、環境破壊の一環となります。コイは頑丈で繁殖力旺盛で獰猛で、世界的に猛威を振るっています。鯉の増えた水域では他の動物への圧はすさまじいものですから。

 

最後の問題です。

 

5.信号機付きの横断歩道で、通行人がギリギリの駆け込み横断をするのを防止するためのアイディアを話し合って考えなさい(実際に実用化されているものです)。

●ポイント:罰や物理的なハードルでなく、人に駆け込みをさせる心境に着目できるか。「あとどのくらい待たされるか分からない不安」に気が付けるか。

 

 ●解答:歩行者用信号の待ち時間表示の中央に人型のアイコンがあり、この人型アイコンが待ち時間の間「ダンスする」。ヨーロッパのある国で実際に採用された工夫で、人型のダンスはなんと録画やアニメ動画の連続再生ではなく、近くのブース内で係が実際にやっているダンスに人型アイコンの動きが連動する仕組みで、ダンスの動きがしょっちゅう変わるので信号待ちの人々が飽きずに見られる、というもの。

●様子:これは、全班に解答をききました。頭がほぐれた感じの、面白い案がたくさん出ました。やはり考えが至らないのは、その案を実現するための費用や人材等ですね。最も本筋の解答は、「歩行者用信号機に、赤信号でも青信号でも「残り時間」「待ち時間」が分かるようなカウントダウン形式の表示を設ける。」でした。これはしかし、すでに広く実用化されていますので、ベストアンサーではありませんが、発想を褒めました。素晴らしいです!

 ここで、発想の転換の実例を紹介しました。

 オーストラリアかニュージーランドだったと思います。ある郊外の道路で、雨天時にスリップ事故が多発する場所があり、そこに苦慮の末、注意を促す標識を設置した、という話。この標識、「雨天スリップ注意」「事故多発地点」「この先急カーブ」等の文言はなく、幼い女の子の顔が大きく描かれており、晴天時はただそれだけのものなのですが、雨天時はなんとなんと!!女の子の両目から赤い液体が流れる仕組みが!私はこれをテレビ番組で見て、血の涙を流すマリア像やキリスト像の話を思い出しました。初めて見るドライバーはさぞ肝をつぶしたことでしょう。また状況的に「見慣れる」ことは考えにくいので同じドライバーにも長期にわたり有効でしょう。雨天時スリップ事故は激減したそうです。まさに「標識」の「常識」を覆す多面的思考が成功した好例だと思います。

 

 最後に、偉人たちが残した「発想力が鍛えられる名言・格言21選」のプリントを配布し、いくつか選んでコメントしました。是非すべて読んで、なんでしたら座右の銘にしてほしいですね。

 例えば、

ピカソ「子供は誰でも芸術家だ。問題は大人になっても、芸術家でいられるかどうかだ。」

ジャック・ロンドン「ひらめきがやってくるのを待ってはいられない。棍棒を持って追いかけるしかない。」

エジソン「ほとんどすべての人は、もうこれ以上アイデアを考えるのは不可能だというところまで行きつき、そこでやる気をなくしてしまう。いよいよこれからだというのに・・・」

本物?は、違いますね(決して上からではなく、自ら同じような心境にどのくらい到達できたことがあるか考え、やはりそこまでは思い至らない自分を見つめてのため息)。

 

2年生「ポスター作り3回目」

 今回はまた私は授業者ということで、同じ時間の2年生の様子を覗きに行けませんでした。今回、1年生の担任のY教諭に撮影をお願いしてありましたので、短時間抜けだして2年生の様子も撮影してきてもらいました。

 見た目はやはり地味なデスクワークですが、ちゃんと必要な時間を取って必要な活動をしていますので、手短に様子の紹介です。

おおっ!画像を確認していて、嬉しい発見!昨年度、授業の様子を撮影に行くと、いつも素敵な笑顔でブログ用に愛想を振りまいてくれたKさん、健在じゃないですか!Y教諭、ありがとうございます!当然、登場してもらいます。

さあ、ポスター発表まで2か月ありません、みんな頑張れ!

 

 

 

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5月9日(火)1年生「ネタ帳を作ろう②(資料・文献収集)」 2年生「ポスター発表用資料作り②」

5月9日(火)1年生「ネタ帳を作ろう②(資料・文献収集)」 

 今回も、1年生は図書室で授業です。

 「ネタ帳を作ろう」と言っても、なかなか難しいものがあります。なにしろ興味がある、面白いとおもったものは、書籍でも新聞記事でもSNS上の情報でも、パッと記録に残してファイリングする…そのファイルがネタ帳なのですが、物理的に作り始まらないと、動き出しにくいものです。

 今回は、担任のY教諭主導で、まずはネタ帳を物理的に作り始めてみよう、と。

 始めに、前回図書室で司書さんにお願いした授業の時の資料を見返します(iPad便利)。通っている高校の図書室だけでなく、身近な図書館…県立や市立の…の利用の仕方などを復習しました。

 

本棚にある図書(開架図書)ばかりでなく、書庫に保管されている書籍(閉架図書)も、利用できるようになるといいね、とのお話。興味の対象について、利用する図書館の蔵書を積極的に調べて、それが閉架図書であっても窓口で手続きして借りる…そんな体験を是非皆にしてほしいものです。 

  春休みの宿題も返却されました。これをネタ帳の最初に閉じ込んで、今日あらためて最低2ネタ綴じ込めば、ネタ帳は今日ここで3ネタになる(厳密には、春課題は「最低3ネタ」としてありましたので、最低5ネタ)…という目的の時間です。

 春休みの宿題は、入学前ですが、「興味のあること」を記入してあるはずです。今日はそこから、記入したネタに関係がある書籍を書架(本棚)から最低2冊見つけてきて、必要な情報を専用の記録用紙に記入して、ネタ帳に挟む、ということになります。

 さあ、みんなめいめいに本の森に入っていきます。

 

見つけてきた本について、必要な情報を記録します。

 みんな、ネタ帳が「最低5ネタ」になりましたでしょうか???ガンバレ~!

 

2年生「ポスター作り③」

  2年生はやっぱりこんな感じで、画像は代わり映えしません。今後とも…です。

 絵としては日を変えて繰り返しても面白味がありませんが、ちゃんと作業は進んでいます。人文科の2年生は、例年PCの扱いに明るい生徒が多く、多くの者がそれでも初めていじる「パワーポイント」というアプリに物おじせず、どんどん資料を作っていきます。

 時折、先週の「個別指導担当へ初顔合わせ」の時に該当教員の都合がつかず会えなかった者で、この時間にアポイントメントを取れた生徒…が出入りしたり、研究内容に加えたい、あるいは改めて調べてみたいことが生じた者が、PC室の出入り口と廊下を挟んで反対側にある図書室裏口からチョット入って書籍を探したり、と、全員黙ってPCの前に座っているだけではない…のですが。

 素敵なプレゼンテーションができるといいですね。楽しみです。

 

 

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5月2日(月) 1年生「SDGs関連」 2年生「個別指導担当へ挨拶」

5月2日(月) 1年生「SDGs関連」 2年生「個別指導担当へ挨拶」

 

1年生「SDGs関係(地球カレンダー)」

 SDGsにつきましては、数年前に「視点を取り入れる」という表現で学習機会を設け始めました。生徒にとりまし8て、探究論文作成に向けたテーマの設定時にあまりSDGsにこだわりすぎますと、自由な発想が制限される恐れがあります。人文科としまして、まずは単純に「疑問→仮説→論証→結論」の流れを自ら設定すること、それについて手順を踏んで研究し論文にすること、この流れをスムーズに体験することを優先しまして、実情は「後付けで」自分の研究はSDGs17項目のどれに貢献できるか考える…くらいの強さでやっております。

 一方、SDGsそのものは、悲しいかな「エコ~」と同様、商標化してしまっているような場面も見受けますが、現在の地球に生きる人類として、あらゆる場面で考えてゆくべきことのはずです。この世界の傷み具合は、学校の全科目で前面に押し出して扱ってもおかしくないレベルと言えます。できれば探究授業年間計画に定期的に入れたいくらいの内容ですが、実際の計画では(当然でもありますが)論文作成に向けた流れを最優先としています。今日は、年間数回の貴重なチャンスの1回です。

 SDGsは国連の考える「持続可能な開発目標」ということで、その17項目は人間の開発分野全般にわたりますが、そのうちの半数近くが「環境問題」にかかわる分野です。

 たまたま、主任の私は三十数年前(ここ春日部東に「人文科」ができるずっと前)、この母校で2年生の頃に、とあるきっかけから環境問題に興味を持ちました。その後、大学は学部こそ英語ですがゼミは「英語で自然について考える」ゼミをとり、環境問題への関心を深めました。就職活動で教員を目指したのも「生徒たちに環境について伝えたい」と考えたからでした。そのあたりはカミングアウト的な話がまだあるのですが、ここでは割愛します。

 さて環境問題と一口に言ってしまうと分野が大きすぎて、まとめる際の立ち位置もしっかりせねばなりませんが、今回は、はっきり環境問題に特化して話す初回、と考えますと、私としましては「問題」以前の「本来」をまず知ってほしい、普段何気ない瞬間に本来の環境そのものの「偉大さ」「存在自体の奇跡さ加減」「脆弱さ」に思いを馳せてほしいと考えます。

 「地球は、太陽系の中で、どのように惑星になったのか」

 「地球の地殻は、大気は、海は、いつ頃どうできたのか」

 「最初の生命の誕生する条件はいつ頃どう整ったのか」

 「酸素は何者がどう生み出してくれたのか」

 「オゾン層はいつ頃どういう経緯でできたのか」

 「私達生物はどういう経緯で進化し今こうしているのか」

 ・・・つまりは我々が今現在、生命としてこの惑星に存在できる根本的な条件は、何のお陰でどのように整ったのか。そして私たちはどこから来たのか。こういった、ある意味「環境の下地に関する一般常識」とも呼べる知識を、まずしっかり確認したいと思いました。

 そこで、このために昨年「地球カレンダー」をワークシート化しました。ご興味のある方は是非検索してみてください。「地球カレンダー」とは、地球の誕生から現在までの歴史・・・46億年と言われていますが、この46億年の間に起こった出来事を、1年間365日のカレンダーに換算して当てはめると、何月何日にそれが起こったか分かる。つまり長すぎて見当もつかない46億年そのままで理解するのではなく、長さの見当がつく12か月365日に直して、出来事の間隔やタイミングを把握できる、そういうカレンダーです。

 むかし、A3判の紙2枚に365日を入れ込んだプリントは作ったことがありました。昨年、これをA4判1枚に1か月、全部で12枚、プラス12月31日のみを24時間に直したら何時何分に何があったのかで1枚、計13ページ(両面印刷で枚数は半分)のワークシート束に仕立てました。カレンダー内のおもな出来事は、全消しか空欄を設けました。元旦から順番に、途方もない出来事については想像しやすいようにプロジェクターで例の画像を示しながら説明していく、という授業です。昨年わりとうまくいきましたので、今回は少しだけ画像を選びなおしました。

 ご想像通り、11月から急に出来事が増えますが、6月まででも重要な出来事はあるにはあります。設けた空欄を全て埋めてもらいながら時間内に全て話せるか、予め「今日は無謀なことをするぞ!」等と言って、時計を見ながら必死で、でもなるべく分かりやすく面白くトークしました!結果としましては今回はギリギリ時間内?なんとか伝わりましたでしょうか。

 

1月12日(44.5億年くらい前)。地球に小天体が激突して「月が分離」したあたり。

大まじめです、太陽系が生まれるあたりから話し始めましたので。

1月16日(44億年くらい前)。「地殻」の形成の話…の前に、地球の構造と地殻ってなんだ?の話。プレートやら日本列島の地震やら。

 

私は授業をやっていますので、カメラマンは1年9組副担任のM教諭にお願いしてあります。2年生の様子も撮影をお願いしてありますので、画像は飛び飛びです。

 

5月31日(27億年くらい前)。シアノバクテリア(藍藻)が、この惑星に初めて「酸素」を放出し始めました。ストロマトライトといって、この藻類が集まって固まったものが化石になって見つかっております。たまに石屋さんで磨いた石玉が打っています。画像は、なんとその頃の様子を現代に伝えていると名高いオーストラリアのハメリンプールという浜の写真です。黒い岩は岩ではなくストロマトライトそのもので、表面の生きた藍藻が陽光を浴びると光合成にて酸素を泡にして放出する様が見られます(現地で生で見たことはありませんが、以前、科学番組で動画で見ました)。

似たような現象で良ければ、よく観察すれば身の回りでも見かけられます。

8月3日(19億年くらい前)。超大陸ヌーナ形成の話ですね。超大陸と言えば「パンゲア」や「ゴンドワナ」が有名でしょうか?ヌーナは地球で最初の超大陸です。地球全体のプレートの動きによって、地球では過去に何度も超大陸が形成されては分裂し、ということを繰り返してきました。

科学の力も大したもので、現在の各大陸がこの時だいたいここにあった、ということすら分かるようですね。

私が授業をやっている写真はここまでです。

 

ここで、今回の授業に使用した「実例」を写真で紹介します。画像以外にいくつか鉢植えなど本物を見せました。私が生物部の顧問もやっておりますので、ストックからぱっと見つくろって、予め廊下に置いておきました。

 

まずは「藻類」の見本から。ストロマトライトの化石の磨いた石玉を自宅からもってきても、多分ピンとこないので、仲間は違いますが、多分「緑藻類」の実物です。生物室のとある水槽ではびこっていたので、ペットボトルに汲んできました。写真は時間が経ってから撮影しましたので、大分薄まってしまっていますが、授業で見せた時は濃く新鮮な緑茶にしか見えませんでした。大雑把ですが、地球の海を酸素で満たし、大気にまでふんだんに含ませてくれた種族です。リスペクト!

 ここからは、少しストーリー付きで。 

 11月27日!海の中ではすでに魚類までが進化し繁栄していましたが、この日より2億年ほど前…もとい、2週間ちかく前の11月14日からオゾン層が形成されはじめ、UV対策など色々と準備が整い、27日にようやく植物が上陸に向けて動き出します。まずは浅い海や河口に藻類が、そして次に湿地帯にコケ植物がじわじわと上陸!といっても「湿った環境」までです。ちなみに、動物は一切まだです!

 11月28日!植物が(はっきり)初上陸!

 この、今より4億年ちょっと前…もとい、「大晦日の現在から1か月と3日前」に初めて上陸した頃と、ほとんど姿を変えずに現在まで生き残っている「生きた化石」が「マツバラン」の仲間です。

一応、広義にシダ植物と分類されていますが、これはかなり大雑把な分け方で、動物でいいますと魚から私達哺乳までまとめた「脊椎動物」と、「エビ」だの「貝」だのまで、ほとんどの動物をいっしょくたにしてしまうくらい適当な分け方です。

 もうすでに授業では全然そこまで話していない「ブログネタレベル」になっていますが、ここだけ!古い植物の分類の入り口だけ!ちゃんとすると、

「古マツバラン門」

 

「ヒカゲノカズラ門」

「トクサ門」

…ツクシンボウは、あれはあの植物の本体でないことはご存じでしょうか。ツクシの本体は「スギナ」という植物で、一度生えると根絶が困難なスーパー雑草です。ツクシは「胞子を散布するための、被子植物でいうところの「花」にあたる器官です。ガーデニングなどやっていると本当にどうしようもない雑草ですが、言い換えれば、数億年もの間姿を変えずかつ大繁栄しているので、地球に活きる生物としては「大当たり」の生体デザインを誇る種族ですね。そのツクシ…もといスギナがいるグループがトクサ門です。写真はトクサの新芽です。

「ハナヤスリ門」

「シダ植物門」

etc…となっております。

このリストはだいたい歴史上も上陸ないし進化してきたグループ順です。トップバッターの「コケより進化しているけど、コケを超える中では一番原始的な植物」であるマツバランは、体の構造もかなり変。土中部分を掘り出しても、まともなシダのようにはっきり根と呼べそうなものはなく、ウネウネと茎らしき構造が這いまわっているだけなのです。

葉っぱもないし。11月28日の陸にはこんなヘンテコな草ばかりが繁茂し、12月3日に大森林が陸に発達するころの植物もまだほとんど「シダ植物門」まで。

 

現在の森や草原とは、ぱっと見の印象もまったく異なる事でしょう。

ツクシやトクサの化け物の大木が林立していたりとか、

想像するとロマン以外のなにものでもありませんね!

白亜紀あたりになると、裸子植物(種の胚がむき出しの、マツ、スギ、ソテツ、次の画像のイチョウ、etc)

がメインの大森林から、だんだん被子植物も増えてきて、草食の巨大恐竜が食べなれたサラダと違う風味のサラダが増えていきます。その後の氷河期をもって、現代にかけて生態系は被子植物と哺乳類が台頭していきます。

写真ありきのコーナーですので、これはここまで。 

 

 最後に、この授業のしめくくり部分の情報を記載します。

12月31日午後11時37分・・・現生人類ホモ・サピエンス登場

12月31日午後11時58分52秒・・・農耕牧畜開始(1万年前)

12月31日午後11時59分46秒・・・キリスト降誕

12月31日午後11時59分56秒・・・ルネッサンス

12月31日午後11時59分58秒・・・産業革命

12月31日午後11時59分59秒・・・20世紀が始まり終わる

…私達人類は今、地球の歴史上何度もあった寒冷化と温暖化の繰り返し…生物の歴史だけで考えてもかつて何度となくあった大絶滅…そのどれとも違う形で、「秒」で地球を暖め、最速で種の絶滅を進めて、自分たちも頼って生きている世界を破壊している、というわけです(白亜紀後期の恐竜大絶滅すら、1種類毎の減少開始から絶滅までの所要時間は、平均で1000年かかった、という説もあります)

46億年かけて整ったものを、です!

生物として言えば39億年かけて、複数回の巨大隕石激突すら乗り越えて、白亜紀終焉とその後の氷河期から今に至る安定期だけで言っても1億年近くかけて整った生態系を、です!!

SDGs!待ったなしです!

本当は世界のすべての国と地域で一丸となって取り組むべきです。争っている場合ではないはず!

 

 次回のSDGs関連授業では、かつてのアメリカ副大統領アル・ゴア氏による「不都合な真実」を使いたい(=DVD視聴)と考えています!ただ、長いので昨年はいろいろ工夫して3回くらいに分けて見せました。(どうしよう)

 

2年生 人文科探究個別指導担当者にご挨拶

 毎年、人文科の2年生全員を、担任あるいは人文科の教員(主任含め7人)がパワーポイントデータや論文の誤字脱字にいたるまで事細かに指導するのは物理的に無理があります。我々7人にも、通常の授業や部活や学年の仕事などがありますので。そこで、春日部東では、人文科生徒が2年生になると、「各部署の主任級」や「進路指導で通年てんてこまいになる3年生の正担任」等を除く全教員に、お1人につき1名、面倒をみていただいております。

 これにつきましても、人文科としてあまり負担を職員間に増すわけにもいきませんので、いただくご指導につきましては原則「生徒の言っていること、作ってきたデータ、書いてきた論文」が、「分かるか、追加で調べたらいいことがあるか、誤字脱字はあるか」くらいとしてあります。我々が言うところの「探究論文」の形になるかは、砦として人文科の担任と主任が指導をするわけですが、例年、先生方には温かいご指導をいただいているところです。

 先生方(同じ職場の同僚ですが、今回は敬称な感じで!)には、あらかじめ2年生各自が1年生の末まででなんとか立てた「研究のタイトル名」のみを示して、どの研究をしている生徒を面倒見たいか、希望調査をとります。今年も担任のT教諭が、一任も含め、できるだけ先生方のご希望にそえるよう割り振りを行いました。

 この7時間目の時間帯は、普通科でも1年生全クラス、2年生全クラスで通常の授業を行っております。その授業担当が個別指導担当に当たっていれば、この時間には会えませんので、そういう先生が担当になっている生徒は、PC教室に残ってポスターを進めます。

彼らは別でアポをとって合いに行きます。そういったこともトレーニングです。

  

春日部東には、廊下に面談や1対1での学習指導用に長机が豊富にありますが、各階の長机はご覧の通り。

 

…さあ、次回にうかがう時は、研究内容のポスター発表会に向けて、ウィンドウズアプリ「パワーポイント」での資料作りが進んだ頃。個別指導では単に作ったものを見ていただくだけではなく、生徒は「アポイントの取り方」「礼儀作法」等も学ぶことになります。大切なことです。2年生諸君、今年も頑張りたまへ。

 

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