2019年10月の記事一覧
8月20日 フィールドワーク⑤ ザリガニ取り
私こと生物部顧問は、実は転勤2年目です。ここ4校目にして初めて自分の最得意分野の経験値を活かせる部活をもてることになりました。前述のとおり、活動案は大小様々、山ほど準備して就任しました。今年度、1学年で担任もしておりますので、新入生にも初期の学年集会の学年団挨拶の場を借りてアピールしましたが、やはりここは春日部東高校。運動部希望が多いのですね。それでも1人だけ入部してくれたA君を大事にしつつ、文化祭など次年度入学生への広報の機会は貴重です。
前年度まで、文化祭の生物部の出展は、研究結果の展示と「金魚すくい」のみだったようです。もちろん、研究結果を展示できることこそが普段しっかり活動している証ですが、現状打破を考えると、例年通りではどうしてもパンチが弱いです。そもそもまだ研究はできていませんし。なにしろ今回の文化祭は相当目を引くアピールをしたい!
8月下旬にさしかかり、そろそろ生徒会に提出した紙面上の計画を実行に移すべく、準備を始めます。
その準備の一環で今回のフィールドワークは採集に特化した形で実施しました。
始めから、メインを「小さめの」アメリカザリガニに絞りました。文化祭でどう出すかはお楽しみです。
●ここは本校敷地から直線で100mもない近隣の用水。水深は最大で10cm。
ターゲットはわんさかいます。捕ってもらいましょう!
●A君、初めは、バックでトトトトトと逃げていくザリガニを網に入れるのに苦労していましたが、要領を得てからはどんどん捕れるようになりました。今回の成果です!
●あまり重視していなかったドジョウも数匹捕れました。
このドジョウ、あとで水槽に泳がせたところ、あまりにも知っているドジョウの印象と異なるので調べましたところ、断定はできませんが外来種の「カラドジョウ」ではないかと思われます。また外来種!?いやはや…
8月6日 フィールドワーク④ 草食性昆虫観察・採集
8月6日。夏休みも真っ盛り、春日部東高校は運動部の声や吹奏楽部の出す音でにぎやかです。
周辺のフィールドは、稲も穂を出し、バッタの類もあらかた成虫になっています。
虫取りなどほとんど経験のないいまどきの子どもたち。
部員のA君にも体験してもらいたいと思います。ただ、ちゃんとした捕虫網がない・・・
本校で8の字と呼んでいる、外周走で走るコースの内側の田んぼにあるあぜ道で、稲を中心に多様なイネ科の雑草とバッタの食痕を見ながら、採集を試みます。
始めてで、なかなか要領を得ませんが、頑張ります。
コツさえ覚えてしまえば、手で取れますが…経験が大事です。
今回のターゲットではありませんが、そんなことを言わず周辺の環境は観察しておきたいです。
ふと用水に目をやると、小魚が。
一番奥のかどでまっすぐこっちをむいているのが在来のミナミメダカ。頭から背中にかけて黒いスジが見えます。
あとは特定外来生物のカダヤシです。顧問は本校に転勤してきて初めてカダヤシを確認しました。
どこででも魚取りをしたい人間ですが、幸運にも??本校に転勤してくるまで、日本各地で在来メダカを絶滅に追いやるとまで言われ、猛威を振るっているカダヤシを、見たことはありませんでした。
困ったことに春日部東の周辺には、印象で1:1から3:1くらいの割合でいっぱいいいます。
網に入ってしまっても困る子たちですね。
こちらはトウキョウダルマガエル。水田の縁にたくさんいました。
カエルと言えば、かれこれ十数年前に世界中で多くの両生類を滅ぼした悪魔「カエルツボカビ」が日本にも侵入しただかで、公立高校にも不審な死に方をしたカエルを見かけたら一報を、というおふれもまわりました。
確かにダルマガエルを始め、カエルがめっきり減った時期でしたが、結局農薬?
今、アマガエルはもちろん、ダルマガエル、ヌマガエル(このへんは国内外来種?)、ツチガエルがふんだんに見られてうれしい限りです。
逆に、特定外来生物になってしまったウシガエルは、駆除されているのかどうか、めっきり見かけなくなりましたね。
さて、今回のテーマに戻りますが、イナゴ!蝗、稲子です!
ほかのバッタ類はさして変わらずだったのに、イナゴだけは一時激減しました。
今回、私が小学生の頃に戻ったかのような錯覚を覚えるほど大量にいました!
農家さんはたまらないでしょうが、これもうれしい!
昔・・・30年以上前、春日部市内でですが、背中がショッキングピンク色のイナゴがたくさん捕れたことがあります。
この色彩変異はバッタ類でまれに見かけられるものですが、これだけふんだんにいれば、望みをもてます。
あと、ピンクでなく、のっぺりとパステルグリーンになるものも当時多くいました。これもまた見たい。
A君、バッタには苦戦していましたが、なんと魚捕り網で、シオカラトンボの♂を捕獲!これは大快挙です。
赤とんぼのなかまと違って、かなり捕まえにくいはずですが!キレイでカッコイイ虫です。
飛ぶ虫として、このデザインの洗練され具合!
なんと、この後、シオカラの♀(ムギワラトンボという愛称)も捕まえました。いやはや!
さて、生物室に帰ってきて、成果の確認です。まずトンボから。
巨大な複眼ヘルメットや、蚊を捕まえるための前を向いたカゴ状の脚などを観察して、窓からリリース・・・と思いきや、部屋内に逃げてしまい、ひと手間増えました。
次に、オンブバッタの♀。子どもが初めて捕まえるバッタかもしれません。
名前の通り、かなりの確率でオスがメスの背中に乗った状態で発見されます。
こちらが♂。メスの半分以下のボリュームです。かわいい。
お次はショウリョウバッタの♂。キチキチ音を出しながら飛んで逃げる緑のバッタです。
草原で追い回して遊びませんでしたか??たまに薄茶色の個体もいますね。
そしてショウリョウバッタの♀。この虫は、今更しみじみと、でかい。
それにしても、バッタの体も、よくできています。
各パーツが見事に合わさり、ピッタリにしつらえたスーツのよう。
ちなみに大きめのバッタ類は、イネ科の葉をかじるくらいなので、おおあごは意外と大きく強靭。口をめくらないと見えませんが。もし本気で指をかまれたら、出血すると思います。でも、どんなに酷い対応をされても噛んではきません。
観察が終わったら、全てリリース。今回も周辺環境の様々なことを観察できました。
フィールドワーク③ 8月1日 樹液食昆虫採集 顧問の顧問観を添えて
●「虫捕り」と「環境保護」
私が生物部の新顧問として、根底に持つ最終目標は、
生徒に環境問題や生態系に関心を持ってもらうことです。
私は31年ほど前、高校2年生の末頃に、
初めて環境問題に興味を持ち始めました。
その話はきりもなく、ここでは割愛しますが、
かれこれ30年ほど、無力さを実感し続けています。
環境保護も、開発も、全て人間が人間の尺度で考えてやること。
人間が少なくとも社会通念上平等であると考えれば、
お互いに納得できない状態では、どちらも進められません。
現状、例えそれが世界の破滅につながるとしてもです。
折しも、8月下旬にはグリーンランドから24時間で(!)
125億トンもの氷が解けだしたと報道され、
先月には、未来を憂えた北欧の少女が温暖化対策を
世界的に訴えて大きなうねりを作っています。
昨今、重大さと危急さが最大級の温暖化と、
比較的認知の新しい海洋のマイクロプラスチックに話題が行きますが、
それ以外にも様々ある環境問題のすべてで、解決に向けて動くべきは
本当は政府より国連より、最大勢力の「一般市民」です。
我々がこの地球で生きながらえていくには、どうするべきか。
★私見ですが、
人は、愛着の無い対象を心から守りたいとは思えない!
平素、自然には興味がない、という人は、おそらく
自然環境の破壊や汚染に対する、訴えるような感情は持てない!
ならば、身の回りの自然に関心を持ち、触れ、
こだわる=愛することが、泥臭いですが、
人が強制ではなく自ら環境に配慮していくための第一歩かと。
食うため以外、つまり遊びで自然を使う行為が全て悪とは思いません。
釣り、園芸、ペット、ハイキング・・・いえ、あらゆる文化の側面で、
確かにマナー違反やローカルルール違反、法律違反など、
様々なレベルの「やりすぎる方々」がいますが、
一般論として、同じ川でしょっちゅう釣りをする人でなくば、
その川の釣りで釣れる魚の減少、サイズダウン、奇形増加など
「最新かつ本物の」情報は分からないでしょうし、
現地で現物を前にして、自ら敏感に見て感じればこその
「おかしい!」「このままではいけない!」「どうにかしたい!」
ではないでしょうか。
運動をおこすでもなく、ボランティアを継続するでもなく、
一般市民とさして変わらぬ生活を続けつつ環境問題を口にして、
責めは負うとしても、私は細々とでもやれることを続けます。
生物部の顧問をし、活動を監督するのもその一環とも言えます。
「虫捕り」は、恐らく世界中で子供たちが物心ついて初めて
身近な自然と触れ合う行為なのではないでしょうか。
どこにいて、どうすれば捕まえられるか。
単純に、逃げる・隠れる相手の考えや能力を上回って
捕まえることは楽しい!
そうして楽しんだ、いえ親しんだ虫たちが、
見かけなくなって寂しい、いた場所が開発されて悲しい、
これが原点であり、今回の活動の真の目的でもあります。
●樹液食昆虫の受難
さて、日本で「虫捕り」と言えば、
やはり「カブトムシ・クワガタムシ捕り」は、はずせません。
もはやロマンですね!
捕虫網を振り回しての、蝶、蝉、バッタ捕りは
小さな子供たちの定番でしょう。
皆様の、カブトムシ関係の思い出はいかがでしょうか。
はじめは保護者に連れられて、またある時は自力で、
カブトムシ捕りにでかけて実際「捕れた」「捕れない」という思い出は、
この時代、意外と分かれるのではないでしょうか。
顧問はもちろん「捕れた」サイドです!
部員のA君はというと、なんと!
野外でカブトムシは1回も捕ったことがない、と!
これはやりがいがあります!
しかし今、「取れた」「取れない」に大きく関わってくるのが、
個人的な練習や経験やセンスよりも、環境の変化です。
この40年ほどの間に、樹液を主食とした昆虫にとっては、
すっかり「生きにくい」世界になってしまいました。
そもそも樹液が出ていない!出てもすぐ乾く!
ついでに幼虫の食べる腐葉土や朽ち木がふんだんにない!
★樹液に樹液食昆虫が集まるまでのステップ
・樹液=樹木の「体液」=樹木の「傷口」から出る
・樹木=生き物=傷口は治そうとする
①カミキリムシやタマムシ等の幼虫が樹に食い入る
②傷ができて樹液が出る
③樹液食小昆虫を狙う肉食イモムシ「ボクトウガ」が傷を保つ
④樹液流出が長期化する
⑤そういった木々が3か月ほど樹液食昆虫を養う
このステップが見受けられない状況が長期間続いています。
まずシーズン初頭に樹液自体、見かけない!
そしてせっかく樹液が出ていても、ボクトウガの幼虫がいない!
ものの1週間で干上がってしまう!
夏から初秋にかけて暑すぎるためか、林床までカラカラのことも。
●ここは、春日部イオンから1km前後の、とある田園。
現勤務校から自転車でフィールドワークにでかける想定で、
この1年半、近隣をうろうろし続けて、
ようやく見つけた樹液食昆虫観察・採集ポイントです。
顧問はスクーター通勤なのですが、
こういった新しい動植物観察ポイント(猟場?)を求めて、
運転中も常に周辺の森、林、草原、田畑、用水路、植え込み等に
目をやり、遠くからでもクヌギを見かけたら
折を見て確認に行くことにしております。
●1本目のクヌギ
外来種のアカボシゴマダラと、シロテンハナムグリが見えました。
幸先いい!よく見ると、お目当てのカブトムシ(地上2.5m)と、
コクワガタの♀、ノコギリクワガタの♀が見えました。
顧問が捕ってしまっては意味がありません。
A君に譲ります。そうこうしているあいだに、
ノコギリクワガタの♀はぽろっと落ちて草むらに退避!
これは欲張ると二兎を追うことに…
そういえば、意図的に捕虫網は持参していません。
ターゲットをカブトムシにしぼり、
近くの伐採枝を使ってカブトムシを落とすか動かすよう指示。
しばらくワシャワシャと格闘して、カブトを下方に歩かせて、
A君、生まれて初めて自然で野生のカブトムシをGET!
やりました!
●2本目のクヌギ「幹を蹴って虫を捕るポイント」
樹液食の「甲虫」の多くは、足に不自然な振動を感じると、
ポロっと落下する性質があります。
2本目では、この性質を利用した採集を体験してもらいたい。
自然化では落下先はたいてい藪か、落ち葉豊かな林床です。
落下先で高速で地中に潜り、夜まで出てこないわけです。
現場では、落下先の1/3はアスファルト。
残りは、用水までの斜面で草むらですが、丈が短く、
2人で気を付けてみていればなんとかなるでしょう。
※すみません、色々試しましたが、
写真をどうしても縦にできませんでした・・・
見本を見せようと、軸足と幹の蹴る位置を示して、軽く蹴ると、
もうパラパラと期待できる音が!ノコギリクワガタです!
アスファルト範囲に2匹、草むらに1匹落ちました。
結局ここでは、A君に交代して蹴り3回分~4回分まで
クワガタが取れ続けました。
毎回1匹ずつくらいでしたが、目的は達成できました。
よかったです!
今回の成果。最低限、文化祭まで生かすぞ!